【甲状腺機能亢進症】
甲状腺は喉の下にある小さな器官で、サイロキシンとトリヨードサイロニンというホルモンを出している。腎臓の上にある副腎に反応したり、他のホルモンと反応することで、エネルギーの生産促進、体温の調節、新陳代謝のコントロールなど、トータルで体をうまくコントロールしてくれる。亢進症はそれらの代謝が異常に活発になる。
「人間でいうバセドー病と同じ状態です。バセドー病の場合、動悸やイライラ、落ち着きがないといった症状が現れますが、猫もそうで、症状としてはワオワオと活発に吠えるように鳴く、やたらと興奮したり動き回ったり、高齢猫なのに活動的になるといった状態が目立つようになる。
しかも、非常によく食べるのも特長です。食べるけど痩せる。心臓をバクバクさせるから、血圧が上がって、血管に負担がかかります。当然、心臓にも負担になります。
高血圧が影響して目が見えなくなることもあります。最近よく物にぶつかっているという場合、高血圧で網膜剥離になっているかもしれません。
ですから、この病気の場合は抗甲状腺薬とともに、血圧を下げる薬を飲んでもらうこともあります。うまくいくと目が見えるようになる可能性もあります。血圧の目安は上は150くらい。160、170くらいなら、そのままでも、という気もしますが、200近いとか、200を超えたらコントロールしてあげるようにします」※猫の血圧の測り方は人間と同じ。前足に小さなカフを巻き付けて測る。
【猫の高血圧と網膜剥離】
網膜剥離は眼の奥の網膜に穴や裂け目ができて、最悪の場合は失明する病気。原因は高血圧、眼の炎症、白内障など。腎不全や糖尿病などいろいろな病気が引き金になり、とくに高齢の猫に多い。
症状として、目が見えないので物にぶつかりやすくなったりする。診断では眼底検査、超音波検査、レントゲン検査などを行う。治療法は高血圧なら降圧剤を投与するなどの方法がある。早めに治療するのが最善だが、やはり高齢になったら、血圧を測ってもらうことから始めるのがベストだ。
我が家の猫をお世話してくれたMさんの例。Mさんは自身でも2匹飼っている。伊豆高原に住んでいた時に保護した推定21歳の元野良猫のサビと、15歳になる元保護猫のシロ。悩みはどちらも高齢で目が見えないことだという。
「サビは以前から目が見えなかったけど、シロも見えなくなってしまって。最近しょっちゅう物にぶつかるから変だなと思って、病院につれて行ったら、目の専門医を紹介され、診断は網膜剥離。血圧が高いのが原因で人間と同じ網膜剥離になったと言われた。猫が網膜剥離? 言われてビックリ。高血圧の薬もあるけど、治るかどうかは……」
おそらく「猫が網膜剥離」と言われても、ピンとくる人は少ないかもしれない。その前に血圧が高いというところからよくわからない。そこで、Mさんに「そもそも病院で猫の血圧を測ってくれるの?」と訊いたら……。
「そう、測ってくれるのよ」
「でも、病院で血液検査をしてもらっても、血圧を測ってもらったことはないけど」
「今度、病院に連れて行った時に、測ってもらった方がいいわよ」
ガトーは最高体重が10.54キロだった。半年に一度、血液検査をやっているが、中性脂肪が標準値よりも高かっただけで、他は異常がなかった。他の猫に比べて体重が倍くらいあるので、糖尿病とか腎臓病などにならないか、いつも心配しているが、血圧について気にしたことはなかった。猫が血圧を測ってもらえるとも思っていなかったから。
「目が見えないから歩くと物にぶつかるだけでなく、ご飯もにおいで感じるしかない。見ていてかわいそうよ」 とMさん。
そういえばと、ガトーが心配になる。大好きなCIAOちゅ~るを目の前で見せてあげることがあるのだが、反応しない時がある。もしかして見えていない? におっていない? と思うことがある。
猫はかわいいけど、言葉を話さないから、何を考えているかわからない。しかも、痛い時でも表情に表さない動物でもある。過保護といわれようが、お金はかかるかもしれないが、定期的に検査してもらうに越したことはなさそうだ。
そこで動物病院に9歳のガトーを爪切りに連れて行った際、「猫の血圧って測れるんですか」と聞いてみた。すると先生は「測れますよ」と即答だった。「今日でも大丈夫ですか」と言うと、「やります?」とあっさり言われ、その場でやってもらった。
爪切りが終わったガトーをキャリーバッグに入れて隣りの部屋に連れて行き、それから部屋の隅にあった医療用の大きな血圧計を引き寄せた。ガトーはキョロキョロし、「何、これ?」と好奇心の塊になっている。
病院で血圧を測ると、高く出ることは誰もが経験しているはずだ。それは猫も同じ。先生は「爪を切ったばかりで血圧が上がってるから」と首の後ろをさすって落ち着かせ、何度か計測してくれた。
血圧計は人間がやるのと同じ、カフを巻いて圧をかけて測るものだった。ガトーは先生がカフを巻き付けるのをおとなしく受け入れ、その姿がなんとなく可愛らしい。
何回測ってもガトーの血圧は高い。その中から一つチョイスしたのが、上が182、下が126という血圧のデータ。「ちょっと高いかな」と先生。ガトーは人間で言えば、50歳を超えている。この数値では生活習慣病になってもおかしくないかもしれない。
その日、爪を切った時に診察台で計った体重は10.08キロ。ガトーは少しずつ食べる量を減らすようにし、3カ月ちょっとで500グラム近くダイエットしているのだが。
高血圧は腎臓病を含め多くの病気に影響する。猫の時間は人間の3分の1といわれる。人間の1年なら猫の3年、半年は1年半、3カ月は9カ月。そう考えると3カ月に1回くらいは血圧を測った方がいいかもしれない。
費用はやはりマチマチだが、再診料などがなければ1回で1000円程度のようだ。

