長崎県内有数の進学校の校長を務めた男性が、定年退職後に選んだ仕事はタクシードライバーだった。
なぜ未知の業界に飛び込んだのか、ドライバーデビューに密着した。

教壇からタクシーの運転席へ

県立高校の教師として38年にわたり数学の教員などとして働き、最後は県内有数の進学校・長崎西の校長を務め、定年退職した男性。

タクシードライバーに転身
タクシードライバーに転身
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教壇とは全く異なるタクシードライバーの世界に飛び込んだ。

今までの経験が通用しない、それがおもしろい

タクシードライバーの初村一郎さん、60歳。初めて客を乗せる日に向けて、慣れない佐世保の道を覚えておこうと、1カ月にわたり毎日8時間、徹底的に走り込んできた。

猛練習
猛練習

初村さんは2026年4月、妻の地元である佐世保市のタクシー会社に入社した。

タクシードライバーデビュー
タクシードライバーデビュー

キャリアを生かして声をかけてくれる専門学校などに再就職する道もあったが、初村さんはあえてタクシードライバーという未経験の業界を選んだ。

車両に新人マークを貼る初村さん
車両に新人マークを貼る初村さん

「今までの経験が逆に通用しない、そういう環境が自分にはあっていると思って、やる気が倍増する」と話す初村さん。

教育の仕事はやり切ったと話し、未経験の業界へ
教育の仕事はやり切ったと話し、未経験の業界へ

第二の人生を考えたとき頭に浮かんだのが、父親がかつてしていたタクシードライバーという仕事だった。

試験はもう二度と味わいたくない

初村さんは1カ月半かけて学科や実技、安全講習など多くの研修を受けてきた。しかし、タクシーの運転に必要な二種免許の取得には苦労したという。

「もう二度と味わいたくないですね、試験っていうのは」
「もう二度と味わいたくないですね、試験っていうのは」

生徒がいかに大変なのかを身に染みて感じた、試験はもう二度と味わいたくないと笑う初村さんだが、その言葉には38年間教壇に立ってきた者ならではの重みがある。

初めての客を乗せて走る初村さん
初めての客を乗せて走る初村さん

迎えた初日、初めての客を乗せた直後に初村さんは緊張していると率直に打ち明けた。
道を間違えずに来ることができて本当に良かったと、車内でほっとした表情を見せた。

平日の日中の乗客は高齢者が多い
平日の日中の乗客は高齢者が多い

平日の日中、佐世保タクシーの乗客の大半を占めるのは高齢者だ。

乗客の荷物を玄関まで運ぶ
乗客の荷物を玄関まで運ぶ

荷物を持つのに苦労していた高齢女性の客には、玄関まで運びましょうと自ら申し出て、その背中で新たな仕事への姿勢を示した。

バスが消えた街を、タクシーが支える

初村さんが働く佐世保市では、人口の減少に伴い交通事情が以前より厳しくなっている。

路線バスは減少
路線バスは減少

市内で路線バスを運行する会社は、運転士の不足などを理由に、2025年3月に合わせて15の路線を廃止した。

予約制の乗合タクシー
予約制の乗合タクシー

その後、5つの地区で導入されたのが地元のタクシー会社による予約制乗合タクシーで、バスに代わる交通機関として利用されている。

免許を返納して乗合タクシーを利用
免許を返納して乗合タクシーを利用

宮地区に暮らす坊上壽さん(87)は、2025年に自動車の運転免許を返納して以来、毎週のように乗合タクシーを使っている。

佐世保市が料金の一部を補助
佐世保市が料金の一部を補助

料金は片道350円、他の利用者と乗り合わせれば250円だ。
本来なら2000円以上かかる距離だが、差額は市が補助している。

乗合タクシーは好評
乗合タクシーは好評

ドライバーの田中奈穂美さんは、「乗合タクシーなら自宅まで送り届け、荷物も玄関まで運べるため皆さんに喜ばれている」と話す。

タクシー業界もドライバーの確保が難しいなか、新たな働き方を提案している。

タクシー業界の働き方改革に魅力を感じた
タクシー業界の働き方改革に魅力を感じた

佐世保タクシーでは1日に12時間乗務して月の半分を休みにできる独自の勤務体系を採用しており、初村さんもこの働き方に魅力を感じたという。
妻が1人で切り盛りする神社の裏方として手伝いができればという思いもあった。

まったく逆の話し方を、一つ一つ勉強していく

初村さんと同じタイミングで入社した31歳の同期・志賀新さんは、初村さんの印象を校長先生そのものだと語る。

同期が語る初村さんの印象は
同期が語る初村さんの印象は

しゃべり方も振る舞いも、完全に校長先生だという。
親子ほど歳が離れた同期からも刺激を受けながら、初村さんは新人として日々学んでいる。

観光客に佐世保のおすすめを紹介
観光客に佐世保のおすすめを紹介

東京から来た観光客との会話では、佐世保バーガーやちゃんぽんについて気さくに話す場面も見られた。

「教員として生徒に指導的な話し方をしてきた自分が、今からまったく逆の話し方を一つ一つ勉強していく」と、初村さんは静かに語った。

勉強の日々
勉強の日々

無事に初日を終え、車庫に戻った初村さんは安心した表情をのぞかせた。

初日を終えて
初日を終えて

予想以上に色々学ぶことがあった、会社の皆さんの足を引っ張ることがないよう地道にしっかり一つ一つ覚えながら頑張っていきたいと、洗車をしながら話した。

新たな道を走る
新たな道を走る

教壇を離れ、新人ドライバーとしての生活をスタートさせた初村さん。
地域の交通を支える現場で、新たな人生を走り始めている。

(テレビ長崎)

テレビ長崎
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