中東情勢の影響による石油由来の原材料不足が深刻化するなか、金沢市内の飲食店で思わぬ影響が広がっている。鍋料理に欠かせない「固形燃料」の入手が困難になっているのだ。「こんなことになるとは夢にも思わなかった」——のどぐろのコース料理を看板に掲げる飲食店の店主は、残り1個となった固形燃料を手に、困惑の表情を浮かべた。

「固形燃料が消えた」中東危機でノドグロ鍋、存続の危機

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金沢駅から歩いておよそ15分。落ち着いた雰囲気の一角に、「のどぐろ旬菜 みのりや」はある。店主の七徳稔さんが、北陸新幹線の金沢開業と同時にオープンし、今年で12年目を迎えた店だ。

看板メニューはノドグロのコース料理。金沢を代表する高級魚として知られるノドグロを主役に据え、すべてのコースで鍋物を提供している。地元客はもちろん、新幹線開業後に増えた観光客にも親しまれてきた一軒だ。
その鍋物を成り立たせてきた、地味ながら欠かせない存在——それが固形燃料である。

「最後の1個」を前に途方に暮れる

みのりやでは、多いときで1日に20個の固形燃料を使用する。コース客一人ひとりのテーブルで鍋を温め続けるためには、それだけの量が必要になる。ところがある日、その固形燃料が手に入らなくなった。

七徳さんはホームセンターや業務用の仕入れ先をいくつも回ったが、どこも品切れ。手元に残ったのは、たった1個だけだった。
「いろいろ見て回ったんですけど、もうなくて。どうしようかなというところですよね」と七徳さんは語る。「これがないと、この料理自体ができなくなるので。こんなことになるとは、本当に夢にも思わなかった。」

固形燃料は、石油を原料とするアルコールの一種を固めたもの。中東情勢の悪化が石油由来の原材料の供給不足を引き起こし、それが固形燃料の生産・流通にまで波及していると見られる。一見すると料理の世界とは無縁に思える地政学的な緊張が、金沢の小さな飲食店の厨房にまで影を落としているのだ。

「ノドグロを煮付けにするしかないか」

夜の営業を控えながら、七徳さんは代替手段を模索した。「どうしよう。ノドグロを煮付けにしてしまうとか……それ結構、手間かかるんですよ。」

テーブルで鍋を楽しんでもらうスタイルは、みのりやのコース料理の核にある。ノドグロを鍋で提供することで、出汁のうまみとともに旬の魚のおいしさを引き出している。それを煮付けに切り替えるとなれば、調理の手間が増えるだけでなく、料理のスタイルそのものが変わってしまう。固形燃料ひとつが、店のアイデンティティを揺るがす問題になっていた。

「貴重な1袋が!!」——業者が届けた40個の燃料

そんな危機的な状況のなか、注文していた業者が40個入りの固形燃料を届けた。七徳さんは目を輝かせ、「貴重な1個が!! 1袋しかないの?」と業者に確認するほどの喜びようだった。業者からは「全然ないんで」という言葉もあり、40個という量でさえ、いかに入手困難かを示している。
「助かりました、本当に」と七徳さんはほっと胸をなで下ろした。

しかし、安堵もつかの間だ。七徳さんの表情はすぐに曇った。「でも今後はもうちょっと不安ですね。束の間、一時しのぎでしかないので」。
40個は、1日最大20個を使う計算でいけば、わずか2日分にすぎない。次の入荷がいつになるかは見通せず、問題が根本的に解決したわけではない。

地政学リスクが地域の食卓を揺るがす

ノドグロという地域ならではの食材を守り続けてきた飲食店が、世界情勢の余波で苦境に立たされている現実は、決してひとごとではない。
固形燃料ひとつが品切れになるだけで、12年間守り続けてきた料理スタイルが根底から揺らぐ。七徳さんの「こんなことになるとは夢にも思わなかった」という言葉には、そうした経営者の率直な驚きと危機感が滲んでいる。

(石川テレビ)

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