昭和30年代から営業を続けている喫茶店が福井・越前市にある。昭和レトロな風情が息づくこの店は、先代亡きあとに30代の女性が店を継ぐことを決め、住んでいる京都から福井に通い月に10日ほどの営業を続けている。先代の思いを受け継ぎ店を守る女性の思いに迫った。
先代のママが交通事故で急逝
福井・越前市の中心部、総社大神宮の近くに、その店はある。
「カラン カラン…」
店のドアを開けると、広がるのは“セピア色”の世界だ。
創業70年の喫茶「白鳥」。古い照明やイス、年代物のコーヒーミル…その多くが創業の頃から使われている。
店がオープンした昭和30年代の日本は、戦後復興が一段落し高度経済成長に向かう時代。家電製品や洋風の文化が広がるなど、生活が豊かになり始めた頃だ。
現在のオーナー川崎亜梨沙さん(39)は、1年半ほど前にこの店を継いだ。先代のママだった川崎さんのおば、嵩榮恵さんが2024年に交通事故で急逝したのだ。
「長年来てくれる常連さんが多いし…自分も小さい頃から店に来ていたので、どんな形であっても残したいという気持ちが大きかった」と語ります。
川崎さんは京都で生まれ育ち、いまも京都に住んでいる。喫茶店の営業は福井に来る月に10日間ほどだ。
先代の思いが受け継がれた店内
店が開くと心待ちにした客が次々と訪れる。
先代の頃からの常連客もいれば、川崎さんが店を継いでから足を運ぶようになったという人も―
「初めて来たのは去年の秋ぐらいで、今は(店が開いている)10日間のうち、4日間ぐらい来る」
「お店の人と話したり、たまたま会った人と話すのが楽しい。出会えるのが楽しい」
「小さいときに父に連れてきてもらって…ここは雰囲気がいいから」
店の自慢は、深入りのコーヒー。ミルクを入れても負けない濃さ、香り、深さ。「ほっこりするような味」だ。
創業当時からジャズ喫茶で、店内にはいまも軽快な音楽が流れる。
看板メニューは厚焼き玉子を挟んだサンドイッチ。チョコレートパフェは、昔もいまも人気だ。
パフェの評判を聞いて来店した、という親子連れも。
壁に並ぶ絵画にも先代のこだわりが残されている。
「飾ってあるのは全て、おばとおじが集めたもの。すごくアートが好きな夫婦でした。並べ方・見せ方にもセンスが出るので、そこは一切さわらず、そのまんま…」(川崎さん)
ここには“あの時”と変わらない空間が広がっている。
京都に住む川崎さんは「建物が一つなくなると、その文化や人の暮らしがなくなってしまうことを目の当たりにする」という。「ここは客同士で会話が生まれたり、来るたびに新しい発見があったりと、自分にとっても客の誰かにとっても人生の一部である場所、世代をつないでいく場所、という感じ」
きょうも店内には、ゆっくりとした時間が流れる。
時が過ぎてもきっと変わることのない、大切な思いに包まれて…
<喫茶・白鳥>
ハピラインふくいの武生駅から徒歩約5分
北陸道・武生インターチェンジから車で10分ほど
