JR九州が進める駅の無人化を巡る裁判で初めて司法の判断が下されました。
障害がある人たちが自由に移動する権利を侵害されたとしてJR九州を相手取り損害賠償を求めている裁判で大分地裁は23日、原告の訴えを棄却しました。
◆TOS佐野格記者
「今、弁護士が紙を持って現れました。支援者の前に駆け寄っていきます。広げられた紙には不当判決と書かれています。障害者の声届かずと書かれています。5年5か月の裁判の結果、原告の訴えは認められませんでした」
障害がある人たちがJR九州を相手取り駅の無人化の撤回を求めた今回の裁判。
発端は2018年に発表された大分市内8つの駅を無人化する計画でした。
日豊本線の牧駅、そして豊肥本線の中判田駅など7か所ですでに実施され、残る鶴崎駅も多くの時間帯で無人となっています。
JRはこうした駅にオペレーターが遠隔支援を行う「スマートサポートステーション」を導入。
また列車の乗り降りにサポートが必要な人には事前に予約を受け付けて対応するなど住民に理解を求めました。
こうした動きに対し、2020年9月、県内の障害者がJR九州を相手取り民事裁判を起こします。
◆原告の1人 五反田法行さん
「当たり前に与えられた移動の権利があると聞いたときに我慢するべきことではない。伝えていくことの重要性があると感じた」
憲法で保障されている移動の自由を侵害されているとして1人あたり11万円の損害賠償とともに裁判の中で無人化の撤回を求めてきました。
これに対しJR側は「交通ネットワークを維持していくために重要な経営施策」として上で「スマートサポートステーションで安全を確保出来ている」「事前の予約は利用者の安全を確保するためで障害者を排除する意図はない」などと主張。訴えを棄却するよう求めています。
これまで17回の口頭弁論を経て迎えた大分地裁での判決言い渡し。
◆TOS渡辺一平記者
「いよいよ判決の日を迎えた。傍聴席を求める多くの人が訪れていて大分地裁の判断が注目される」
裁判は23日午後3時に開廷し、冨田美奈裁判長が主文を読み上げました。
◆裁判長
「原告らの請求をいずれも棄却する」
判決の理由について大分地裁は「事前の予約があれば希望する列車に乗車できるよう介助体制を整えて対応している」。「全国的な人口減少などを踏まえ無人化を進める経営判断が不合理であるとまではいえない」などと障害者差別に該当するとは認められないとしました。
また「スマートサポ―トステーションが導入された駅では継続的に遠隔監視を行うことが可能になりさらに安全性確保に寄与するようになった」などと指摘。原告の訴えを棄却しました。
厳しい司法の判断を突き付けられた原告側からは憤りの声が聞かれました。
◆徳田靖之弁護士
「不当判決。そういう言葉で言い表すことではとても足りない。日本の裁判所は大企業の擁護者になり下がったのか」
原告側が開いた集会。集まった支援者を前に弁護団の徳田靖之弁護士は判決を厳しく批判しました。そして、訴えが認められなかった原告の障害者たちからは「闘いを諦めない」という声が聞かれました。
◆身体障害がある原告 福山陽子さん
「控訴して高裁までいけばいい。最高裁までいってやるという意気込みでいる」
◆視覚障害がある 原告釘宮好美さん
「私たちは絶対に諦めません」
原告側は福岡高裁に控訴する方針です。
一方、JR九州はこれまで原告の訴えを棄却するよう裁判で求めてきました。
判決を受けて「引き続き、交通ネットワークの維持に努めて参ります」とコメントしています。
【取材したTOS渡辺一平記者の解説】
提訴から5年以上を経て、きょう判決が言い渡されましたが、裁判の中で、注目された事故がありました。
それが2022年に津久見駅で起きた視覚障害のある高齢の女性が線路に転落して列車にはねられ亡くなった事故です。事故が起きた時間帯は駅が無人だったことから、原告側は人がいれば防ぐことができた可能性があったと主張。無人駅の危険性を指摘していました。
しかし、判決では事故の原因は不明であり、「この事故をもって、無人化された駅が危険な状態にあると示すものとまでは認められない」としています。
ほかにも、駅の無人化について、「一般的に求められる安全水準に反する状態に至っているとは認められない」と判断しています。
こうした判決について、原告側は「裁判所は大企業の擁護者に成り下がった」などと強く批判し、控訴する方針です。