高市政権が物価高対策の柱として掲げる「食料品消費税の減税」。
来年4月から2年間、現行8%の食料品消費税を1%に引き下げ、給付と組み合わせて「実質ゼロ」とする方針が政府・与党間で議論されている。
FNNが6月に行った世論調査では、この2年間限定の減税について、およそ7割の人が実現を望んでいる。
しかし取材を進めると、手放しでは喜べない「落とし穴」が見えてきた。
■1989年導入から史上初の減税
消費税が導入されたのは1989年のことだ。
社会保障費などの財源として3%からスタートしたものの、当時は「消費税廃止デモ」が全国各地で起きるなど、すさまじい反対運動があった。
その後、税率が引き上げられるたびに景気の悪化が見られた。中でも5%から8%に引き上げられた際には、およそ15兆円という個人消費の大幅な冷え込みが起きている。
実現すれば「史上初の消費税減税」となる今回の方針。高市早苗総理は衆議院予算委員会でこう述べている。
高市早苗総理:2年間の減税が終了した後は、現行の8%の軽減税率に戻すということを想定しております。実行されてから2年後には元に戻すと。

■なぜ0%ではなく1%なのか
自民党は衆議院選挙の公約に「食料品消費税ゼロの検討加速」を掲げていた。
なぜ「0%」ではなく「1%」を目指しているのか。そこには、レジシステムの技術的な問題がある。
全国およそ3000の酒店などにレジシステムを販売する大阪の会社に取材したところ、食料品の消費税を0%に変更すると、システム画面に「0」が入らず数字が消えてしまうことが分かった。

■レジシステムの壁
仮に酒と野菜を同時に購入した場合、現在は野菜の8%と酒の10%が別々に記載される。
しかし野菜を0%とした場合、システム上「消費税率0%が存在しない」と判断され、野菜も酒と同じ10%扱いになってしまい、支払い金額がかえって増えてしまう。
ザ・コンピュータ大阪支店 安宅洋一朗支店長:システムの改修で大体6カ月、半年ほどかかります。そこからテストだったり、検証が3カ月から6カ月かかるので、やっぱり1年ほどかかるんじゃないかと。
私も一消費者なので、できれば0%がうれしいですけど、現場としては1%の方が正直助かるというところもあります。
早期に実現できる「1%」を政府・与党が選んだ背景には、こうした現場の実情がある。

■2年後に8%へ戻る 景気悪化の懸念
専門家はまず、2年後に税率が8%へ戻ることへの懸念を指摘する。
りそな総合研究所 荒木秀之主席研究員:消費者からしますと、増税とは変わらないという形。過去、消費増税のタイミングで景気は悪化していますので、(2年後の再引き上げに)見合った所得の増加がない限り、消費の減少というところを避けられない。
荒木研究員は、消費税の減税は家計支援としては大きな効果が期待できる一方で、2年後に8%に戻す際には景気を悪化させないような対策が必要になると指摘している。

■「税率を下げても値上がりが続く」可能性
もうひとつの懸念は、減税分が価格に反映されないリスクだ。
りそな総合研究所 荒木秀之主席研究員:継続的に企業のコストが上がっている以上、税率を下げても、その先に値上げが進むというところは十分にあり得る。
高市総理自身も、価格への転嫁については慎重な見方を示している。
高市総理:価格設定は事業者がするものですから、8%分ぴったり下がるとは考えておりません。

■「お得感は1カ月で相殺される」スーパーの本音
食料品消費税が1%になれば、小売店はどう対応するのか。
大阪市内のスーパー「越前屋」の香川寛史専務は、7%の減税分をそのまま値下げする方針を示しつつも、こう懸念を口にする。
越前屋 香川寛史専務:初めの1カ月間ぐらいはお得感が出てくるとは思いますが、これだけ物価高、毎月のように値上げになってきていますので、お客さまが納得できるような値段はなかなか難しいと思います。
値下げの効果は1カ月ほどで相殺されてしまう恐れがあるというのだ。

■「けじめとして下げるが、その後また上げるかも」弁当店の苦悩
関西各地で弁当店を運営する兵庫県西宮市の企業でも、原材料費の高騰に苦しんでいる。
ミレニアムダイニング 重森貴弘社長:今値上がりしているのは鶏ですね。安い時期から3倍ぐらい原価は上がっている。
ことしに入ってから食品や容器など、ありとあらゆる原材料費の上昇が続き、弁当価格の値上げを余儀なくされた。
一旦は減税分をそのまま値下げする方針だが、原材料費の高騰が続けば減税分の値下げを維持することが難しくなる可能性もあるという。
ミレニアムダイニング 重森貴弘社長:お客さんに理解してもらいながら、一旦はけじめとして消費税分下げさせていただいて、そこからまたきっちりと原価計算させていただいて、どうしても必要であれば2%上げるのか3%上げるのか分からないですが、上げさせていただく。

■「外食は10%のまま」客離れへの不安
食料品消費税の減税において、もうひとつ見落とせない問題が外食産業への影響だ。
食料品の消費税が下がったとしても、外食は10%のまま据え置かれる見通しだ。
リクペラーレタケウチ 槌谷陸店主:スーパーとかで買って自分で作って食べる方が、圧倒的に安いじゃないですか。外食するとそこに10%乗っかっちゃうので、やっぱりめちゃくちゃ不安ではあります。
仕入れ費用は抑えられるものの、人件費などの高騰でメニューの料金を下げるのは困難な状況だ。
対策として、減税の対象となる見通しのテイクアウト商品の提供なども検討しているということだ。

■「支持率アップのための手段」とジャーナリストの指摘
さまざまな懸念や課題が指摘される中で、高市政権がこの減税を推し進める背景について、ジャーナリストの鈴木哲夫さんはこう分析している。
ジャーナリスト 鈴木哲夫さん:消費税減税というのは、政策だとかそういうことよりも、むしろ支持率アップのための手段として、やるのではないかとの見方もある。
財源についても不透明な点が残っている。
消費税を引き下げることで社会保障への影響が生じるのではないか、あるいは他の形で増税になるのではないかといった懸念も指摘されている。
来週の初めにも中間取りまとめを目指している食料品の消費税減税。
7割の人が実現を望む一方で、8%分がそのまま値下がりするかどうかは不透明なまま、議論は続いている。
(関西テレビ「newsランナー」2026年6月25日放送)


