福島県古殿町にある豊国酒造は、全国新酒鑑評会で3年ぶりに金賞を受賞した実力派の酒蔵だ。伝統を守りつつ、ガラス張りの新蔵や地域交流拠点の開設など、次々と新たな挑戦を続けている。9代目が目指す「地域に誇りと思ってもらえる酒蔵」の今を取材した。
■全国が認めた福島の酒
全国新酒鑑評会で、福島県は金賞受賞数2連覇を達成した。その栄誉の一翼を担ったのが、古殿町の豊国酒造だ。3年ぶりに金賞に輝いた「東豊国(あずまとよくに)」は、創業以来受け継がれてきた銘柄。フルーティーな香りが鼻を抜け、軽やかな口当たりは日本酒初心者でも飲みやすいと評判だ。
また、豊国酒造を代表するもう一つの銘柄が「一歩己(いぶき)」。今や全国にファンが多く、うまみと酸味、果実のような風味が口いっぱいに広がるバランスの良さが特徴だ。
■「チャレンジの酒蔵」を象徴する巨大壁画
豊国酒造は、言わば「チャレンジの酒蔵」だ。その象徴ともいえるのが、3年前に完成した巨大な壁画。酒蔵の壁、幅約40メートルにわたり、少女が吹いたタンポポの綿毛が宇宙に向かって飛んでいく様子が描かれている。
これには、子どもたちの夢や希望を乗せた綿毛が古殿町中に広がり、未来へ羽ばたいてほしいという想いが込められている。
■“見せる”酒造りへ ガラス張りの新蔵
さらなるチャレンジとして、ガラス張りの新しい蔵が建設された。天井が高く、太陽の光が直接差し込む開放的な空間は、これまでの酒蔵のイメージを覆す。9代目の矢内賢征(やないけんせい)さんは、その狙いをこう語る。
「僕たち酒蔵としてどれだけ地域との接点を持てるかにチャレンジしています。製造場を見ていただける環境を築き、より酒蔵を身近に感じてもらおうと、ガラス張りの工場にしました」
もちろん、酒造りへのこだわりも進化している。新しい設備では温度管理をより徹底できるようになり、これまで以上にもろみの管理がしっかりとできるようになったという。新しい蔵になってから、酒の味は「全体がクリアな味になり、よりジューシー感が伝わってくる」ようになったそうだ。
この新しい蔵は、事前に予約すれば見学も可能。日本酒造りに欠かせない麹を作る「麹室(こうじむろ)」や、巨大なタンクを間近で見ることができる。
■地域交流の拠点「kuranoba」
新蔵の向かいには、また別の施設がある。「kuranoba(くらのば)」と名付けられたこの場所は、大正時代に建てられた倉庫をリノベーションしたものだ。歴史を感じさせる外観とは対照的に、中へ入ると趣を残しつつもスタイリッシュな空間が広がる。
キッチンやテーブルも備え付けられており、子ども向けのワークショップや料理教室などのイベントを開催。地域の交流を生み出す場所として活用されている。
様々な挑戦を続ける矢内さんは、今後の目標について力強く語った。
「地域に誇りだと思ってもらえるような酒蔵、誇りだと思ってもらえるような日本酒を、これからも一生懸命醸していきたいです」
伝統の味を守りながら、地域と共に新たな未来を切り拓く豊国酒造の挑戦は、これからも続いていく。