小学校に入学すると、子どもは初めて親元を離れて毎日通学するようになる。「ちゃんと行けるか」「無事に帰ってこられるか」――そんな不安を抱える保護者は少なくない。富山市では、手のひらサイズのGPSを活用して登下校を見守る家庭が増えている一方、地域全体で子どもたちを守ろうとする取り組みも広がっている。

「事故に遭わないかドキドキした」初めての通学路
この春、小学2年生になる莉心さんは、入学から1年間、あるものをランドセルに入れて通学してきた。手のひらサイズのキーホルダーのような見守りGPSだ。


自宅から学校まではおよそ2キロ、徒歩で約25分の道のり。莉心さんが通う小学校は児童数が多く、学童保育のニーズが高い。近くに祖母の家があるため学童に入ることができず、一人で歩いて帰ることもあるという。
「ママとパパが近くにいないから、事故に遭わないかドキドキした」
そう振り返る莉心さん。入学当初の不安は、多くの子どもたちが経験するものだろう。保護者にとっても同じだ。

「幼稚園の時は親が迎えに行って、目の届くところに娘がいたんですが、小学生になると登下校は一人なので、ちゃんと歩いて帰ってこられるか、事故に遭わないかと。一番心配だったのでGPSを持たせた」
莉心さんの父親はそう語る。
位置情報をリアルタイムで確認――見守りGPSの使い方
見守りGPSは、子どもの居場所をスマートフォンでリアルタイムに確認できるツールだ。保護者の見守り手段として、いま利用が広がっている。

富山市内の公園で、学校と自宅を想定した使い方を教えてもらった。自宅と学校をあらかじめ登録しておくと、出発時間や到着時間も把握できる。莉心さんが橋の向こう側まで歩いていくと、スマートフォン上に歩いたルートが表示された。

「(子どもの)位置がわかるので安心」と父親は話す。


緊急時の機能もある。端末のボタンを押すと、保護者のスマートフォンに通知が届く仕組みだ。莉心さん自身もその使い方を把握しており、新1年生へのアドバイスを聞くと、「いつもはランドセルの中に入れて、何かあったときはボタンを押してね」と話してくれた。

GPS端末一つが、子どもの「もしも」に備える安心の拠り所の一つになっている。
能登半島地震が生んだつながり 地域の「歩こうの会」

テクノロジーによる見守りが広がる一方、富山市の経堂新町地区では、地域全体で子どもたちを守る取り組みが行われている。小学生と保護者、そして地域の人たちが一緒になって通学路を歩く「歩こうの会」だ。


この取り組みを呼びかけたのは、防災士の高柳香織さん。能登半島地震をきっかけに、地区の防災サークル「あさがお」を立ち上げた人物だ。
「地域でつながることによって、子どもにとって地域の中で頼れる大人の一人でありたい。声をかけ合う、助け合う。共助につながっていくと思う」


この日は新1年生を中心に親子30人が参加した。公民館から小学校までは、子どもの足で片道45分。ブロック塀が多い細い路地、踏切、交通量の多い道路など、通学路上の危険な場所を親子で一緒に確認した。同時に、110番の家の場所を覚えたり、登下校中の災害やトラブルに備えた行動を学んだりと、実践的な内容となった。
参加した新1年生を持つ母親はこう話す。
「距離が長いから途中でトイレ行きたくなったりとか、帰りに寄り道して帰ってこないかという不安もある」

通学路を実際に歩くことで、親子ともに具体的な不安の輪郭が見えてくる。そしてその不安を、地域全体で共有することが「共助」の第一歩となる。
「地域でみんなで子育てする形が理想」
高柳さんが目指すのは、個々の家庭が抱える不安を、地域のつながりで支え合う社会だ。
「親一人が自分の子どもたちを見るのではなく、地域でみんなで子育てする形が理想だと思う」
交差点での見守りなど、通学路の安全確保は多くの地区で地域ぐるみで行われている。しかし大切なのは、日常的な見守りだけではない。万が一の時に子どもたちが自主的に判断し行動できること、そして地域が速やかに対応できる体制を整えておくことも欠かせない。
GPSという個人のテクノロジーと、「歩こうの会」に代表される地域のつながり。その両方があってこそ、子どもたちの安心な毎日が実現する。
この春、新1年生を迎えるご家庭でも、「わが家の見守り」について今一度考えてみてはどうだろうか。
(富山テレビ放送)
