10月14日、長野県飯山市の山林で猟友会員の80歳の男性がわなにかかったクマに襲われ死亡しているのが見つかった。現場を確認した専門家は、「見通しが悪い場所にわながあり、クマに近づいてしまったのでは」と指摘する。
体長約130センチの成獣メス
14日午前6時すぎ、飯山市旭の山林内でわなにかかったクマの近くで男性が死亡しているのが見つかった。
死亡したのは80歳の男性で、家族に「イノシシのわなを見に行く」と伝えたまま、前日から行方が分からなくなっていた。
警察によると、男性の頭部にはクマの爪痕があったという。
わなにかかっていたクマは体長約130センチのメスの成獣で、その後、駆除された。
この記事の画像(8枚)「イノシシはいるがクマは…」
近くに住む人によると、この辺りでクマの出没はあまり聞いたことがないという。
イノシシによる農作物被害は毎年のようにあり、猟友会の会員でもある男性がイノシシのわなを仕掛けるため、よく現場付近の山を訪れていた。
わなにかかったクマは動ける状況
現場に仕掛けられていたのは獲物の足をワイヤーで締め付けて捕獲する「くくりわな」。
駆除に立ち会った県のクマ対策員の後藤光章さんによると、クマの後ろ足はワイヤーとつながっていたが、半径数メートルの範囲は動ける状況になっていたという。
周囲の木には、クマが引っかいた傷跡も残っていた。
見通し悪く、近づいてしまったか
さらに、現場付近は草木が生い茂って見通しも悪く、男性がクマに気付かずに近寄ってしまった可能性が高いという。
後藤さんは、わなの設置場所について「基本的には林道の入り口とか、車降りてすぐとか、双眼鏡でのぞいて見えるような状況の方が良い」と指摘する。
現場近くに柿の木が…
また、後藤さんは現場付近はクマを引き付けやすい環境だったと話す。
「すぐ近くの山際に柿の木があり、そこにクマが来ていた形跡が見られている。そういう木があると、食べ物が少ない時期にクマを集落に呼び込みやすく人身事故も起きる。そのような木は減らすべき」と指摘する。
全国で相次ぐ人身被害
クマによる人身被害は全国で相次いでいて、環境省の速報値では長野を含む15道府県で109人にのぼり、統計を取り始めた2007年度以降で最も多いという。
県内では今年9件10人の被害が発生していて、死者が出たのは今回初めてだ。
人身被害を防ぐポイントは
まずは、遭わないこと。山林に入る場合は、鈴や笛、ラジオなどを鳴らし、人間の存在を知らせることが大事。
明け方や夕暮れ時はクマの活動が活発になるため、山林などへの立ち入りは控える。
もし出合ってしまったら、大声で叫んだりせず、ゆっくり後ずさりしてその場を離れるようにする。
追いかけてくる習性があるので、背中を見せて逃げることは絶対にしない。
クマを人里に引き付けない工夫も大切だ。山の近くで放置されている柿や栗の木があったら、伐採するなど管理を徹底。
食べ物や生ごみは放置しない。
(長野放送)