「小遣い稼ぎで、大阪に行かないか」
ある男性のもとに掛かってきた、知人からの1本の電話。携帯電話の契約手続きをするだけで、数万円を得られるという。

半信半疑で向かった大阪で、車に乗せられ向かった先は、携帯ショップ。1店舗、2店舗、3店舗――。

契約手続きを終えるたび、男の車は次の店へと向かった。

男性が組み込まれていたのは、「キャリアホッピング」と呼ばれる手法を使った、組織的スキームだった。逃げられない車内で、男性がその是非を尋ねると、運転手は表情を変えずに言い放った。

「別に、合法なんで」

組織的に「キャリアホッピング」?ブローカーらの影

先月、記者の元にある情報が寄せられた。

「グレーな手法で、組織的に大金を得ているブローカーグループがいる」

その手法とは、「キャリアホッピング」。

この記事の画像(26枚)

携帯キャリアの乗り換えで得られる数万円単位のポイント還元やキャッシュバックなどの特典を目当てに、短期間で回線契約と解約を繰り返す行為だ。

現状、法規制はされておらず、短期解約時の違約金も上限1千円にとどまる。こうした「ペナルティより特典額の方が大きい」状況に目をつけ、全国から組織的に協力者を集めて、特典分を吸い上げているグループが存在するという。

「簡単に稼げる」を信じ、参加した男性は・・・

取材を進めると、「過去に協力したことがある」という男性にたどり着いた。

男性は、知人から「大阪で簡単に稼げる仕事がある」と誘われたという。

携帯電話の契約を繰り返すだけで、報酬は3日間で10万円程度。交通費も宿泊費も出る。

「合法だ」という説明を信じ、参加を決めた。

LINEグループに入れられると、本名や住所の提示、携帯回線10回線分、戸籍謄本の準備などを求められた。

ポイントで家電購入「転売しグループの収益に」

数日後、大阪入りすると、駅のロータリーに1台の車が待っていた。

運転手は、ブローカーグループのメンバーだという若い男。後部座席には、自身と同じような“協力者”が数人座っていた。

車が向かった先は、家電量販店だった。

若い男は携帯電話カウンターで店員に挨拶し、男性ら協力者に対して、携帯回線の乗り換え手続きをするよう指示。「ショップとは話が付いている」と繰り返した。

手続き後、回線乗り換えの特典として付与されたポイント数万円分で、高級イヤホンを購入するよう指示された。商品はその場で回収され、「転売してグループの収益になる」と説明を受けた。

戸籍謄本の不正使用も 得た収益は40万円分以上

男性らは3日間で、大阪や京都の携帯ショップなど7~8店を回り、約15回の回線乗り換えを実施。得た特典は計約40万円分にのぼったという。

複数回線の契約を怪しまれた際には、戸籍謄本を示すとともに、「家族が使う」と偽るよう指示された。時には“息子のフリ”をしたブローカーに電話し、店員を信じさせる工作も行った。

「組織的な怖さ感じた」男性の後悔

利用した回線契約は、直後にほぼ解約したが、一部回線は今もグループに管理されたままだ。「仮に特殊詐欺などに悪用されたら、自分の責任も問われてしまうのでは」

一緒に行動した協力者は全国各地から集まっていた。「組織的な怖さを感じた。小金ほしさに関わるべきでなかった」と悔やむ。

そんなリスクの見返りに約束された報酬の一部は、今も支払われないままだという。