今回の熊本地震では、テレビやSNSで地震の映像や情報などが多く流れてくる。2年半前に経験した能登半島地震のことを思い出す方も多いのではないだろうか?自分の心を守る対処法を金沢大学医薬保健研究域(精神行動医学)の菊知充教授に聞いた。
地震の映像が、あの日の記憶を呼び起こす
―― 被災を経験した方が、他の地域の地震報道を見て気分が悪くなったり、過去の記憶がよみがえったりするのはなぜでしょうか。
菊知充教授(金沢大学 医薬保健研究域):
こういった大きな地震があったあと、脳がまた危険なことが起きていると判断して、当時の感覚が蘇るようにできているんです。これは弱いからではなく、また心が弱っているからでもありません。大きな災害を経験した方なら誰にでも起きる、自然な防御反応だといえます。自分がおかしくなったのではないか、と不安になる方もいるかもしれません。しかし、そうした反応が起きること自体は、脳の正常な働きによるものなのです。
「何もできない」という無力感に、どう向き合うか
―― 被災地を思いやりながらも、遠くから見守ることしかできない。そんな無力感を感じている方も多いようです。
菊知充教授:
何もできないという無力感を感じてしまうのは、特に誠実な方、一生懸命な方、真面目な方ほどそう思ってしまいます。でも、今の自分にできる最善があります。きょう一日、自分のためにやるべきことをやった。それだけで今は十分である――そう自分に言い聞かせることが大事です。
何かできることがある、そのタイミングまで、まず自分のコンディションを整えることが一番大事なんです。
被災地への思いが強ければ強いほど、無力感も大きくなります。しかし菊知教授の言葉は、そのサイクルから抜け出すための道筋を示しています。報道を見て苦しくなったとき、それはあなたの心が弱いのではなく、あなたの脳が誠実に働いている証です。
まずは今日一日を、自分のために丁寧に過ごすこと。それが、いつか来る「自分にできるタイミング」に向けた、最初の一歩になります。
(石川テレビ)
