災害関連死を含め28人が命を落とした静岡県熱海市の土石流災害から5年。被害は違法な盛り土によって拡大したとされる。遺族たちは、盛り土の現・旧所有者に対して殺人容疑などで、熱海市長に対して業務上過失致死の疑いで刑事告訴し、捜査は現在も続けられている。また、土地の現・旧所有者や県・それに熱海市に損害賠償を求める民事の裁判も続けられている。責任の所在はどこにあるのか。
28人が犠牲に…責任の所在
28人が犠牲となった土石流災害。土砂は標高390メートルの地点から2キロ離れた海まで流れ下り、多くの人の命とふるさとを奪った。この静岡県熱海市の土石流災害は、他の自然災害とは違う面を持つ。多くの遺族は「自然災害ではなくて人災」だと主張している。
甚大な被害を招く要因となったのは土石流の起点に造成され、崩落した「違法な盛り土」だったからだ。遺族たちは、土地の元所有者らを殺人容疑などで、熱海市長を業務上過失致死の疑いで刑事告訴し、捜査は現在も続けられている。また、遺族や被災者が損害賠償を求めて起こした民事裁判も行われている。2026年2月には、裁判官による現地視察が行われたほか、当事者に対する尋問も行われ、9月に結審、2027年3月までに判決が言い渡される見通しだ。
被害者側の加藤博太郎弁護士はこれまでの裁判を次のように振り返った「多くのご遺族が裁判の傍聴に来ていたが、真実、それぞれの言い分が生の声として見えてきた。そこが遺族にとって一つの進歩、心のわだかまりを解くきっかけになったのではと思っている。もちろんそれぞれの方が、私たちが望むような証言をしていただいているとは思っていないが」
違法盛り土を造成したとされる元土地所有者
一方、違法盛り土を造成したとして責任を問われている元土地所有者の男性は、5年を迎える7月3日を前に次のように述べた。「自分なりに気持ちを整理しながら、皆様、被害に遭われた人に対して敬意の思いを持ちながら過ごしたい」
起点となった土地は、静岡県がおよそ11億円をかけて不安定な土砂を取り除いた。費用を男性に求める裁判は県が敗訴し控訴している。男性は裁判について「(土砂を)入れた人はすべて棚に上げ、入れていない人をターゲットにした裁判。判決も税金で支払えとなっている以上、県民は怒りますわな」と述べた。
続いている警察の捜査や裁判に向けて、男性は「何があっても、自分なりに自分の論理を主張していくしかない」と話した。
被害者側の弁護士「人災の歴史の1ページに」
被害者側の加藤弁護士は、裁判で自分たちが望む判決を期待するのと合わせ、決意の思いを語った。「どんな事件でも風化していくのですが、今回の事件というのは歴史の中で、人災の歴史の中で1ページにしていかないといけないのではと思っている」
土石流災害を教訓にするために
熱海市の土石流災害を「教訓」とするため、行政も動いた。2022年、静岡県は全国でも最も厳しいとされる独自条例を施行したほか、翌年に国も危険な盛り土を全国一律の基準で規制する法律を施行。違反した個人には3年以下の拘禁刑または1000万円以下の罰金が、法人には最高3億円の罰金が科される。不適切な盛り土を早期に発見するため、静岡県は「盛り土110番」を設置。毎年100件近い情報が寄せられている。
静岡県富士市はドローンを操作して土砂が崩れている場所がないか確認している。静岡県が公表している不適切な盛り土あわせて149件のうち、富士市内には県内最多となる25件の不適切盛り土が存在する。盛り土が崩れていないか。新たな土砂や廃棄物が投棄されていないか。月に10回以上、パトロールを続けている。
建物を作るという行為が社会からなくならない以上、残土処分や盛り土そのものがなくなることはない。静岡県が公表する不適切な盛り土の数も、大幅に減っているとは言えない。県も、AIを使ったポスターやチラシを新たに制作するなどして、危険な盛り土を無くすための工夫を凝らしている。富士市の担当者は二度と同じような土石流災害を起こさないために、少しでも違反行為に見えるようなことがあれば「それはすぐ直しなさい、安全基準があるそれを守りなさい」と指導しているという。
土石流の発生から5年。「人災なのか、責任はどこにあるのか」捜査や裁判の進展が待たれる。それと合わせ、二度と悲劇を繰り返さないため、行政、住民、社会が力を合わせた取り組みが必要だ。

