「これは向いていないな…」と思ったら早めにやめられる人もいれば、「ここまでやったんだし…」と引くことができない人もいる。
どこで見切りをつけるか、続けるべきか、その判断は簡単ではない。言語学者で明治大学教授の堀田秀吾さんは、才能を見つける上で厄介なのは、「ここまで費やしたお金・労力・時間」に縛られてしまうことだと語る。
著書『5日で自分の才能が見つかる本』(祥伝社)から一部抜粋・再編集して紹介する。
判断を見誤る理由
これまで6つのパターンを見てきましたが、最後に残ったのは、才能を見つける上でいちばんやっかいな判断のミスかもしれません。
それは、「ここまでやったんだから、今さらやめられない」と思って、合っていない場所にずっと居続けてしまうパターンです。そしてその裏返しとして、「ちょっとやってみて思うようにいかないから、自分には向いていない」と早すぎるタイミングで手を引いてしまうパターンもあります。
この両方の正体を一度に説明してくれる古典が、オハイオ大学のアークスとブルーマーの研究です。
【世界の才能研究より】
アークスとブルーマーは、人がいかに「これまでにかけたお金・労力・時間」にしばられて、判断をゆがめてしまうかをいくつもの実験を組み合わせて明らかにしました。
なかでもよく知られているのが、オハイオ大学のキャンパス劇場で行った実験です。シーズン券売り場に最初に来た60名に定価15ドル・2ドル割引・7ドル割引のどれかをランダムに割り当てました。
シーズン券を持っている時点で、観客はみんな「全公演に行ける権利」を同じだけ持っています。ですから、いくらで買ったかは、その後どれだけ通うかには本来関係ないはずなのです。
ところが実際は、シーズン前半に定価15ドルで買った人はシーズン前半に平均4.11公演に通い、割引で買った人はおよそ3.3公演しか通わなかったのです。同じ権利を持っているのに、高いお金を払った人のほうが「使わないともったいない」と感じて、足を運ぶ。これがサンクコスト効果と呼ばれるものです。

