鹿児島県日置市で、ふるさと納税の"新しいかたち"が実現した。寄付者への返礼品ではなく、地域の子どもたちへの「想い出」を届けるという斬新なアイデアが、全国から注目を集めている。

「77万円寄付する方が、どれだけいるんだろう」

2026年5月8日、日置市伊集院町の城山公園に、伊集院幼稚園の園児122人が集まった。地元の老舗洋菓子店「青山じゅあん」の永濱幸宗社長から、園児一人ひとりにシュークリームが手渡された。子どもたちは少し雲の多い天気のなか、笑顔でシュークリームをほおばった。

「おいしい!」

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その一言が、このプロジェクトの出発点となった思いを、ひとつの形として結実させた瞬間だった。

ふるさと納税の「プレゼン大会」から生まれたアイデア

このシュークリームは、日置市が2025年7月に実施した「ふるさと納税返礼品プレゼン大会」から生まれた企画だ。日置市が、ふるさと納税返礼品の新しい形を模索するために開催したこの大会で、青山じゅあんが提案したアイデアが最優秀賞を受賞した。

そのアイデアとは、寄付者に返礼品を還元するのではなく、寄付金を使って地域の子どもたちに「地域の想い出」をプレゼントするというもの。具体的には、最大777人の子どもたちにシュークリームを届けるという計画で、寄付金の金額は一口限定77万円に設定された。

全国的にも珍しい取り組みだけに、永濱社長自身も当初は実現を半信半疑で見ていたという。

「77万円寄付する方が日本全国でどれだけいるんだろうと思っていた。実現したら素晴らしいと思いつつも、実際その寄付をしてくださる方がいるのかと思っていた」

募集開始から約2カ月、夢が現実になった

しかし懸念は杞憂に終わった。募集開始から約2カ月後の2026年2月、日置市に77万円の寄付が届いた。こうして5月8日の園児へのプレゼントが実現した。

当日、シュークリームを受け取った子どもたちの声や、見守る保護者たちの表情が、この企画の意義を雄弁に語っていた。

「元々青山じゅあんのシュークリーム好きなのでラッキー」「(子どもが)美味しそうに食べているので、こっちまで嬉しいです」

永濱社長は、寄付者の思いをこう受け止めている。

「企画そのものに賛同してもらえたのかなと、本当にありがたく思っている」

地域に「想い出」を残すふるさと納税の可能性

ふるさと納税といえば、返礼品として特産品や宿泊券などを受け取るスタイルが一般的だ。しかし日置市と青山じゅあんが打ち出したこの仕組みは、寄付者自身が直接受け取る"モノ"ではなく、地域の子どもたちに届く"体験"や"想い出"を返礼の中心に据えた点で、一線を画している。

寄付者は手元に何も残らない。それでも77万円を投じた人物がいた事実は、この企画が単なるアイデアではなく、人の心を動かす力を持っていたことを示している。

伊集院幼稚園の園児たちにとって、この日のシュークリームの味は、きっといつまでも記憶に残るだろう。そしてその想い出を贈った名も知らぬ寄付者の存在もまた、日置市という地域を彩る、もうひとつの物語になった。

【動画で見る▶日置市「ふるさと納税返礼」画期的アイデア 老舗洋菓子店が77万円寄付でシュークリームを園児に届ける 「子どもに地域の思い出を」 日置市ふるさと納税プレゼン優勝案 】

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