ただ、その抑制の度合いは温度変化と比べると非常にわずかで、梅干しの周囲しか効果が及ばないため、「気休め程度」というのがデータに基づく見解です。

塩分濃度も同様で、菌の増殖をしっかり抑えるには4〜5%まで濃度を上げる必要があります。しかし普通の食事では2%程度の塩分でも、しょっぱくて食べられたものではなくなります。塩分で食中毒を抑制するのも、現実的ではないのです。

一方、温度の影響は非常に大きく、10℃程度まで冷やしてしまえば菌はほとんど増殖しません。だからこそ夏場のお弁当は、温度管理が何より大事になるのです。

「ゆっくり冷ます」がいちばん危ない

温度管理でまず大事になるのが「素早く冷ますこと」です。冷める過程の中途半端な温度帯こそが、菌が最も増殖しやすいタイミングだからです。

食中毒を引き起こす細菌には、ウエルシュ菌などの「芽胞(がほう)」と呼ばれる殻のようなものを作る菌があります。彼らは100℃の加熱でも死滅せず、しかも食材の温度が下がって50〜60℃の温度帯に入ると、殻を破って一気に増殖し始めるのです。

つまり、「危険な温度帯に長く滞在させないこと」が大切なのです。

(イメージ)
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業務用の仕出し現場で、調理後に急速冷却の工程を入れているのも、この危険温度帯を一気に抜けさせるためです。ご家庭でも「前の晩に作って、粗熱が取れたら即座に冷蔵庫に入れる」という作り方にするだけで、リスクは大きく下げることができます。

冷やすのは冷蔵庫でも冷凍庫でも、菌の増殖抑制という意味では大きな差はありませんし、冷凍したからといって菌が死滅するわけでもありません。

また、急速に冷ますのではなく「熱いものを熱いままキープする」というのも、実は菌の増殖抑制には効果的です。スープジャーなどで60℃以上を保ったまま持ち運ぶのも、危険温度帯を通過させないという意味で理にかなった選択といえます。