福井市で1986年に発生した女子中学生殺人事件を巡り、犯人とされた前川彰司さんが再審で無罪判決となってまもなく1年となります。
一方で事件の真相はいまだ明らかになっておらず、前川さんや被害者の家族はやり場のない思いを抱えながら日々を過ごしています。その胸の内を取材しました。
福井市に住む前川彰司さん(61)は、40年前に福井市で起きた女子中学生殺人事件を巡り、2025年に再審無罪を勝ち取りました。
晴れて無罪となり1年。その一方で、未だ事件の解明が進まない現状に不満を抱えています。
「えん罪が晴れて良しとしたいところはあるが、福井事件がそもそもどういった事件だったか分かっていない中での投獄だった。そういう意味では釈然としない」
再審無罪となり1年経ったいまも、前川さんは自身の経験を語り、再審法の在り方を訴え続けています。
そしてもう一人、この事件で苦しんでいる人がいます。
事件で被害にあった高橋智子さんの実の姉、大橋宏子さん(58)です。大橋さんは毎日、仏壇に手を合わせ智子さんに語り掛けます。
「お姉ちゃん、ちゃんとついてるで。安らかに寝てくださいね」
当時、両親はすでに離婚していて宏子さんは父と暮らしていましたが、定期的に母や智子さんと会っていました。
「色々楽しかったですね。一緒に遊んでいたあの頃が良かったね」
そして、事件は突然起きました。宏子さんは、智子さんの死をテレビのニュースで知ることになります。
「なんで妹がこんな目にあわないとあかんのか。なんで妹なの…」今も後悔だけが残ります。
宏子さんの元には、智子さんの遺骨がありました。「自分の側に置いておいた方が妹も寂しくないし喜ぶと思うから…」
恨みたい相手は、言うまでもなく犯人。犯人とされた前川さんに対してその思いを向けていた時期もありました。
しかし、再審で戦う前川さんを見てきて、その思いは大きく変わったと話します。
「犯人っていう目線で言われて辛かったと思うし、いま私は前川さんが無罪っていうのはすごく嬉しいことで、喜ばしい。堂々と生きていってほしい」
事件から40年。前川さんが無罪となった一方、真犯人は逃げ切りどこかで暮らしています。
宏子さんは、犯人が早く自首してほしいと願い続けています。
「どうして妹を殺したのかというのを犯人の口からも聞きたいし、誰が殺したんか分からんけど、やっぱり犯人が早く自首してきてほしい」
さらに、真犯人を逃している警察に対しても不満を述べます
「警察もちょっとおかしいんじゃないのと思う。弱い人の味方なのに、何で犯人を前川さんに仕立ててそんなことするんやて、私はそう思う」
福井事件を取材してきたジャーナリストの大谷昭宏氏も、当時の捜査を強く非難します。
「被害者の無念さや、やりきれなさ、ご遺族の持っていき場のない怒りはそっちのけで、誰がやったことにしても構わないというのは、被害者の無念を晴らそうなんていう気はなかったと言われても仕方がないと思うんですね」
こうした中、2026年5月には名古屋高等検察庁が事件の検証を行うと発表。裁判などに関わった検察官への聞きとり調査を行うことになりました。
しかし、元を正せば警察が重要な証拠を隠し持っていたことが問題とされている福井事件。大谷氏は、検察より警察の検証が必要だと話します。
「検察の検証はどこに瑕疵(かし)があったかを明らかにしようということ。ただ、どこで証拠を見誤ったのか、どこで目撃証言を間違えたのか、といった検証を今さらしようと思っても恐らくできないと思います。きっちりとした検証を警察がしない限り、検察独自の検証は非常に無意味なものになってしまう。私は『検証をやらないでおこう』という暗黙の了解が警察の中にあると思います」
前川さんが再審で無罪となったことで、真犯人は別にいることが明らかになりました。しかし、その正体はいまだ判明していません。
真犯人の特定と事件の真相解明が待たれる中、関係者はいまも、その日を待ち続けています。
「まだこの事件は終わってない。犯人が分からないままでは、やっぱりこの事件は終わっていない。犯人にはちゃんと罪を認めて出てきてほしい」そう大橋さんは訴えます。
