音楽は人の心を癒やし、人と人、心と心をつなぐ力を持つ。ひきこもりの経験を乗り越えた女性が、秋田・由利本荘市に就労継続支援B型事業所を開設した。“働く”だけにとどまらない、“生きがい”を育む新しい支援の形が始まっている。
音楽で広がる“居場所”づくり
由利本荘市にある就労継続支援B型事業所「ルフラン」。ここでは、障害や病気で一般就労が難しい人たちが、自分のペースで作業に取り組んでいる。
特徴的なのは、音楽を取り入れたプログラムだ。
利用者はそれぞれの興味に応じて楽器を手にし、週2回、バンドメンバーやスタッフとセッションを行う。決まりきった作業ではなく、自由に表現できる場があることが、利用者の大きな魅力になっている。
ひきこもりを経て出会った音楽の力
代表の佐久間玲奈さん(39)は東京都出身。高校卒業後、人間関係に悩み、4年間ひきこもり状態を経験した。
その後、秋田・三種町の自立支援施設を訪れ、人の温かさに触れたことをきっかけに少しずつ外の世界へ。そして出会ったのが、由利本荘市を拠点に活動する音楽バンド「BRONZE道心」だった。
「音楽は、人とつながったり感動できたりするとても良いツールで、そこが音楽の特別な力だと思う」と話す佐久間さん。
バンド活動に参加する中で音楽に魅了され、それが社会復帰の大きなきっかけになったという。
「働く+生きがい」を支える場所に
自身の経験を通じて、佐久間さんは強く感じたことがある。それは「働くための支援だけでは足りない」ということだ。
「生きづらさを感じている人たちには、働くための支援だけでなく“生きがい”が必要」
その思いから、2025年11月に「ルフラン」を立ち上げた。
「音楽をやっていくことで、心が穏やかになったり喜びになったりするのも1つだし、就職した後にもそういった体験が自分のエネルギーとなって、心の支えや土台になると感じている」と佐久間さんは話す。
利用者が語る音楽の魅力
実際に通う利用者からは、「弾き始めるまで緊張感があるが、弾き始めると心地よくて、やっぱり音楽はいいなと思う」「決まったものをやるというより色々なことに挑戦できるところなので、色々な楽器を経験できてすごく楽しい」など、前向きな声が聞かれる。
現在は10~50代までの9人が在籍。それぞれが自分らしく表現しながら、少しずつ社会とのつながりを育んでいる。
自分の思いを伝えられる力へ
佐久間さんは、音楽の役割を“楽しみ”だけにとどめていない。
「来ている利用者が、自分の意見や思いをしっかり伝えられる、周囲に言えるということを音楽プログラムで培っていきたい」と語る。
音楽を通して得られる自信や表現力が、やがて社会で生きる力へとつながる。利用者一人一人の強みを生かし、地域で共に暮らす未来を目指している。
音楽に救われた自身の経験を、誰かの支えへ。佐久間さんの挑戦は、“働く”のその先にある人生の豊かさを問いかけている。
(秋田テレビ)
