障害のある人に支援員が障害や特性にあわせた支援を行い、利用者の就労など社会参画やスキルアップを図る「就労継続支援」。
暮らしの安定や自立を支える大切な制度ですが、「絆(きずな)ホールディングス」という事業者がこの制度を悪用し、あわせておよそ150億円もの給付金を不正受給していたことが明らかになった。
取材班が元社員に接触すると、その背景として語られたのは「お金。とにかく利益目的」という言葉。役員は「役員報酬でタワマンを2つ以上所有して、スポーツカー乗っていた」という証言も得られた。
しかも同様の不正は全国で相次いでいるということで、「利益目的」で参入する事業者が障害のある人の社会進出を支えるという理念を捻じ曲げ、悪用する実態が明らかになった。
■「就労継続支援」障害ある人の就労を支援する公的事業
京都府にある「就労継続支援事業所」で行われていた商品パッケージの組み立て作業。
支援員が利用者それぞれの障害とその特性にあわせて作業を提供するなど、利用者の社会参画やスキルアップを図る。
法律にもとづく「障害福祉サービス」のひとつで、障害や体調などの理由で、一般企業で働くことが難しい人が利用している。
利用者:(支援員に)作業内容とか、いろいろアドバイスをいただいています。
利用者:最初のころは、名前もほとんど覚えることができなかったけど、今はどういうやり方かしっかり分かって、みんなと一致団結して精一杯頑張り尽くしています。
ここでスキルを身に着けた利用者がその後、民間企業などに就職すると、事業所には国や自治体から給付金が支払われる仕組みだ。

■約150億円給付金不正受給 「スタッフ」と『利用者』切り替えを繰り返す手口
障害のある人の暮らしの安定や自立を支える大切な制度。しかし、この制度を悪用した前代未聞の事案が発生した。
大阪市は先月、福祉事業会社「絆ホールディングス」が管理する4つの事業所がおよそ2年であわせて150億円ほどの給付金を不正に受給していたと発表し、事業所に対し、指定を取り消す行政処分を行った。
手口は以下のようなもの。
・4つの事業所で、利用者を一度、自社で「スタッフ」として雇用。
・一定期間が経つと再び『利用者』として就労支援事業所に戻す
・その後また自社で「スタッフ」として雇用。
グループ内で「スタッフ」と『利用者』の切り替えを繰り返し、利用者1人につき何度も、国や自治体から支払われる「給付金」を受け取っていたのだ。

■“支援”実態は「ほとんど自習でしたね。YouTubeで動画を見たりだとか」
不正が認定された事業所ではそもそも就労支援の実態はあったのだろうか。元利用者への取材を進めると、「正反対」の実情が見えてきた。
元利用者:自分で学習してメールで報告して、今日の体温、今日何やりましたっていう報告だけで終わっていたので。働いてるという実感は正直あまりなかった。
また、別の元利用者は「ほとんど自習でYouTubeで動画を見るものもあった」と明かした。
元利用者:ほとんど自習でしたね。YouTubeで動画を見たりだとか。
(Q.やってみてどうでしたか)
元利用者:いやもう本当に孤独そのものですね。不正受給のコマにされてるような印象です。
学びたい、働きたいという純粋な思いが不正に使われていた。

■「絆ホールディングス」の言い分は…
取材班は、行政処分のあと、絆ホールディングス側が利用者向けに開いた説明会の音声を手に入れた。
<説明会の音声より>
利用者:不正受給を確信犯的にやろうとしてたんじゃないの?
「絆ホールディングス」役員:それは決してないです。
利用者:私たちはそのために連れてこられたコマだったの?」
「絆ホールディングス」役員:そういうふうにコマなんて考えたことは一切ありません。
利用者:違法だったと受け入れている?
「絆ホールディングス」役員:受け入れていません。『不正』と評価されていますけども、障害のある方を受け入れ、最終的に外部に経済的に自立して出て行っていただくためのステップ。
役員は「不正ではなく、障害者のためだった」と話した。

■元社員語る「目的」は「お金。役員報酬でタワマン2つ以上・スポーツカー」
しかし取材班が元社員に接触すると、目的は別のところにあったと話した。
絆ホールディングスグループ元社員:お金です。それしかないです。とにかく利益のためにやっていたと思いますね。
(Q.給付金はどこに使われた?)
絆ホールディングスグループ元社員:(役員は)役員報酬でタワマンを2つ以上所有して、スポーツカー乗っていたり。
(Q.利用者のメリットになっていた?)
絆ホールディングスグループ元社員:利用者さんのためにはなってないと思います。”飼い殺し”っていう言い方が多分正しいと思います。
支援のあり方について、関西テレビが絆ホールディングスに質問状を送ると、次のような回答が返ってきた。
絆ホールディングスの回答より:利用者の状況に応じた適切なものとなるよう設計・運用していたと認識しております。他方で、すべての利用者の方に対して十分な支援が行き届いていなかったというご指摘については、重く受け止めております。

■相次ぐ不正 「『過剰に儲けようとする事業所』が増えた」の声
就労支援事業を舞台とした不正は、絆ホールディングスだけの問題ではない。
今月、北海道では虚偽の申請をして給付金およそ3500万円をだましとった疑いで、就労継続支援事業所の運営会社の役員が逮捕されるなど、事件が相次いでいるのだ。
取材を進めると、就労支事業所は、全国におよそ2万2000カ所あり、10年で2倍以上の数になっていることがわかった。
15年以上事業所を運営してきた男性は、「過剰に儲けようとする事業所」が増えたと話す。
NPO法人京都フォーライフ・井上学理事長:どっと数が膨れ上がった。福祉事業ではなく、営利事業を目的としたような事業所が数多くできた。
大阪で障害者の相談を受けている男性も、就労支援といえるか疑わしい事業所が多くなったと感じている。
NPO法人ちゅうぶ・平沼遊さん:給付金目当てというところがどんどん増えてるという印象ですね。

■障害福祉の「ビジネス化」“メダカ飼育”事業所「変わったもの目を引くかなと」
男性のもとには障害のある人を紹介してほしいと、さまざまな事業所からパンフレットが届く。中には、「メダカの飼育」を業務内容としているところもあり、実際に話を聞いてみた。
事業所職員の回答より:(メダカの飼育は)ペットショップやメダカ屋さんで働くのに役に立つのでは。(利用者にとって)癒し的な部分もあるが、変わったものがあったほうが目を引くかなと。
事業所職員の回答より:なかなか新しい人も入ってこないので。収益も出さないとだめなので、業務内容はいろいろ変わります。
障害のある人が就労し自立するという本来の目的から逸脱し、障害福祉が「ビジネス化」している側面が見えてきた。
大阪市は、不正受給をしていた絆ホールディングス側に、今月20日までに110億円あまりの返還を求めていたが、いまだに返還されていない。
(関西テレビ「newsランナー」2026年4月23日放送)

