暗い通りに赤ちょうちんが浮かび上がる。富山市中老田に先月オープンした屋台スタイルのラーメン店『中華そば ふじ井』が、連日多くの客を集めている。「コンブラック」と呼ぶスープは濃い見た目とは裏腹に「意外とあっさり」と驚かれる。その一杯には、3か月の試行錯誤と屋台文化を復活させたいという店主の強い思いが込められている。

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暗がりに灯る、赤ちょうちんの屋台

富山市中老田の路地。夜になると、そこだけぽっと明るく照らされた赤ちょうちんを頼りに客が集まってくる。店の名は『中華そば ふじ井』。先月オープンしたばかりの屋台スタイルのラーメン店だ。

今や珍しくなった屋台という業態そのものが、まず客の目を引く。あまり見かけないテントでのラーメン店に、ある客は「それも相まってうまさ倍増。リピート確定です」と答えた。外気にさらされながら立ち上る湯気の中で食べるラーメンは、それだけで特別だ。

ブラックラーメンではなく「コンブラック」

腕を振るうのは店主の藤井たけしさんだ。これまで食品開発に携わってきた経歴を持つ藤井さんは、開業にあたって3か月にわたり試作と改良を重ね、納得のいく味に辿り着いた。

「スープと醤油ダレに関してはすごく研究して時間をかけました。商品開発は一番楽しい時間」と藤井さんは振り返る。

完成したスープが「コンブラック」。藤井さんにブラックラーメンか問うと「いえ、コンブラックです。昆布をふんだんに使ったスープと醤油ダレ」と教えてくれた。「コンブラック」は昆布とブラックを掛け合わせた造語で、北海道産根昆布の旨味を加えた特製スープと、濃い溜り醤油のコクが合わさった一杯だ。

見た目の色の濃さとは裏腹に、口にすると意外にあっさりして優しい味わいで、後から昆布の旨味がじわりと広がる。トッピングは低温でじっくり煮込んだ自家製チャーシュー、ネギ、メンマ、タマネギ、カイワレ。麺はスープとの相性を考えて選ばれており、ほどよい噛み応えでよく絡む仕上がりだ。

「昔ながらの醤油でおいしい。テーブルも屋台だけどきれいで、入りやすくて良い」と客の一人は話す。屋台ながら清潔感のある空間づくりも支持を集めている理由のひとつだ。

「キーワードはギャップ」――屋台にこだわる理由

かつては大きな駅前に一軒はあった屋台ラーメン。しかし店主たちの引退や、店舗への移転によって、その数は年々減り続けてきた。そんな時代に、なぜあえて屋台という形を選んだのか。

藤井さんはこう語る。「(以前は)屋台というか外で食べるラーメン屋さんは各駅にあったが、引退されたり、店を構えられたりと少なくなっている。こういった場所でもう一回復活させようという思いで始めた」。

そして続ける。「キーワードはギャップ。テントだけどきれいに、など意識してお店作りをしている」。

取材した吉國唯アナウンサー
取材した吉國唯アナウンサー

古くて懐かしいはずの屋台を、清潔感ある空間と新感覚のメニューで「進化した形」として提示する。そのコンセプトが、幅広い客層の共感を呼んでいる。

少し肌寒さの残る夜に、湯気とともに体が温まる一杯。富山市中老田の暗がりに灯る赤ちょうちんは、屋台ラーメンの新たな時代を静かに照らし始めている。

(富山テレビ放送)

富山テレビ
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