携帯ショップと“癒着”か?
こうした手法は、「携帯ショップとの“癒着”がないとできない」とも明かした。
一般的に、携帯ショップは、携帯キャリアと代理店契約を結んだ企業が運営しており、契約数に応じて、携帯キャリアからインセンティブが支払われる。
グループの中には、ショップとの交渉役が存在するといい、「ノルマを達成したいショップ側と癒着することで、契約に便宜を働いてもらっている」という。
戸籍謄本を不正に使用か
一方、一度に大量の回線を契約すると、携帯キャリアの審査ではねられることがある。
その際には、協力者が持参した戸籍謄本から親族の名前を抜き出し、親族に無断で「利用者欄」などに記入して審査を通過させるという。こうした記入を黙認したり、自ら行ったりする携帯ショップも存在するという。
違法性の認識について問うと、「契約手続きは、あくまで協力者本人の責任」とした上で、「私たちは合法的に、協力者と携帯ショップをつなげているだけ」と淡々と語った。
携帯ショップ「ノーコメント」
男は、グループと関係がある店として、大阪と京都のショップ数店を挙げた。

本当に両者は結託しているのか。ショップを訪れると、責任者はいずれも「答える立場にない」などと説明。運営企業の社長も「ノーコメント」として取材に答えなかった。
携帯キャリア各社「通信業界全体の課題」
各携帯キャリアはキャリアホッピングについて、どう考えているのか。各社に質問状を送付すると、いずれも「通信業界全体の課題」との認識を示した。

その上で本人確認の厳格化や契約回線数の制限、特典内容の見直しなど、「対策を進めている」と説明。ショップによる不適切な契約手続きについては、「確認された場合に厳正に対処する」などとした。中には、ショップに対して覆面調査を実施しているという社もあった。
一方、「自主的な対策には限界がある」として、国に制度改正を求める声が多かった。
対策を検討する総務省
そうした声を受け、国も対応に動き始めている。
総務省の有識者会議が先月取りまとめた報告書案では、最長1年間での特典の分割付与を認める方針が示された。途中解約した場合に特典の付与を止めることが想定されており、キャリアホッピングを一定程度防止する効果が期待される。
総務省は取材に対し、「短期解約の中には、利益還元の獲得のみを目的とする解約かどうかを特定することは困難」と指摘しつつも、「携帯電話事業者による利益提供の設計に一定の柔軟性を認める規制の見直しを行うことにより、間接的に短期解約の抑制を図る」とコメントした。
「乗り換えやすさ」が生んだ副作用
一方、そもそもなぜキャリアホッピングが広がったのか、その背景を問う声もある。
携帯市場に詳しい携帯電話ライターの佐野正弘さんは「総務省の政策がキャリアホッピングを助長させてきた側面がある」と指摘する。
かつて各キャリアは、端末を「1円」など大幅に値引きする一方、一定期間の通信契約を前提に収益を確保していた。
こうした販売手法が「通信料金の高止まりにつながっている」と批判され、2018年、菅義偉官房長官(当時)による「4割下げる余地がある」といった発言をきっかけに、規制が加速。総務省が端末値引きに制限が設けたほか、短期解約の違約金を上限1千円と定めるなどした結果、利用者がキャリアを乗り換えやすくなった。
その一方で、ポイント還元などの特典は過熱。佐野さんは、こうした環境がキャリアホッピングを成立させる土壌になったとみる。
「行政による市場への過度な干渉が、競争の形をゆがめているのではないか。今の規制のあり方全体を考え直す時期だ」
死角に先手打てるか
簡単に稼げる仕事がある――。
そんな甘い呼び水で始まる組織的キャリアホッピングは、利用者の選択肢を広げるための政策が、ブローカーに“インフラ”を提供してしまった結果、生まれた「死角」ともいえる。
そうしたグレーゾーンで利益を得る行為に対し、先手を打つことはできないのか。場当たり的な規制にとどまらず、将来を見据えた制度設計が求められている。(松岡紳顕)

