4月29日は「昭和の日」。越前市には昭和30年代から営業を続けている喫茶店があります。昭和レトロな風情が息づく店内と、先代亡きあと、店を継ごうと決めた30代の女性の思いに迫ります。
越前市の中心部、総社大神宮の近くにその店はあります。
創業70年の喫茶「白鳥」です。
店のドアを開けると、ベルの音が「カラン…」広がるのは“セピア色”の世界。古い照明やイス、年代物のコーヒーミル…その多くが創業の頃から使われています。
店がオープンした昭和30年代の日本は、戦後復興が一段落し高度経済成長に向かう時代。家電製品や洋風の文化が広がるなど、生活が豊かになり始めた頃でした。
喫茶店の現在のオーナー川崎亜梨沙さん(39)は、1年半ほど前にこの店を継ぎました。
先代のママ、川崎さんのおば、嵩榮恵さんは、おととし交通事故で急逝したのです。
川崎亜梨沙さん:
「長年来てくれる常連さんが多いこと。自分も小さい時から店に来ていたので、どんな形であっても残したいという気持ちが大きかった」
川崎さんは京都で生まれ育ち、いまも京都に住んでいます。
喫茶店の営業は福井に来る月に10日間ほど。店が開くと心待ちにした客が次々と訪れます。
先代の頃からの常連客もいれば、川崎さんが店を継いでから足を運ぶようになったという人も―
「初めて来たのは去年の秋ぐらいで、今は(店が開いている)10日間のうち、4日間ぐらい来る」
「お店の人と話したり、たまたま会った人と話すのが楽しい。出会えるのが楽しい」
「小さいときに父に連れてきてもらった」
「ここは雰囲気がいい…」
店の自慢は深入りのコーヒーです。ミルクを入れても負けない濃さ、香り、深さ。そして、ほっこりするような味です。
創業当時からジャズ喫茶で、看板メニューは厚焼き玉子を挟んだサンドイッチ。チョコレートパフェは、昔もいまも人気です。
この日は、親子連れの姿も―
「おいしいー。めっちゃおいしい」
「なかなか入れなくて行く機会がなかったけど、パフェと聞いて行くしかないと」
壁に並ぶ絵画にも先代のこだわりがー
「飾ってあるのは全て、おばとおじが集めたもの。すごくアートが好きな夫婦でした。並べ方・見せ方にもセンスが出るので、そこは一切さわらず、そのまんま…」(川崎さん)
ここには“あの時”と変わらない空間があります。
「京都にいると、一つ建物がなくなるとその文化や人の暮らしがなくなってしまうことを目の当たりにする。ここは客同士で会話が生まれたり、来るたびに新しい発見があったりと、自分にとっても客の誰かにとっても人生の一部である場所。世代をつないでいく場所という感じ」
きょうも店内には、ゆっくりとした時間が流れます。
時が過ぎてもきっと変わることのない、大切な思いに包まれて…
<喫茶・白鳥>
ハピラインふくいの武生駅から徒歩約5分
北陸道・武生インターチェンジから車で10分ほど