大雨による水害のリスクが高まる「出水期」。台風の接近などで大雨被害が懸念される中、自治体が作成する「ハザードマップ」を確認することは防災の基本だ。しかし、ハザードマップで「安全」とされている場所でも、過去には甚大な被害が発生している事実がある。ハザードマップだけでは把握しきれない地域の盲点と、地形から読み解く「命を守るサイン」について、専門家とともに街を歩きながら探っていく。
見慣れた景色に隠された「命を守るサイン」とは。ハザードマップの盲点を見抜く。

ハザードマップの「限界」と丸森町の教訓

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年々、大雨による水害のリスクは高まっている。2025年10月には、仙台市宮城野区で集中豪雨による冠水が発生し、緊急車両が近づけず消防隊が徒歩で救助にあたるという事態も起きた。

突然の災害に見舞われても迅速に避難行動をとれるよう、まず確認しておきたいのが自治体がまとめている「ハザードマップ」である。危険の段階が色分けして示されており、危険な場所とそうでない場所に分けることができるので、あらかじめ確認してほしいおくことが大切だ。

仙台市減災防災アドバイザー 早坂政人さん
仙台市減災防災アドバイザー 早坂政人さん

しかし、そのハザードマップにもリスクの解像度において「限界」があるという。

仙台市減災防災アドバイザー 早坂政人さん:
いつも水がたまりやすいとか、水の通りが悪いとか、大雨が降ると土が崩れる、というローカル(局所的)な情報は落とし込めていないのが現状。

丸森町の廻倉地区で発生した大規模な土砂崩れ
丸森町の廻倉地区で発生した大規模な土砂崩れ

その限界が浮き彫りになったのが、2019年10月の東日本台風である。甚大な被害を受けた丸森町の廻倉地区では、大規模な土砂崩れが発生したにもかかわらず、町のハザードマップでは危険地帯として示されていなかった。ハザードマップには表現しきれない、見落とされがちなリスクが存在しているのである。

現地で確かめることでわかる災害リスク

東北福祉大学 水本匡起准教授
東北福祉大学 水本匡起准教授

こうしたハザードマップでは把握しきれないリスクを研究しているのが、東北福祉大学の水本匡起准教授である。水本准教授が注目しているのは、それぞれの地域が持つ「地形」だ。

東北福祉大学 水本匡起准教授:
自分の住んでいる地域がどんな地形の上にあるのか知ると自然災害の対策につながる。

例えば、丘陵地や台地の狭間にある川や谷は周囲よりも低くなっており、たとえハザードマップ上で安全とされていても、水が集まりやすいリスクがあるという。水本准教授は「行って確かめて、なるほどここをそういう風に見ると、水が流れていく通り道なんだと今でも分かる。意識すると見える、意識しないと見えない」と話す。

仙台市青葉区国見の道路 一見すると平面のようだが…
仙台市青葉区国見の道路 一見すると平面のようだが…

実際に、ハザードマップには表現されていない「水害リスクのある場所」を歩いてみた。
まずは仙台市青葉区の国見地区である。一見すると、なんの変哲もない平面の道路が続いているようだが、そこを車が通ると、車が見えなくなるほど深い谷になっていることがわかる。

車が見えなくなるほど深い谷になっている
車が見えなくなるほど深い谷になっている

水本准教授の指摘通り、周囲より低い谷になっており、水が集まりやすい地形なのだ。

さらにその場所を下っていくと、不自然に蛇行している道が現れる。

不自然に蛇行した道は、かつて川だった名残だ
不自然に蛇行した道は、かつて川だった名残だ

東北福祉大学 水本匡起准教授:
不自然にくねくねと道が曲がっているように見えると思うが、昔、川があった痕跡。今でも低くなっている。どうしてもここに水が集まってくる。

日常の風景の中に、かつての自然の営みと水害のリスクが隠されていたのである。

小学校には指定避難所の看板が
小学校には指定避難所の看板が

続いて足を運んだのは、仙台市太白区の西多賀地区にある小学校。この場所もハザードマップ上では安全とされており、市の指定避難所となっている。
しかし、校門の近くにある指定避難所の看板を見ると、「大雨時、避難所として開設しません。近くの中学校へ避難してください」と書かれている。ハザードマップから浸水リスクは読み取れないエリアだが、大雨時の避難所としての初動は「×」となっているのだ。

大雨時には避難所として開設しないことを伝える看板が
大雨時には避難所として開設しないことを伝える看板が

東北福祉大学 水本匡起准教授:
昭和61年8月の台風のときに、膝くらいまで水がきて、ほとんど川のように流れていった。そういう話を住民の方々がしていて、受け継がれている。

なぜ、この場所でそれほどの浸水が起きたのか。周囲の地形を見渡すと、その答えが見えてくる。小学校がある場所を起点に、左右の道を見ると、どちらも若干の上り坂になっているのだ。

東北福祉大学 水本匡起准教授:
ここが一番低いところ。谷底にあり、大雨の時に全ての水がここに集まって流れていく。

低いところにあるという地形の特性が、ハザードマップには表れない浸水リスクを生み出していたのである。

街歩きで見つめ直す地域の防災

水本准教授は、このように地形地図を片手に地域の水害リスクを体感してもらう「街歩き」イベントを年に数回開催している。参加したゼミの学生たちも、実際に街を歩くことで大きな学びを得ている。教職を志す学生からは「学校の地形や学校の周りの自然災害のリスクを知って、将来、子供たちを守るために動いていきたい」と、次世代へさらにつないでいく意気込みが語られた。

本格的な大雨シーズンを迎える今、まずはハザードマップを確認することが重要だ。そしてそれに加えて、自分の住む街の地形や過去の記憶に目を向け、防災の視点で地域を見つめ直すこと。それが、いざという時に命を守る確かな備えにつながっていく。

仙台放送
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