文字を書く練習も身体感覚
文字だって、手本を書いてみせること、それを真似して、本人が書くことが必須。文字をバランスよく書くセンスは、位置情報(「こことここは、これくらい空ける」のような)だけじゃ習得できない。
手首の返しや指の運び、鉛筆の傾きなど、筋肉や骨の動きから習得するのである。文字を書くのは、運動センスだから。
この身体性が、記憶もほう助する。漢字なんて、目で見ただけではなかなか覚えられないのに、書けば定着するのは、漢字を使う国の人間なら誰でも知っていること。さらに、文字に情感を覚えるときも、身体性が使われる。
先生が、美しく流麗な所作で漢字を書いてくれれば(味わいのある所作、でもいい)、子どもたちは文字を愛し、本を読む喜びがよりいっそう深くなる。文字は、書き順を覚えればいいってもんじゃない。タブレットに、書き順ごとに部首が映し出されても、教養は手に入らない。
知は大人を通して伝えるべき
12歳までの子ども脳は、身体性を密接に結びつけて、この世を理解する。このため、13歳未満の子どもたちに、安易にタブレット学習させるべきじゃない。AIを安易に介在させるべきじゃない。
傍らにいる大人がAIを使ってもいいけど、知は、必ず大人の身体性を通して、伝えるべきだ。
ちなみに、世界中のAIが、13歳未満の利用制限をしている。ユネスコは、既に2023年に、学校での生成AIの利用を13歳以上に限定すべきだと提言している。
理由は、「生成AIは大人向けに設計されており、子どもが使うと、不適切な内容に触れるリスクがあるから」とされている。
子どもたちの無防備な脳を、世間の闇に触れさせない配慮である。私は、この理由に、「子どもたちの脳の身体性を弱体化し、勉強によってもたらされる人生の喜びを奪う可能性」も含めたい。
黒川伊保子
脳科学・人工知能(AI)研究者・感性アナリスト。
『妻のトリセツ』『夫のトリセツ』『夫婦のトリセツ 決定版』(いずれも講談社)、『娘のトリセツ』(小学館)、『息子のトリセツ』『母のトリセツ』『60歳のトリセツ』『孫のトリセツ』『運のトリセツ』(いずれも扶桑社)を発表。他に『母脳』『英 雄の書』(ポプラ社)、『恋愛脳』『成熟脳』『家族脳』(いずれも新潮文庫)などの著書がある。

