富山県内で特殊詐欺の被害が今年、過去最悪のペースで発生している。中でも急増しているのが、SNSをきっかけにLINEグループへ誘導する「SNS型投資詐欺」だ。県内の40代女性はこの手口でおよそ1800万円をだまし取られた。「インスタグラムを見ていただけ」という日常の一場面から始まった被害の全貌を、女性自身が語った。

きっかけは「片付け動画」だった

今年3月、女性がインスタグラムで眺めていたのは「ライフハック」や片付け術といった、投資とはまったく無関係な動画だった。ところが突然、画面がLINEアプリに切り替わり、気づけば株の投資に関する50人ほどのLINEグループに参加させられていた。
「「参加しますか、イエス、ノー」ではない。勝手に入れられるような感じだった」と女性は振り返る。それでも、将来への不安と以前から持っていた投資への興味が重なり、グループのトークを読み進めていった。

「先生」と「アシスタント」が演じた信頼の舞台

グループ内では「先生」と「アシスタント」と呼ばれる人物が中心的な役割を果たしていた。先生がその日の株の値動きを解説し、アシスタントが売買の判断を講義形式で説明する。内容を自分で調べてみると「合っている部分もあった」という。実在する企業名を交えた情報に安心感を覚えた女性は、貯金から300万円を引き出し、指定された口座へ振り込んだ。


その後も振り込みを続け、最終的な被害額はおよそ1800万円。専用アプリ上には一時、2300万円以上の利益が表示されていた。一部の出金もできていたため、疑念は生じなかった。
警戒心を解いた「日常会話」

特に女性が信頼を置いていたのはアシスタントだった。入金を催促するような言動は一切なく、「「体調大丈夫ですか?」とか、「休みの日に○○に行きました」「子どもがいるんです」とか、日常的な会話」が続いていたという。「自分のできる範囲で」という言葉もあり、強引さは感じなかった。

しかし今月上旬、アシスタントと突然連絡がとれなくなり、詐欺だと気づいた。女性はすでに警察へ被害届を提出し、現在はダブルワークを検討しながら生活を立て直そうとしている。「弁済してほしい。罪を償ってほしい」と語る声には、静かな怒りがにじんでいた。
「真実と嘘を混ぜる」巧妙な手口

詐欺・悪質商法ジャーナリストの多田文明さんは、この手口の精巧さをこう指摘する。「「先生の言うとおりにすると儲かったよ」という書き込みがたくさんある。時事問題や政治情勢も組み入れながら、株が上がるか下がるかを教えてくれる。実際見ていると結構当たっている」。

グループメンバーのほとんどはいわゆる「サクラ」で、日常会話を織り交ぜて警戒心を解くのも手口の一つだとみられる。多田さんは「グループの上には本当に金融に詳しい人間がいるんだろう」と分析する。
自分を守るための確認ポイント
多田さんが強調する自衛策は明快だ。「投資を日本人に紹介するには金融庁に登録しないといけない。金融庁のホームページで確認し、サイトの運営会社・連絡先・住所も調べる。基本ない。ないサイトはアウトだと思ってほしい」。

県内では、SNS型投資詐欺の被害額の割合は「ニセ警察詐欺」に次ぐ第2位となっている。投資ブームを背景に、被害は幅広い年代に広がっている。
被害を受けた女性はこう訴える。「インターネット、ライン、X、インスタグラムなどで知り合った人には入金しない。ラインのグループ招待が来たら疑ってください」。
SNSは生活に欠かせないツールになっている。しかしその身近さが、詐欺グループとの接点にもなりうる。グループ招待や突然の画面切り替えには、まず疑う姿勢を持つことが最大の防御だ。
(富山テレビ放送)
