天皇皇后両陛下の滞在中、ベルギーはヨーロッパを襲う熱波の影響で連日30度を超え、最後の3日間は35度にも達しました。気温の暑さと友情の厚さ、お互いを大切に思う心の熱さ。3つのアツさを感じたベルギーでの6日間の同行取材を振り返ります。

炎天下に異例の出迎え

22日、両陛下は国王一家の住むラーケン宮に到着されました。

取材場所にスタンバイした際、記者のスマホの気温表示は30度。強烈な日差しから気温以上に暑く感じられましたが、国王夫妻は王宮の涼しい玄関から200メートル以上歩いて門の近くまで迎えに出ました。

炎天下のなか歩いて両陛下の出迎えにきた国王夫妻
炎天下のなか歩いて両陛下の出迎えにきた国王夫妻
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国賓がラーケン宮に泊まる際、こうして門の近くまで出迎えるケースは異例なんだそうです。サングラスをかけ、暑さに耐えながら10分近く両陛下を待つフィリップ国王を間近に見ていると、いかに心待ちにしているかが伝わってきました。

皇后さまと王妃がチークキス
皇后さまと王妃がチークキス

そして、両陛下が到着すると国王夫妻と握手やチークキスを交わし、どんな風に撮影するのかを話し合いながらカメラの前へと移動されました。皇后さまが陛下に日本語で「あちらにカメラが」と伝えられ、陛下もカメラの位置を理解された様子です。

並び順は譲り合い 控えめな国王

筆者が今回の訪問中にフィリップ国王夫妻を間近に見たのはこの場面が初めてでした。

前の訪問国オランダとは違い、国王は並び順を指示せず、お互いに譲り合いながら流れで決まっていく様子がほのぼのとしていて、10年前の来日を取材したときと変わらぬ国王の控えめな人柄が感じられました。

記念撮影を終えると、4人で炎天下を王宮まで200メートル以上歩かれました。

4人で報道陣に手を振られた
4人で報道陣に手を振られた

徐々に小さくなっていく後ろ姿を日本とベルギー両国のプレスが静かに見つめていると、玄関に到着した両陛下は国王夫妻と振り向かれました。大きく手を振るプレスに向かって4人も手を振られ、遠景ながらとても和やかな”親しい友人同士”の4ショットが撮影できました。

ひとつ屋根の下で4日間

王宮の中では、ひとつ屋根の下で4日間過ごし、両陛下が宿泊される部屋なども国王夫妻自ら案内していたそうです。

宮内庁幹部は「私たちが存じ上げないレベルでたぶん色々ご一緒に過ごされているのではないか」と話していました。

陛下はこのラーケン宮に何度か宿泊した経験があり、1984年の滞在ではアフリカ訪問中だった

上皇ご夫妻も合流され、上皇さまが深い親交を築いたフィリップ国王の伯父で先々代のボードワン国王夫妻のおもてなしを受けられました。

ベアトリックス女王主催レセプションで記念撮影(1991年)
ベアトリックス女王主催レセプションで記念撮影(1991年)

戦後根強い反日感情があったオランダからベアトリックス前女王夫妻も招かれ、楽しいひとときを過ごされたそうです。日本とオランダの関係を案じるボードワン国王の配慮もあったのかも知れません。

オックスフォード大学に留学中の陛下 パブにて
オックスフォード大学に留学中の陛下 パブにて

陛下はイギリス留学中にフィリップ国王ともこの王宮で過ごし、カメラが趣味だったボードワン国王が撮影した当時の「家族写真」の数々を晩さん会の前に一緒に見返されたそうです。

今回の滞在で王宮の隅々から当時の温かい思い出が蘇り、陛下は「感慨深い」と懐かしまれていました。

バターが溶け出す 猛暑の晩さん会

そのラーケン宮で23日に行われた国王夫妻主催の晩さん会。

ヨーロッパの午後8時はまだ明るく、両陛下や国王夫妻のお顔にも容赦なく強い日差しが差し込み、まるで昼食会さながらです。

晩餐会では直射日光が…
晩餐会では直射日光が…

クーラーの無い室内は体感温度が30度を超え、コーラス隊が一人倒れてしまうほどの暑さ。フィリップ国王が汗を拭う様子も確認できました。宮内庁幹部によると、テーブルの上のバターが暑さで溶け出していたそうです。

子ども達を初めて国賓晩さん会へ

「ようこそベルギーへ」

冒頭、国王は原稿には無かった日本語で語りかけました。イギリスでチャールズ国王が「おかえりなさい」と呼びかけた温かさが思い出されます。

晩餐会には王女も参加した
晩餐会には王女も参加した

今回の晩さん会には、国王の4人の王女王子が出席しました。国賓をもてなす晩さん会への出席は4人にとって初めてです。

ベルギー入り後まずは別邸に招いて王女王子も交えた水入らずの夕食会、そしてブリュッセルでは同じ屋根の下で4日間、家族のように過ごすことを提案した国王。

「地球の反対側に日本のような友人を持つことはとにかく心地よい」との言葉も
「地球の反対側に日本のような友人を持つことはとにかく心地よい」との言葉も

今回の晩さん会を子ども達のデビューの場としたことを「国王にとって両陛下への友情や日本への敬意を表す特別な意味があったのではないか」と宮内庁関係者は推し量っていました。

「今日の世界において、地球の反対側に日本のような友人を持つことはとにかく心地よい」

国王の晩さん会でのこの言葉には、国と国との関係のみならず、両陛下との個人的な信頼関係も大いに含まれていると感じました。

同じ車で1時間 国王の熱い思い

今回ベルギーでは、ほとんどの行事に国王が同行しました。

24日の古都ナミュール市への訪問には、当初別々の車で向かい国王が先着して陛下を出迎える予定でしたが、ベルギー側の提案で同じ車での移動に変更されました。

陛下と国王は同じ車で1時間一緒に移動された
陛下と国王は同じ車で1時間一緒に移動された

お二人は片道1時間余り、車中で様々な話をされていたと言い、宮内庁幹部は「よほど親しくないと成立しませんよね」と話していました。

車には天皇旗とベルギー王室の旗が 筆者撮影
車には天皇旗とベルギー王室の旗が 筆者撮影

車には両国の旗が取り付けられていました。これまで様々な国への訪問に同行してきた筆者にとって、あまり見たことの無い光景で、できるだけ多くの時間を共にしたいという国王の熱い思いとお二人の仲の良さが感じられました。

「撮影できていますか?」報道陣を気遣われる陛下

23日にブリュッセルを象徴する市庁舎を訪問された際のことです。

市庁舎ではフランス語で会話された
市庁舎ではフランス語で会話された

両陛下が中庭に到着されると、地元の小学生から皇后さまと王妃にブーケが贈られ、皇后さまがフランス語で交流される場面を初めて間近に拝見しました。

皇后さま)何歳ですか?
女の子)7歳
皇后さま)7歳なのね。ありがとう!きれいなお花。

陛下と国王は後ろで笑顔で見守られていましたが、当初予定していた位置と少しずれたため、カメラマンは慌てて移動。その気配に気付いた陛下が「撮影できていますか?」と声をかけて下さいました。

陛下が“撮れ高”を気にされる場面も
陛下が“撮れ高”を気にされる場面も

国内と違い、外国では想定と本番が違うという状況がよく起こります。陛下はいつも臨機応変に対応し、「外国はそういうものですよ」と平然とされていると以前側近に聞いたことがあります。

皇后さまだけでなく、報道陣の撮れ高をも気にかけられていることに気づき、とても温かい気持ちになりました。

※後編に続く

【執筆:フジテレビ宮内庁担当 宮﨑千歳】

宮﨑千歳
宮﨑千歳

天皇皇后両陛下や皇族方が日々取り組まれる様々なご活動をより分かりやすく、現場で感じた交流の温かさもお伝えできるような発信を心がけています。
宮内庁クラブキャップ兼解説委員。1995年フジテレビジョン入社。報道局社会部で警視庁クラブなどを経て、2004年から宮内庁を担当。上皇ご夫妻のサイパン慰霊の旅、両陛下の英エリザベス女王国葬参列などに同行。皇室取材歴20年。2児の母。