先週発生した千葉豪雨では、犠牲者が相次いだ一方、損壊した家屋もかなりの数に上っている。

16日午前10時時点の総務省消防庁のまとめでは、床上浸水の597棟をはじめとして、損害を受けた住家が1160棟に及んでいるほか、車が水没する被害も多発した。

水災補償をつけているかがポイント

火災保険は、火災などによる住まいや家財の損害に対して保険金が支払われるものだが、水災補償をつけていれば水災による被害も対象となる。

大手損保が販売している火災保険での水災補償は、あらかじめ決めておいた自己負担額があればその額を差し引いて、損害保険金が支払われるというのが一般的だが、水災で支払われる保険金を一定割合に抑えるなどして水災補償を縮小できるタイプや、水災補償をすべて外した商品プランもある。

地域により水災リスクが異なるなか、選択の余地が広げられたもので、補償を狭めることで保険料を安くし家計負担を抑えられるケースもある。

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近年、集中豪雨が頻発するなか、水災被害は激甚化し、水災による保険金支払いは増加傾向にあるが、他方、火災保険の水災補償付帯率は年々減少していて、損害保険料率算出機構のまとめでは、2014年度に75.2%だったのが2024年度には61.8%に低下している。

今回大きな被害が出た千葉県は58.1%だった。実際に被害にあった場合、自身の火災保険での水災補償の付帯状況を、まずは確認したい。

「床上浸水」「30%以上の損害」など支払い要件をチェック

何が水災での保険金支払いの条件になっているかについてもチェックすることが大事だ。

大手損保の火災保険の多くが、「床上浸水」か「地盤面から45㎝を超える浸水」、または「同等の建物を建てたり、家財を買い直したりするのに必要な金額を示す”再調達価額”の30%以上の損害」を補償を受ける条件としている。

つまり、「床下浸水」で「損害が30%未満」だと支払い要件を満たさない場合があり、注意を要する。

保険金請求の手続きにあたっては、片付けや修理にとりかかる前に、被害状況などをスマホなどで写真に撮っておくことが大切だ。

浸水すると壁などに汚れが残ることが多く、浸水した跡にメジャーをあてて浸水の高さがわかるように撮影したり、損傷個所などを確認できる写真をさまざまな角度や距離から撮っておくことが、保険金をスムーズに受け取るためのステップとなる。

被災の日時や状況などを電話やホームページなどを通じ保険会社や保険代理店に連絡すると、保険金請求に必要な書類が送られてきて、必要事項を記入して返送する流れだが、対話アプリ「LINE」などのチャット機能で、損害物写真などを登録し保険金請求手続きが完結できるサービスを打ち出している大手損保もある。

保険金支払いにあたっては、保険会社による現地調査が実施されることも多い。

都市型「内水氾濫」にも注意が必要

今回被害に遭わなかった地域の人も、今の契約で水災が補償されているのか、十分なのかを、住まいの立地条件とともに、改めて見直してみることを勧めたい。

集中豪雨などにより、河川が氾濫し洪水になるケースは「外水氾濫」と呼ばれるが、国土交通省が掲載している「ハザードマップポータルサイト」で、「外水氾濫」の危険度を知ることができる。

リスク情報とともに、土地の特徴などを地図・写真に重ねて表示できるほか、地域によっては、自治体が作成したハザードマップにもリンクしている。

また、「浸水ナビ」という浸水想定区域図を示すウェブサイトでは、河川の水が溢れ出した場合の浸水域の広がりがわかるようになっている。

一方、ハザードマップで危険度が低いと思われる地域でも、水災が思わぬ形で発生する可能性があるのが「内水氾濫」だ。

下水道や排水路の処理能力が追い付かずマンホールから水が噴出したり、トイレなどから下水が逆流したりするもので、河川から離れた地域でも発生し、標高が低い地域のほか、地面がアスファルトなどで舗装された都市部で起きやすいとされている。

日本損害保険協会の集計では、水災による被害額の約3割、浸水棟数の約6割が「内水氾濫」によるものだ。

また、洪水ハザードマップは、一般的に、想定される最大規模の降雨を前提として作られていて、豪雨が多発するなか、ハザードマップの想定を超える災害が起きないとは言い切れなくなっているのが現状だと言える。

2025年調査では水災損害額300万円以上が約2割

日本損害保険協会は2025年に水災への備えに関する意識調査を行っている。

水災被害を経験した人からの回答では、建物の損害額の平均は193万円、家財は159万円で、300万円以上とした人は、建物・家財でそれぞれ20.8%、16.8%となった。水災補償をつけていた人のうち、90.9%が「契約していてよかった」と答えている。

「床上7cm浸水して、1階の設備(トイレ、風呂、キッチンなど)がほぼ使えなくなったが保険金で1階部分は十分なリフォームができた」(50代)、「自宅の1階部分の一部が浸水して住居の修理が必要になった。家電製品が水を浴びてしまい使用不可になった。保険対応で新品に交換はできた」(30代)などの声が寄せられた。

水災補償をつけた理由としては、「自宅周辺で水災が発生する可能性が高いから」(24.7%)、「水災で生活再建にかかる費用が高額になると思ったから」(23.2%)が上位となった。

他方、未契約理由は「自宅周辺で水災が発生する可能性が低そうだから」(54.9%)、「自宅周辺で水災による被害が小さそうだから」(25.0%)が上位だった。

火災保険料では建物の所在地により水災リスクの危険度に応じ5段階の区分が設けられているが、等地が低い地域に住んでいる人ほど「水災の可能性は低い」と回答する傾向が見られた。

ただ、区分は相対的な水災リスクレベルを表したものであり、等地が低くても水災が起こらないとは限らない。

水災補償の付帯をどうするかは、近くの河川との距離・高低差や「内水氾濫」の可能性のほか、建物の形態や構造、一戸建てなのかマンションの高層階なのかなど、さまざまな条件を十分に検討したうえで、注意深く判断することが必要だ。

車の水没は「車両保険」でカバーも

今回の千葉豪雨では、道路が冠水し、車が次々と動けなくなる事態が発生した。

車両保険に加入していれば、こうした水没により車が受けた被害は補償されるのが一般的だ。

最近では、2025年8月6日から発生した大雨被害で、車両保険の支払いが1万7000件を超え、支払保険金の総額は265億円近くに達している。

ただし、水災で車両保険を使った場合、等級区分が1等級ダウンし、継続契約には「事故有」の割増率が1年間適用される。

なお、地震が原因の津波による浸水被害は、火災保険の水災補償の対象にならず、カバーするには「地震保険」にセットで加入しておかなくてはならない。

また、地震による津波で車に生じた損害を補償対象にするには、自動車保険に特約を付ける必要がある。

自身が住む地域の水災リスクを把握することの重要度が高まるなか、住まいや生活エリアを取り巻く環境を確認して最適の補償内容を選び、備えを進めておくことが一段と大切になってきている。

(フジテレビ解説副委員長 サーティファイド ファイナンシャル プランナー(CFP) 智田裕一) 

智田裕一
智田裕一

金融、予算、税制…さまざまな経済事象や政策について、できるだけコンパクトに
わかりやすく伝えられればと思っています。
暮らしにかかわる「お金」の動きや制度について、FPの視点を生かした「読み解き」が
できればと考えています。
フジテレビ解説副委員長。1966年千葉県生まれ。東京大学文学部卒業。同大学新聞研究所教育部修了
フジテレビ入社後、アナウンス室、NY支局勤務、経済部にて兜・日銀キャップ、財務省・内閣府担当、財務金融キャップ、経済部長を経て、現職。
CFP(サーティファイド ファイナンシャル プランナー)、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、農水省政策評価第三者委員会委員