海藻がなくなる“磯焼け”が漁業に悪影響を与えている。玄界灘に臨む沿岸では身が入ったウニが激減。原因はガンガゼの大量発生だ。このため地元の海士漁師たちが海の再生に向けて懸命な駆除活動を続けている。
濃厚で美味な「ウニ」が激減
玄界灘に臨む佐賀・唐津市などの玄海地区は、昔からウニ漁が盛んな地域。現在、約170人の漁師が素潜りで漁をしている。

水揚げされるのは、ムラサキウニやアカウニなど3種類。ウニを割ると黄金色の艶やかな身があふれんばかりで、その味は濃厚で磯の香りに満ちた絶品だ。

東京や海外にも出荷されるウニは、この地域の大きな収入源となっている。
ところが、そのウニにいま異変が起きているのだ。
海藻がなくなる“磯焼け”広がる
「身入りが悪くて色も悪いんですよね、(身が)入っていても。そういうのが増えてきた」
ウニ漁の現状について不安を口にするのは、佐賀・唐津市の海士漁師、野﨑信昭さん。

ウニの品質低下の背景にあるのは海の異変だという。その異変とは何なのだろうか。
海を上から眺めると、色の濃い部分がある一方、白っぽく見える部分がある。色が濃い部分は海藻が多く、白っぽく見える部分は海藻がなくなっているところだ。
海藻がなくなっている白っぽい部分を「磯焼け」という。

ウニの主食は海藻。良質なウニが育つためには海藻が十分に生えている藻場が必要だ。
このため海藻がなくなる「磯焼け」が広がるとウニの質が低下する。
ウニの仲間「ガンガゼ」が大量発生
では「磯焼け」の原因は一体何なのか。
原因のひとつと考えられているのが、同じウニの仲間「ガンガゼ」の大量発生。ウニの敵はウニだったのだ。

毒がある長いとげを持ち、身入りが少なく味も薄いため食用には適さない。さらに、ガンガゼは食欲旺盛。海藻への食害が「磯焼け」を引き起こしているという。
地球温暖化の影響もあるのか、海藻が群生する藻場が10年間で約半分になったという。ベテランの海士漁師は海の異変を実感している。

海士漁師 野﨑信昭さん:
素潜りで泳ぎにくいくらい(以前は海藻が)生えていたんで、昔と比べたら全然海の中が違います
海の再生へ「ガンガゼバスターズ」
そこで県と海士漁師が手を組み4年前に結成されたのが「ガンガゼバスターズ」。海の藻場を再生するためガンガゼの駆除に取り組んでいる。

素潜りではなく潜水機を使うことで駆除のスピードは1時間に600個。昨年度は1年間で86万個を駆除した。

海に2~3m潜ると岩の陰にガンガゼを発見。とげには毒があるため専用の道具でかきだし、その場でつぶしていく。

周りを見渡すと岩肌が目立ち海藻は少ない。佐賀県玄海水産振興センターによると玄海地区の藻場はかなり減っているという。
磯焼けした場所に再び豊かな藻場をつくるには、ガンガゼや痩せたウニを一度全て駆除する必要があり数年を要する。このため昨年度、県は2800万円を補助し活動を支援している。
これからの漁業は…“守る漁業”
駆除の効果は少しずつ現れている。同じ場所で撮影した約1年前の海の写真を比べてみると、今年は黒い部分が増えているのがわかる。

黒い部分は海藻で、その増え方は一目瞭然。藻場が再生した場所でとれたウニは身がたっぷり入っていて、本来のウニが復活していた。

海士漁師 袈裟丸彰蔵さん:
自然界とうまく付き合っていかないといけないと思っているので、これからの漁業は“守る漁業”をしていかなければと思っている

異常気象などによって海の異変が増える中、漁業の在り方も変化を迫られている。
