ややこしいのは食中毒菌のほうです。こちらは増殖しても、匂いや見た目に変化を出さないため、私たちは気づくことができません。さらに厄介なのは、ごく少量の付着でも発症してしまうことがある点です。

新鮮に見えて、腐った匂いなどはしなくても、食中毒菌が「くっついていた段階」でアウトになってしまうのが、食中毒菌の本当に厄介なところなのです。

食中毒予防に大切な2つのこと

食中毒の原因菌の多くは食材由来のため、食中毒になるかどうかは、ある意味で「確率の話」です。「食材そのものが汚染されているかどうか」が本質で、汚染されていなければ多少ラフな調理をしても問題は起きませんし、汚染された食材を使ってしまえば、お弁当箱をいくら消毒したところで結果は変わりません。

なお、素手でおにぎりを握ったときに、手指の黄色ブドウ球菌が移行して食中毒の原因になるケースもないわけではありませんが、現実的な発生確率としてはそれほど高いものではありません。

夏場にお弁当を作るうえで、基本的な衛生管理はもちろん大事です。「手洗いをしてから調理をする」「調理器具やお弁当箱を清潔に保つ」といったことは普段通りに行っていただきたいですが、夏場だからといって神経質に消毒する必要はないと感じます。

消毒に神経を尖らせるよりも大事なことは、「しっかり火を入れた食材を使うこと」と、「調理後の温度管理」。特に「冷ます工程」です。この点は「お弁当の食中毒対策は『素早く冷まして保冷』一択!25℃を超えたら危険…梅干しも濃い味付けも気休めでしかない理由」の記事で詳しく解説します。

素早く冷まして保冷する方法を詳しく見る▶お弁当の食中毒対策は「素早く冷まして保冷」一択!25℃を超えたら危険…梅干しも濃い味付けも気休めでしかない理由

小関 成樹(こせきしげのぶ)
北海道大学大学院農学研究院 食品加工工学研究室 教授。博士(農学)。

構成=古澤誠一郎

小関成樹
小関成樹

北海道大学大学院農学研究院 食品加工工学研究室 教授。博士(農学)。
北海道大学農学部卒、同大学院で博士(農学)取得。食品総合研究所や農研機構で研究員・主任研究員を歴任し、タスマニア大学客員研究員も経験。2013年より北海道大学准教授、2020年より同教授。食品微生物分野で国内外の委員・学会役員を務める。