98歳の原口アヤ子さんが無実を訴え続ける大崎事件。5度目の再審請求が行われる中、国会では再審制度の見直しをめぐる議論が熱を帯びている。焦点は「検察による抗告を禁止するかどうか」。弁護団は「大崎事件こそ抗告禁止の必要性を一番切実に示している」と声を上げた。
5度目の再審請求―98歳・原口アヤ子さんの闘い
1979年、鹿児島県大崎町の牛小屋の堆肥の中から、中村邦夫さんの遺体が発見された。いわゆる「大崎事件」である。殺人罪などで服役した原口アヤ子さんは、一貫して無実を訴えてきた。

2026年、弁護団は5回目の再審請求を行った。これまでに3度の再審開始決定が出されたものの、そのいずれもが検察の抗告によって上級審で覆されてきた歴史がある。現在98歳の原口さんにとって、迅速な審理は文字通り「時間との勝負」だ。

再審法改正をめぐる国政の動き
再審制度の見直しをめぐる議論は、今、国政の舞台で急速に熱を帯びている。
4月15日に自民党で開かれた会議では、再審開始決定に対する検察官の不服申し立て、すなわち「抗告」を認めるかどうかをめぐって紛糾した。政府による当初の見直し案は抗告を認める内容だったが、自民党内から批判が相次いだ。関係者によると、政府は今後、抗告を「原則禁止」とする修正案を示す見通しだという。
この議論のきっかけとなったのが、静岡一家4人殺害事件だ。再審で無罪が確定したこの事件では、検察の抗告によって確定までに10年以上を要した。その長い歳月は、再審制度が抱える深刻な問題を社会に広く知らしめることになった。
「死活問題だ」―弁護団が鹿児島市で会見
こうした国政の動きを受け、大崎事件の弁護団は鹿児島市で会見を開き、再審法改正への強い期待を表明した。
弁護団の鴨志田佑美共同代表は「検察の抗告禁止は大崎事件にとって死活問題」と言い切る。
「地裁は審理に向き合っているが、再審開始決定が出ても検察の不服申し立てが制度として残っていると、間違いなく検察は抗告する」

過去3度にわたって再審開始決定が検察の抗告で覆されてきた大崎事件の歴史を踏まえれば、この言葉の重さは明らかだ。
「アヤ子さんの存命中の再審無罪はあり得ない」
鴨志田共同代表は、悲願の再審無罪実現に向けて、さらに強い言葉で訴えた。
「再審開始が出たらすぐに抗告させずにやり直しの裁判に進んで、無罪判決をもらえなければアヤ子さんの存命中の再審無罪はあり得ない。大崎事件こそ抗告の禁止の必要性を一番切実に示している事件」
98歳という年齢を考えれば、制度改正の遅れは、そのまま正義実現の機会の喪失につながりかねない。弁護団が「死活問題」と表現する背景には、こうした切迫した現実がある。

6月中に新証拠提出、本格審理へ
大崎事件の第5次再審請求は、2026年6月中に新証拠の提出を終え、本格的な審理に入る見通しだ。再審法改正の行方と並行して、地裁での審理がどのように進むかが注目される。
45年以上にわたって無実を訴え続ける原口アヤ子さん。「大崎事件こそ」という弁護団の言葉は、制度改正を求める声の中でも、とりわけ切実な響きを持って国政の議論に問いかけている。
【動画で見る▶大崎事件弁護団 再審制度見直しに期待 検察官の抗告めぐり議論が過熱】
