水辺とともに暮らし、橋とともに発展してきた東京都江東区。区内には大小130以上もの橋梁があり、それぞれが交通インフラとしての役割だけでなく、地域の歴史や景観、まちの個性を映す存在でもあります。
一方で、区内の橋梁情報をまとめたマップは、約20年間、本格的な更新が行われていませんでした。
近年、江東区ではシティプロモーションに力を入れており、その活動の一環として、橋梁の構造や架橋位置を掲載した魅力的なパンフレットを作成することが決まりました。本取組を推進するために、株式会社マップルは江東区土木部道路課様と協働。2026年4月1日より、新たな「江東区橋めぐりマップ」と「江東区橋梁カード」の配布を開始しました。
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<「橋めぐりマップ」と「橋梁カード」の配布をお知らせするポスター>
◆江東区様の橋めぐりマップと橋梁カードの案内ページはこちら
⇒https://www.city.koto.lg.jp/470200/hashimegurimap_card.html
単なる制作業務ではなく、紙のマップで街歩きを楽しみ、スマートフォンで詳細情報に触れ、さらにカード収集を通じて橋を<体験>してもらう――。本プロジェクトは、橋梁情報を地域の魅力へと転換する、新しいシティプロモーションの挑戦でもありました。
今回のSTORYでは、本案件を担当したマップル営業部の旗持公洋が、江東区の想い、そして地図会社ならではの「紙×デジタル」で実現した制作の裏側をお伝えします。
<株式会社マップル営業部 旗持公洋>
【第1章】20年の空白を、どう埋めるか。江東区の想いと、私たちが動かされた理由
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今回のプロジェクトの原点は、実は5年前にまで遡ります。
当時、マップルが制作を手がけた「江東区×渋沢栄一まちあるきマップ」を、江東区様に高く評価していただいたことが、今回のご相談につながりました。過去の実績をきっかけに、江東区土木部道路課様から直接お声がけをいただけたことは、私たちにとって大きな信頼の証でもありました。
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初回の打ち合わせで、江東区土木部道路課橋梁係の太田義之様からお話を伺ったとき、私は率直に、そのテーマの重みと熱量に引き込まれました。
江東区には、歴史的背景を持つ橋、景観の美しい橋、日常の移動を支える橋など、多彩な橋梁資源があります。しかし、それらをわかりやすく一つに束ね、区民の皆様や来訪者の方々に手に取ってもらえる形で紹介する媒体は、約20年間、本格的な更新ができていなかったといいます。
20年。
それは、単に情報が古くなったというだけではありません。まちの風景も、人の動きも、情報の受け取り方も、大きく変わった時間です。紙のマップが中心だった時代から、スマートフォンが日常に溶け込み、地域の魅力発信にも体験性や参加性が求められる時代へ。その中で、橋の情報をどう今の形で蘇らせるか。それが、今回のプロジェクトの出発点でした。
太田様のお話から強く伝わってきたのは、「古い資料を新しく作り直したい」ということだけではありませんでした。
経年変化していくインフラへの関心を高めながらも、堅い行政情報として届けるのではなく、<江東区の橋って面白い><歩いてみたい>と思ってもらえる入口にしたい。そのために、シティプロモーションの視点も持った形で橋梁情報を発信したい。そんな明確な意志がありました。
その想いに触れたとき、これは単なる受託制作ではなく、マップルが長年培ってきた編集力や地図制作力を生かして、地域の課題に真正面から応える仕事だと感じました。
地図は、場所を示すだけのものではありません。人の興味を喚起し、行動を生み、地域の見え方を変える力を持っています。だからこそ私たちは、この20年の空白を埋めるだけでなく、その先にある「橋を通じて江東区をもっと好きになる体験」を形にしたいと考えました。
<江東区土木部道路課橋梁係 太田 義之様>
■江東区土木部道路課橋梁係 太田義之様のコメント
「当区の橋梁マップは約20年間本格的な更新がされていません。今回ようやく整備予算がつき、区民の皆様や観光客の方々に『楽しく橋巡り』をしてもらえるシティプロモーションの側面も持たせたいと考え、過去に実績があり信頼できるマップルさんにお声がけしました。このような素晴らしい形で結実し、大変嬉しく思っています」
【第2章】地図会社だからできたこと。紙の一覧性と、デジタルの利便性を両立する
<完成した江東区橋めぐりマップ(オモテ面)>
制作にあたり、私たちがまず向き合ったのは、「区内にある多数の橋を、どうすれば魅力的に、しかもわかりやすく見せられるか」という問いでした。
江東区内には大小130以上の橋梁施設がありますが、今回のマップでは、その中から歴史的価値や景観的魅力、街歩きの楽しさといった観点を踏まえ、江東区様との協議のうえで42橋を厳選しました。
重要だったのは、情報量を増やしすぎて読みにくくしないこと、そして<施設概要資料>ではなく<持ってまちをめぐりたくなるツール>にすることです。
橋の基本情報をきちんと伝えながらも、堅すぎず、街歩きの気分を損なわない紙面設計にする。そのバランスには、ガイドブックや観光マップを長年制作してきたマップルの編集ノウハウが生かされています。
仕上がりの形式は、広げると全体が見渡せるA2サイズ。一方で、折りたたむとA4の3分の1サイズになるジャバラ形式を採用しました。
街の中で立ち止まって広げやすく、必要なときにすぐ確認でき、使わないときはポケットやバッグにすっと収まる。こうした携帯性と一覧性の両立は、実際の街歩きを想定したからこその設計です。
また、誌面デザインもマップルが担当しました。
「文字を読ませる」のではなく、「視線が自然に流れて、次の橋にも行きたくなる」誌面づくりを心がけています。橋の位置関係や見どころが直感的に伝わる構成、歩く前にも歩いている最中にも使いやすい情報整理、そして<地図を見ているだけでも楽しい>編集。その積み重ねによって、このマップは情報ツールであると同時に、橋巡りへの招待状のような役割も担うものになりました。
<次々と橋を訪れたくなる誌面デザインの例>
一方で、今の時代、紙だけですべてを完結させるのは難しいのも事実です。
現地で現在地を確認したい、もう少し詳しい情報を知りたい、関連するスポットも見たい――そうしたニーズに応えるには、デジタルの活用が欠かせません。
マップルはこれまで、江東区文化観光課様の「KOTOおでかけパス(LINE)」導入支援にも携わってきました。そうした背景もあり、今回の橋梁プロジェクトでは、紙マップの制作と並行して、文化観光課様からも収集・整理した橋梁情報をデータベース化し、デジタルマップとしても展開できないかご相談があり、KOTOおでかけパス(LINE)でのデジタル地図閲覧が実現しました。
これにより、紙で全体像を把握しながら、スマートフォンで現在地や詳細情報を確認するという、二つの使い方が可能になります。
紙の良さは、一覧性と偶然の発見です。予定していなかった橋が目に留まり、「こっちにも行ってみよう」と思える。
他方、デジタルの良さは、検索性と更新性、そして持ち歩きやすさです。
そのどちらかではなく、どちらも生かす。私たちはこのプロジェクトで<紙かデジタルか>ではなく<紙もデジタルも>という答えを選びました。
これは単なる媒体の掛け合わせではありません。
長年整備されていなかった橋梁マップを、今の暮らしに合う形で再編集し直すこと。行政が持つ資産を、より多くの人が親しみを持って触れられる情報へと転換すること。その意味で、この取り組みは、情報整備であり、地域資源の再発見であり、小さなDXでもあったと感じています。
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<橋梁情報が見られるようになったKOTOおでかけパス(LINE)>
【第3章】<集めたくなる>から、歩きたくなる。橋梁カードという体験設計
<橋梁カード>
今回のプロジェクトで、街歩きの楽しさをさらに高める仕掛けとして制作したのが、「橋梁カード」です。
地図で場所を知るだけではなく、実際に足を運び、橋を見て、撮影し、その体験を<手元に残るもの>として持ち帰ってもらう。その循環をつくりたいという思いから生まれました。
カードは全10種類。
表面には橋の魅力が伝わる写真を、裏面には橋ごとの特徴やデータ、思わず人に話したくなるような情報を盛り込みました。たとえば、橋の構造や見どころ、景観上のポイント、歴史的背景など、単なるスペック紹介に終わらない内容を意識しています。
「橋って、こんなに個性があるんだ」
「次の橋のカードも欲しい」
そう感じてもらえるよう、収集したくなる設計にこだわりました。
さらに、カード裏面にはLINEにつながるQRコードも掲載しています。
紙のカードをきっかけに、より詳しいデジタル情報へアクセスできるようにすることで、リアルな体験とオンライン上の情報取得を自然につなぐ導線も整えました。ここでも、紙とデジタルの連携が活きています。
参加方法はシンプルです。
マップを見ながら対象の橋を訪れ、ご自身のスマートフォンなどでご自身と橋が写った写真を撮影。その写真を各文化センターの窓口等で提示すると、該当する橋のカードがもらえます。
この仕組みの面白さは、ただ「配る」のではなく、実際に現地へ足を運んだ行動そのものに価値を持たせている点です。
いわば、橋を見に行くことが参加条件であり、橋と出会うこと自体が体験になります。情報を受け取るだけではなく、まちの中を歩き、視点を変え、地域の風景を自分の足で確かめる。その小さなアクションが、江東区への理解や愛着につながっていくことを期待しています。
また、橋梁カードは、親子や友人同士でも楽しみやすい企画です。
「次はどの橋に行こうか」と会話が生まれたり、「この橋、前に渡ったことがある」と記憶がつながったりする。街歩きのきっかけとしても、地域を知る学びの入口としても機能する点は、この企画の大きな魅力だと思います。
【番外編】担当・旗持が実際に<橋梁カード>入手に挑戦してみた
<旗持氏が橋の前でスマホ撮影している様子>
今回の企画には、実はもう一つ、心をくすぐる仕掛けがあるんです。
9種類のカードを集めて所定の窓口で提示すると、特別な「シークレットカード」(※1)がもらえるのです。制作担当として、この企画の楽しさを自分自身で体験しないわけにはいきません。そこで実際に、橋巡りに出かけてみました!
まず向かったのは、対象となる亀久橋。
現地に立ってみると、橋は単なる通過点ではなく、その場所ならではの空気や眺めを持った<風景の主役>でもあることに改めて気づかされます。春の風を感じながらスマートフォンを構え、自分と橋が写った写真を撮影。いつもなら何気なく通り過ぎてしまう場所でも、「カードを手に入れる」という目的があるだけで、気分がアガり見え方が変わるのが面白いところですね♪
<江東区文化センターの窓口で写真を見せている様子>
撮影した写真を持って、最寄りの江東区文化センターへ。
窓口で画像を提示する瞬間は、どこかスタンプラリーやイベント参加のような高揚感がありました。行政施策でありながら、どこか遊び心がある。このちょうどよい距離感が、今回の企画の魅力の一つだと改めて実感しました。
<アンケートに記入している様子>
カードの受け取りにあたっては、簡単なアンケートにも回答します。
世代やお住まいの地域など、参加者の属性情報が今後の施策に生かされる仕組みになっています。楽しむだけで終わらず、体験の手応えが次の改善や展開につながっていく。このプロジェクトが、配布して終わりではなく、運用を通じて育っていく企画であることも感じられました。
<カードを手にする旗持氏>
そして、ついにカードを入手(※2)。
※1 こうした形で全9枚の橋梁カードを集めて窓口に持参すると、先着100名様まで特別カード(シークレット)がGETできるキャンペーンを行っておりましたが、大人気につき4月7日現在配布終了となっております。
https://www.city.koto.lg.jp/470200/hashimegurimap_card.html
配布再開を検討しておりますので、最新情報は区のお知らせページをご確認ください。
※2 今回はサービス開始前のお試し体験につき、特別に予備用カードを入手し、後日返却しております。
旗持氏コメント:「実際に橋を訪れてみることで、橋の色が異なることはもちろん、構造やモニュメントの有無・特徴など、それぞれの違いに気付かされました。
また、立ち止まって観察すると改めて「橋ってカッコイイな!」と思いました。写真を撮ることで、より橋がカッコよく映る角度はどこかな?など、こだわりが出てきたり…こうやって愛着が湧いていくのだなと実感しました!」
制作側として関わった企画ではありますが、実際に参加してみると素直にうれしい。だからこそ、この達成感が参加された皆様にも伝わってほしいと感じました。
この企画の良さは、カードを<もらう>ことだけではありません。
カードを集める過程で、橋に目を向け、街を歩き、地域の見え方が少し変わること。江東区の橋が、インフラとしてだけでなく、地域を楽しむ入口になっていくこと。橋梁カードは、その体験を象徴する小さなご褒美なのだと思います。
【結び】インフラ情報を、地域の資産へ。マップルが目指す自治体支援のかたち
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約20年間、本格的な更新の機会を待っていた江東区の橋梁マップ。
今回それが、江東区ご担当者様の強い想いと、マップルの編集力・地図制作力・デジタル活用の知見によって、新しい形で生まれ変わりました。
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私たちが今回目指したのは、単に正確な情報を整理することではありません。
橋梁というインフラ情報を、地域の歴史や景観、街歩きの楽しさと結びつけながら、区民の皆様や来訪者の方々にとっての<地域の資産>として再編集することでした。
その結果として、紙のマップ、デジタルマップ、橋梁カードという複数の接点が生まれ、一人ひとりが自分なりの方法で江東区の橋と出会える仕組みができたのではないかと思います。
全国の自治体様の中にも、老朽化するインフラへの関心喚起、埋もれている地域資源の再発見、あるいは行政情報の伝え方そのものに課題を感じているケースは少なくないはずです。
そうした中で、「地図会社にできることがまだまだあること」を私たちは知りました。
正確な位置情報を整理すること。地域資源をわかりやすく編集すること。紙とデジタルを適切に組み合わせること。そして、人が実際に行動したくなる体験へと落とし込むこと。マップルは、そうした力を通じて、自治体様ごとの課題に寄り添いながら最適なソリューションをご提案していきたいと考えています。
橋は、まちをつなぐ存在です。
そして情報もまた、人と地域をつなぐ力を持っています。
この春、新しくなった「江東区橋梁マップ」とスマートフォンを片手に、ぜひ江東区の橋を巡ってみてください。きっと、いつもの風景の中に、これまで気づかなかった魅力が見えてくるはずです。
【本記事に関するお問合せ】株式会社マップル広報担当:石塚・内山
mapple_pr@mapple.co.jp
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