鹿児島県指宿市の無人島・知林ケ島から対岸の田良浜まで、約1.5キロの海を泳ぎ切る——。地元・魚見小学校の子どもたちが挑む「知林ケ島遠泳大会」が今年、節目の第40回を迎えた。初挑戦の検定で涙を飲んだ4年生、親子2代で海に飛び込んだ女の子、そして心をひとつにゴールした瞬間の笑顔。1987年から続く伝統の遠泳大会を追った。

春先から秋に砂の道が現れる「知林ケ島」とは

指宿市の錦江湾に浮かぶ知林ケ島は、春先から秋にかけて潮の満ち引きで砂の道が現れることで知られる無人島だ。2026年7月4日、その島に指宿市立魚見小学校の子どもたちが集結した。

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「がんばります」「めちゃ楽しみ」と気合いを見せる子もいれば、「ちょっとドキドキするけど楽しみ」と緊張気味に打ち明ける子もいた。これから彼らが挑むのは、知林ケ島から指宿市東方の田良浜までの約1.5キロを泳ぐ知林ケ島遠泳大会。1987年から続く、保護者・学校・地域が一体となる魚見地区の名物行事である。

魚見小学校PTAの黒岩省吾会長も「子どもたちも一生懸命頑張っている。親としても楽しみに大会を迎えられることを期待する」と語り、地域全体で子どもたちの挑戦を見守る姿勢を示した。

「心をひとつに」——5月から始まった練習

40回目の大会に向けて練習が始まったのは、5月下旬のことだった。2026年は4年生から6年生の43人がエントリー。黄色い帽子が6年生、緑が5年生、そして赤が遠泳初挑戦の4年生だ。

担任の松永良太先生が掲げたテーマは「心を一つにしてチームで泳ぐ」。プールサイドでは「お願いします!」という掛け声とともに練習が繰り返された。

その中に、水泳初心者の4年生・井上葵乃さんがいた。「足を曲げて伸ばす」「ピタッと(足を)そろえる」と熱心に指導するのはお母さんの友美さん——魚見小の卒業生だ。友美さん自身もかつてこの遠泳大会に参加しており、親子2代での挑戦となった。葵乃さんは「足のところが難しかった。がんばります」と前を向いた。

検定で涙した夏希さん、追試験を経て合格

練習開始から約20日後、子どもたちは大会参加をかけた検定に臨んだ。順調に泳ぎを進める子がいる一方、途中で足をついてしまう子も。初挑戦の4年生・吹留夏希さんも悔しさを隠しきれなかった。「がんばったけど(底が)低いところで足ついちゃった」——夏希さんの言葉に、練習への懸命さがにじんだ。

速さを競う競泳とは異なり、遠泳は仲間と協力しながら長時間泳ぎ続けることが求められる。松永先生は「チームでお互い声をかけあって泳ぐことで友情などが培われる」と説明する。

その言葉通り、検定に合格できなかった子どもたちも練習を続けた。そして本番を迎えた当日、夏希さんの姿がそこにあった。追試験に見事合格し、43人全員が大会参加の切符を手にしたのだ。葵乃さんはもちろん、その中の一人だった。出発前、お母さんの友美さんは娘にこう声をかけた。「安心してるから。信じてるからね」。

波と風の中、「エンヤコーラ」の掛け声とともに

いよいよ本番。「知林ヶ島遠泳大会みんなで泳ぎ切るぞ!お~!」という掛け声とともに、子どもたちが海へ出発した。

先頭を引っ張るのは5・6年生で構成するチーム。カメラに手を振る余裕を見せながら海を進む。後ろに続くのは4年生中心のチームだ。

この日は風と波があり、初心者の子にとっては厳しいコンディションだった。しかし保護者や地域の人々が「いいよ、いいよ!がんばれ!」」と声援を送り続け、子どもたちはひとかき、ひとかきと前に進んだ。夏希さんも葵乃さんも、懸命に腕を動かした。

スタートから約40分、全員が笑顔でゴール

スタートから約40分。先頭チームが仲良く手をつないで田良浜にゴールした。6年生の川元心徠さんは「みんなすごく頑張っていて十分。大切な40年。大事な日だと思いました」と振り返った。

後ろに続いたチームも続々とゴール。初挑戦の夏希さんはお父さんの潤さんと笑顔でゴールラインを越えた。「口の中に(海水が)入ったけど楽しく泳げた。来年もやりたい」——その言葉には、達成感と自信が溢れていた。潤さんも「気持ちが強くなって泳げたんじゃないか」と目を細めた。

お母さんが見守る中、葵乃さんも堂々のゴール。「たのしかったです」とひと言。友美さんは「チャレンジしただけで"はなまる"です。泳ぎ切れてよかった。伝統行事が40回続いているのですごくありがたい」と感慨深げに語った。

地域がつなぐ伝統の遠泳——。親子2代で海を渡り、仲間とともに1.5キロを泳ぎ切った魚見小の子どもたちは、この夏、確かに一回り大きく成長した。

【動画で見る▶「心を一つに」児童43人の挑戦 指宿・知林ヶ島遠泳大会【鹿児島】】

鹿児島テレビ
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