雅は幕臣の娘であり、陸軍将校だった夫を病気で亡くしていた。没落士族の出自でバツイチの子持ち、年齢にくわえて境遇も似ているだけに共通の会話が多く、すぐに打ち解け仲良くなったという。

熱血漢でやや独善的なところもある暑苦しい性格の和に対して、雅は合理的思考のクールビューティーといった感じ…。性格は真逆だった。が、初対面から自分にはない部分に惹かれあい、お互い好印象を抱いていたようだった。この後、和と雅は生涯の盟友となり、日本の近代看護の礎を築くことになる。

最先端医療と保守的な思想の中で奮闘

和たち一期生は1年かけて看護学の基礎を学んだ後、帝国大学医科大学(現在の東京大学医学部)附属第一病院に委託生として派遣された。ここで1年間、実地訓練をおこなうことになる。

東大医学部付属病院(筆者撮影)
東大医学部付属病院(筆者撮影)

この病院は最新の医療機器を取り揃え、日本における最先端医療の拠点を自負していた。しかし、そこで働く医師の思考回路は最先端とはいえない…。帝国大学は官僚養成機関としての性格が強く、教授や学生たちも“序列”を強く意識する。医学部も例外ではない。エリート意識の塊のような医師たちは他の職員や患者を見下し、看病婦などは最下層の奴隷扱い。和たち「看護婦」の実習生もそれと同列に見ているようだった。

和は正義感が人一倍強く、間違ったことに黙っていられない。融通が効かず空気の読めない性格は、上下関係にうるさいこの病院と相性が悪い。人前でも堂々と医師に意見して論破し、軋轢が生じることも多かった。

ついに役職に就いた和と雅

その一方、病院上層部では和の評価が高い。