「雨をはじくときに運が良かったら翼をまっすぐ伸ばした状態でパタパタとすることがあって、翼がしっかり見られるとすごく美しい」。鹿児島市の平川動物公園の鳥たちについて飼育員が語るこの言葉は、雨の日の動物園が持つ意外な魅力を端的に表している。鹿児島県内全域が梅雨入りし、本格的な雨のシーズンを迎えた今、家にこもりがちになるこの時期だからこそ見つけられる楽しみ方がある。
雨の日、鹿児島市民はどう過ごす?
梅雨に入り、じめじめとした空気が漂う鹿児島の街。外出を避ける人は少なくない。
「子供がいるので、どうしても雨の日に出かけるとなると雨の日対策が大変なのでちょっと出たくない」と話すお母さんの声は、多くの子育て世代の本音を代弁している。年配の女性は「なかなか私は本が好きなので大体家で読書」と穏やかに語り、ギターを背負った女性グループは「アニメ見る。雨嫌いなので」「晴れていたら気持ちがパーってしているけど、雨だったらちょっとってなるから逆に浸る。失恋ソングとか聞いている。失恋はしていないけど」と笑い交じりに話す。

やはりネガティブな声が目立つ雨の日の外出。しかし視点を少し変えれば、この季節ならではの楽しみ方が鹿児島市内にはある。
「雨の日マップ」が導く、新しい動物園の楽しみ方
鹿児島市の平川動物公園では、来園者数が晴れの日の約4分の1、平均約300人(2025年6月)にとどまる雨の日でも、訪れた人たちが存分に楽しめるよう工夫を凝らしている。その中心となるのが「雨の日マップ」だ。

飼育員が選んだ「雨の日だからこそ見てほしい動物」と、傘をささずに観察できるスポットをまとめたこのマップは、雨天来園者への実用的なガイドとして機能している。飼育展示課の江川昂弘さんは「雨の日は動物たちもゆっくり動いたり、雨の様子を見ながら活動しているので、晴れの日とは違った動物の様子が見られるのが魅力」と話す。

翼を広げるアカツクシガモ、泥パックを楽しむゾウ
江川さんが真っ先に案内してくれたのは、2025年に仲間入りしたアカツクシガモだ。オレンジの羽が特徴の大型のカモで、普段は池の周りでのんびり過ごしているが、雨の日には翼を大きく広げてはじく仕草を見せることがある。「翼がしっかり見られるとすごく美しい。ぜひ粘って見ていただきたい」と江川さんは力を込める。

雨の日は鳥たちが体についた水を払うために翼を広げる行動を観察できる絶好のチャンス。普段から羽づくろいで手入れされた羽が雨をはじく様子など、晴れの日にはなかなか見られない姿が次々と現れる。

続いて紹介されたのがアジアゾウのアンリーだ。砂遊びが大好きなアンリーにとって、雨の日は特別なスキンケアの時間でもある。江川さんによれば「保湿は水を含んだ泥を背中にかけたりというところで、保湿だったり肌のケアをしている」とのこと。鼻で豪快に泥を背中に載せるダイナミックな泥浴びは、取材記者が思わず「泥パックだ」と声を上げるほど。晴れの日の砂浴びとは一味違う、雨ならではのワイルドなケアシーンが楽しめる。
宮崎から訪れた来園者は「日頃見られない寝てる姿や、濡れてるかっこいいとことかがやっぱいいなと思う」と話し、別の来園者も「雨宿りしている子たちが多かったからカバも顔を出してくれたり、初めて見たので楽しかった」と目を輝かせた。

園内では15分ごとに周遊バスが運行し、傘の貸し出しも行われている。雨の日でも無理なく園内を巡れる環境が整っており、梅雨の時期こそ足を運ぶ価値がある。

仙巌園で薩摩の武士気分──梅雨限定の体験も
もう一つの雨の日スポットが、鹿児島市の仙巌園だ。島津家の別邸として江戸時代に築かれたこの庭園では、今まさにアジサイが見頃を迎えている。四季折々の風景で知られる仙巌園だが、梅雨の時期に特におすすめの体験がある。それが「四半的(しはんまと)体験」だ。

四半的は薩摩の武士たちが宴会の余興として楽しんでいたとされる弓矢遊び。一般的な弓道とは異なり、横向きに座って的を狙うのが特徴で、的までの距離は約8メートル。「昔でいうと四間半。そういう名前にあやかって四半的と呼ばれている」と業務企画課の馬庭伶奈さんは説明する。

「雨の日でも時間を忘れて天候に左右されずに楽しめます」という馬庭さんの言葉通り、屋内でできるこの体験は観光客にも人気が高い。記者も実際に挑戦し、わずかに的を外れたものの「惜しい。爽快感がありますね。スパンと矢が射抜かれると気持ちいい」と笑顔を見せた。

かつて薩摩の武士たちも興じたかもしれない弓矢遊びに挑戦しながら、歴史に思いをはせる──そんな時間の過ごし方が、雨の仙巌園では待っている。園内では梅雨限定の体験企画や猫神社の参拝記念章など、この時季ならではのコンテンツも用意されており、訪れるたびに新しい発見がある。

視点を変えれば、梅雨も楽しい
平川動物公園の「雨の日マップ」が示す翼を広げる鳥たちの姿、仙巌園の四半的体験が運ぶ薩摩の風──どちらも、雨だからこそ輝きを増す体験だ。つい家にこもりがちになる梅雨のシーズンだが、視点を少し変えるだけで、鹿児島には新しい楽しみ方がある。この季節ならではの魅力を探しに、傘を片手に街へ出てみてはどうだろうか。
【動画で見る▶鹿児島県内梅雨本番 でも雨の日だからこそ前向きに、こんな楽しみ方はいかが?】
