全国で700人以上が被害を訴え、被害総額は少なくともおよそ100億円にのぼるとみられる“投資詐欺”。
舞台は、マカオの高級カジノ。老後の資金や親からの遺産を失った被害者たちは、「人生がめちゃくちゃになった」と口を揃える。
被害を訴える人たちは集団で民事裁判を起こし、勝訴しましたが、命じられた損害賠償は「財産がない」ため支払われていない。
さらには「失った金を取り戻すため」として追加で金を振り込まされた出資者もいた。
被害を訴える人は6月23日、刑事告訴に踏み切った。捜査の行方が注目される。
■「こんな世界があるんや」 きらびやかなVIPルームが舞台
田中さん(60代・仮名):年金だけでは心もとないので、投資で生活の足りない分を補充しようと思いまして。
大阪府内に住む田中さん(仮名・60代)は、親の遺産およそ3600万円を投資につぎ込み、失った。
投資自体が初めてだった田中さん。当初はためらいもあったが、マカオへの招待が決断を後押しした。
マカオの高級ホテル「MGM」にあるカジノのVIPルーム。そこで目にした光景が、田中さんの判断を大きく揺るがしたのだ。
田中さん(60代・仮名):”VIPルーム”を見ますと、晴れやかな世界。異世界みたいな感じ。これだけ活気ある、お金が動いていると思ったので、投資を始めた。

■「毎月1.5%の配当」実態のない「コインリース事業」
出資金を集めていたのは、日本人男性が経営するコンサルタント会社「CYC管理有限公司」。
投資話は「コインリース事業」と銘打たれていた。カジノでVIP客に対応する「エージェント」のチップ代を出資すれば、元本保証のうえで毎月1.5%から数%の配当金が得られる、というものだ。
出資者には、MGMのロゴ入りの受領書まで渡されていた。しかし、その書類は偽造されたものだった。MGMも「名称を冒用し、信用を害した」と大阪地裁に提出した書面で指摘している。
さらに、「コインリース事業」そのものが存在せず、他の出資者の元本から配当を支払う「自転車操業」のような手法が用いられていたことも明らかになっている。
出資者に問い詰められたCYC役員は、音声の中でこう認めた。
CYC役員:正直、金貸しにお金を投げていたのは確かです。正直言うと、元本崩したことはある。

■「信用があると見抜かれた」被害が広がった構造的な問題
おととし、大阪などに住む出資者10人は「出資金あわせておよそ5000万円をだまし取られた」としてCYC代表らに損害賠償を求めて集団訴訟を起こした。
集団訴訟の代理人を務めた亀井正貴弁護士は、被害拡大の背景にある「中間業者」の存在を指摘する。
出資者の多くはCYCと直接契約を結ぶのではなく、CYCから委託を受けた複数の「中間業者」を通じて契約していた。そして出資金はそのままCYCに入金される仕組みだ。
集団訴訟の代理人 亀井正貴弁護士:(中間業者は)保険関係や金融関係を扱い、元々自分の顧客を持っている。顧客から信頼を受けているから、『こういう投資案件があるよ』と言えば、そこからまた投資させることができる。
(Q.詐欺とわかってやってるのか、そうではないのか?)
集団訴訟の代理人 亀井正貴弁護士:これ詐欺だとわかってたら、自分が大事に育ててきたお客さんを失うことになるから、わかって投資を勧めるということはしないと思います。
だからこそ、被害が広がるんです。全国規模の大型投資詐欺案件は大体こういう構図です。

■数百人の出資者集めた「中間業者」の男性が取材に応じる
数百人の出資者を集めたという「中間業者」の男性の一人に話を聞くことができた。
自身も1年間は毎月配当を受け取り、「有意義な情報かもしれない」と親兄弟や知人に情報を伝えていったと話す。
結果として、男性自身も家族の出資分と合わせておよそ1億円を失った。
そしてCYCの役員は直接出資者と会うことはほとんどなかったというこだ。
中間業者の男性:(出資者への)契約書は我々が発行させられる。このスキームを彼らは徹底してましたんで、結局は最初から自分たちが刑事で罰を受けないような詐欺スキームっていうのを組んでたのかなって気はしてます
一番の被害は信用。信用してたからこそ、親しい方々に伝えていった。人生で一番大切な信用を『コインリース事業』で失った。

■「裁判所に行けなかった」代表Xはなぜ法廷に現れなかったのか
700人以上から少なくとも100億円近くを集めたとされるCYCの代表・Xは集団訴訟で、詐欺行為を否認する書面を提出したが、法廷には一度も姿を見せなかった。
去年4月、原告が勝訴。しかし確認できるXらの財産はなく、被害者への賠償金は今も支払われていない。
取材班は代表Xと対面することができた。
(Q.コインリース事業の件で話を聞きたい)
CYC代表・X:話せる範囲でいいですか?私も、わからないところあるし。じゃあ、ちょっと午後になっちゃう。
Xは「午後に会って話をする」と言い、外出。1時間半後に記者に電話がかかってきた。
CYC代表・X:(裁判に)出られなかったので、自分としては今何とかそれが本当かどうか問題解決進めてるので、ちょっと今、話したくない。
(Q,裁判はなぜ来なかった?)
CYC代表・X:大阪だったんでお金なかったんで、いけなかったんです。それを勝手に打ち切られたんで、それは裁判所の判断じゃないですか。自分、言いたいことは(書面で)言ってるので、きょうは来られても困るので。
その後、Xは一方的に電話を切った。

■「絶対ある」と言われ続け 「二次被害」も判明
さらに取材を進めると、裁判が始まってからも「二次被害」が生じていたことが判明した。
CYC役員が「出資金を返金するため」として、出資者に追加の金銭を求め続けていたのだ。
出資者のKさんは、「カジノの口座を開けないといけない」「弁護士費用がいる」などと説明されたといい、去年2月までにあわせておよそ2500万円を追加で支払ったと明かした。
しかしその後、CYC側とは音信不通になった。元本を取り戻したい一心だった。

■刑事告訴による捜査の行方が注目される
6月23日、大阪府・富田林警察署で告訴状が受理された。
「架空の投資話を信じ込まされ、4000万円以上をだまし取られた」と訴える夫婦は、こう語る。
刑事告訴した夫婦:ちゃんと責任取って欲しいし、本当にどうなっているのか話してほしいです。私たちのほかにも、ものすごいたくさん被害者がいて、ものすごいひどい目にあってるので、少しでも救われるようになんとかしてほしいです。
裁判でも出資者たちと向き合わず、金の無心を続けるXら。刑事告訴による捜査の行方が注目される。
(関西テレビ「newsランナー」2026年6月23日放送)


