5月7日、福井県の福井銀行と福邦銀行が合併し、新たな歴史の幕を開ける。人口減少や低金利時代の終焉など地方銀行を取り巻く環境が激変する中、県内企業の過半数をメインバンクとする巨大銀行が誕生する。全国で地銀の再編が加速するいま、“新”福井銀行はどのような未来を描くのか。福井テレビの報道番組「タイムリーふくい」で、頭取に話を聞いた。

統合によるシナジー効果の必要性から合併へ

福井銀行と福邦銀行の合併への道のりは、6年前にさかのぼる。2020年に包括提携し立ち上げた「Fプロジェクト」を皮切りに、翌年の子会社化を経て、一つの銀行として統合される。

この背景について長谷川英一頭取は「福井に限った話ではないが、人口減少や事業所数の減少といった構造的な課題があった」と語る。

福井銀行の長谷川英一頭取
福井銀行の長谷川英一頭取
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地域経済の持続可能性を高めるため、両行は経営基盤の強化で連携。当初は2ブランド体制を維持する方針だったが、職員同士の「人心融和」が想定以上に進展したこと、そしてシステムや店舗の統合によるシナジー効果を最大化する必要性から、完全な合併へと舵を切った。

合併までの道のり
合併までの道のり

しかし、経営基盤が違う2行の統合には、いくつもの壁が存在した。特に、失敗が許されない勘定系システムの統合では、約1万項目に及ぶテストを繰り返し、問題を一つずつ潰していく地道な作業が続いた。

同じ銀行業でありながら「融資」を「貸付」と呼ぶなど、業務の呼称やプロセスが異なる文化の融合も大きな課題だった。

この見えざる壁を乗り越えるため、役員が現場に赴き、進むべき方向性を共有する「タウンホールミーティング」を延べ300回以上開催。さらに長谷川頭取は、福邦銀行の職員に対し「人的リストラはしない」「処遇は福井銀行に合わせる」「評価は出身行を問わず実力主義」という3つの約束を明確に示し、組織の一体化を強力に推進した。

シェア過半数の責任と未来への覚悟

全国的には地方銀行の再編が相次いでいる。90年代末に130行ほどあった地方銀行、第二地方銀行は2025年で96行となり、2割以上減っているというのが現状だ。

全国の地方銀行の合併の動き
全国の地方銀行の合併の動き

地方銀行の再編の主な理由は3つある。1つ目が、人口減少や企業数の減少で地元市場の縮小に対応するため。2つ目が、いわゆる金利のある時代の到来で預金の獲得や貸出業務で優位に立つため。そして3つ目が、金融庁の後押しで合併によるシステム統合の際、国から補助金が出るためだ。

地銀再編の背景
地銀再編の背景

福井県の2行が合併する背景について福井県立大学経済学部の清水葉子教授は「福井県の人口が2000年の約83万人から2040年には65万人を割ると予測され、深刻な市場縮小という構造的課題があった」と指摘する。

福井県立大学経済学部の清水葉子教授
福井県立大学経済学部の清水葉子教授

さらに「一般論として、経営を統合することにより膨大なシステムコストや店舗維持コストを削減をし、サービスを維持、向上させていくという事になる」と続ける。

こうしたことを背景に、“新”福井銀行が掲げるのは、単なる金融サービス業ではなく「地域の課題解決業として進化」することだ。

今後3年間の中期経営計画では「県内マーケットの深掘り」「事業領域の拡大」「県外マーケットとの連携」を三本柱に、連結当期純利益100億円以上という高い目標を掲げる。

その核となるのが、事業承継やM&Aといった個別の相談に留まらず、顧客が抱えるあらゆる課題にワンストップで応える「課題丸ごと支援」体制の強化である。サービスの経済的価値である「機能的価値」と、利用時に顧客が感じる「体験価値」の両方を高めることで、新たな付加価値を創出し、利益へとつなげる戦略を描いている。

合併により、県内企業のメインバンクシェアは55.4%と過半数に達する。かつては独占への懸念も指摘されたが、いまや経営基盤を強化し地域経済を支えるための強みと捉えられている。

新しいスローガンは「感動の瞬間(とき)を、ともに。」顧客の期待を超えるサービスで「ありがとう、感動した」と言われる存在を目指すという決意が込められているという。

長谷川頭取は「お客様や地域とともに課題を乗り越え、感動を分かち合えるグループになりたい」と、その覚悟を語る。

人口減少と金利ある時代の到来という、大きな時代の転換期に船出する“新”福井銀行。その存在は、福井の地域経済とまさに一蓮托生だ。

福井テレビ
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