石川県加賀市・山中温泉。鶴仙渓の自然に抱かれたその温泉街の一角に、地元の人も観光客も引き寄せてやまない一軒の食堂がある。「ごはん処 魚心」——1983年の創業から40年以上の歴史を持ち、一度は暖簾を下ろしながらも息子の手で甦ったその店は、予約なしでは待ち時間が生じるほどの人気を誇る。石川テレビ「ハブイート」のコーナー「イトシメシ」では、アンバサダーの彦摩呂さんとリポーターの沼本アナウンサーが店を訪問。視聴者からの熱いメッセージを携えて訪れた二人が出合ったのは、新鮮な魚介をたっぷりと盛り込んだ刺身定食と、大女将が考案した名物釜めしだった。

「エビで彦摩呂が釣れます」——視聴者のメッセージから始まった山中温泉の旅

石川県加賀市・山中温泉
石川県加賀市・山中温泉
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今回のロケは、番組あてに届いた視聴者・さくらんぼさんからのメッセージから動き出した。
「石川に来たらぜひ食べてほしいのは、加賀市山中温泉の『魚心』の刺身定食です。予約していかないと待ち時間があるくらい人気のお店で、お魚もぷりぷりでお値段もお手頃です!」

このメッセージを聞いた彦摩呂さんは「そんなん気になる!早く行こう!」と即座に反応。山中温泉の中心部にある山中座からわずか徒歩1分という近さの魚心へと向かった。

魚心は昼は定食、夜は居酒屋の営業スタイルで、地元の常連客から温泉街に訪れる観光客まで幅広い客層を迎えている。店に足を踏み入れた二人が真っ先に目を引かれたのは、壁一面に貼られた来店客からの手書きのメッセージの数々だった。

「魚心さんへ。お刺身定食おいしかったです。また次もきます」
「神戸から石川に来ました!一昨年の夏にも魚心さんのランチに……来店できて嬉しいです♡」

彦摩呂さんはある一枚のメッセージを見つけると、「沼ちゃん、こんなんあったらめっちゃ気にならん?」と興奮気味に声をあげた。沼本さんも「わかる〜!なんだか信頼度上がりますよね?」と共感する。

神戸からのリピーターが「今回の旅行も絶対魚心さんは行くと決めて来ました」と書いたメッセージを読み上げる彦摩呂さんの表情には、期待感がありありと浮かんでいた。

「参考書かと思った」——ブリの厚切りに彦摩呂も驚愕

一方その頃、厨房では店主の稲谷晃士さんが黙々と刺身定食を準備していた。ほどなくして、テーブルに運ばれてきたのは目を見張る一皿だった。
「美味しそうな刺身定食が来ましたよ!すごい豪華ですよ」と彦摩呂さんが声をあげる。

この日の刺身定食に盛り付けられていたのは、ブリ、甘えび、ヤリイカなど。味噌汁と小鉢もついて、価格は1200円。コストパフォーマンスの高さも、この店が愛される理由のひとつだ。

中でも注目は、ブリの切り身の大きさだった。箸でつまみ上げた瞬間、彦摩呂さんが思わず叫んだ。
「これすごい。参考書かと思った!このご飯にバウンドして、ちょっとお刺身を乗せて…」

店主が「ブリは大きめに切っています」と静かに語れば、彦摩呂さんは「普通の三倍ぐらいの大きさがある」と驚嘆する。実際にひと口頬張ると、その表情が一変した。
「うまいっ。新鮮。脂がのってるね〜。そのおかげで、口に入れたときにもうねっとりととろけてん。ご飯の粒の間にこのオイリーなブリの脂が入ってめちゃめちゃおいしい。」

さらに視線を向けたのが、子持ち甘エビだった。ぷりぷりと張りのある身を箸でつまんだ彦摩呂さんは、その鮮やかな色合いを見て「サファイアのようです」と形容する。

そのまま口に運び、「うんまい。ぷっちぷち。いや〜、ちょっとこれ」と思わず言葉を失いかける場面も。「エビで彦摩呂が釣れます。」

ヤリイカも加わった盛り合わせについては「これやっぱり鮮度もそうですけど、普通のお刺身とボリュームも全然違いますね」と総評する。

なぜこれほどの品質を安定して提供できるのか。その秘密は、店主の仕入れへのこだわりにある。ホテルの板前として腕を磨いた経歴を持つ店主・稲谷さんは、自分が信頼を置く鮮魚店から毎日仕入れを行っている。常に5種類の魚介類が盛り合わせで提供されるため、季節や日ごとに異なる顔を見せるのもこの刺身定食の醍醐味だ。

1983年の開業、そして2006年の閉店——板前の息子が「魚心」を甦らせるまで

刺身定食を堪能しながら、彦摩呂さんと沼本さんは店主・晃士さんと奥さんの清美さんに話を聞いた。そこで明らかになったのは、この店が辿ってきた紆余曲折の歴史だった。

魚心は1983年、現店主の父親によって開業。2006年、一度は店を閉めることになる。そこから7年後の2013年——ホテルで板前として働いていた息子の晃士さんが、安定した職を手放してまでこの店を復活させた。

「ホテルの板前さんをやめて、こっちを?」と彦摩呂さんが尋ねると、晃士さんは「はい」と静かに答えた。
沼本アナが「大きな決断ですよね」と続けると、彦摩呂さんは清美さんに向かって「そのとき奥さんは?反対はなかった?」と問いかけた。清美さんは少し間を置いてから、こう打ち明けた。
「ちょっと反対しました」
「何が不安だった?」
「やっていけるかの心配で……子どももいたので生活できるかとか。やっぱ安定した収入のほうが」

店を開ける決断をしたのは晃士さんだが、その背中を押すことも、引き止めることもできた清美さんの葛藤がにじみ出る言葉だった。その後に奥さんが付け加えた「でも13年なんとか」というひと言に、彦摩呂さんがすかさず反応する。

「すごい。10年以上飲食店続くのは完全に勝ち組ですよ。魚心は勝ち組です」
軽妙な言い回しの中にも、飲食業の厳しさを誰よりも知る彦摩呂さんならではの重みがある言葉だった。

「やれ!」——大女将・璃子さんが授けた言葉と、名物釜めしの誕生

刺身定食を堪能した二人だったが、沼本さんの視線がメニュー表に釘付けになる。
「彦摩呂さん、私の視線の先にいいもの見つけちゃって。あそこ見てください。釜めしって書いてある」
「ほんまや!釜めしって書いてる。え、あの釜めしあるんですか?」

店主が「釜めしもあります。人気です」と答えると、「食べないわけにはいかない」と二人の意見は即座に一致した。

ここで登場したのが、店の大女将・璃子さんだ。彦摩呂さんは鯛の釜めしを、沼本さんは鶏の釜めしをそれぞれ注文した。

「温泉つかった今。うわー、ふっくら!ご飯にも出汁が染みてるわ〜。あと香りといいね。このいろんなお野菜の素材の味が染みわたっている」と彦摩呂さんが絶賛すれば、沼本さんも「優しい。ほんとになんかもう、味の良さが体中に染みわたります」と声をあげた。

釜めしを注文した人だけが感じることのできる「蓋を開けたときの喜び」——その喜びを、この店では全部で12種類のバリエーションで楽しむことができる。すべて注文を受けてから炊き上げるため、常に出来立ての状態で提供されるのも大きな魅力だ。

この釜めしは、先代店主が「山中温泉に名物を!」という思いで考案したものだという。その意志を受け継いで、今も大女将・璃子さんが大切に守り続けている。

ここで彦摩呂さんが切り込む。
「ちょっと一つ聞きたいんだけど。ここ閉めてたやん、しばらく。それ、閉めてた魚心を息子が帰ってきてやろう言うたとき、お母さんはどう思った?」

大女将の答えは明快だった。
「やれ!って言うた」
一度は店を閉じ、それでも「やれ」と背中を押した母親の言葉。息子が戻って店を再開したものの、最初はなかなか客が来なかったという。「でも、この子にいろいろ教えたら、少しずつお客さんが帰ってきた」と大女将は語る。

しかしその後、大女将は…「でも昔のお客さんはみんな死んじゃったわね。みんなほんとに、昔はみんなツケやったんや。今はみんな元気やろ。みんなツケといて、ツケといて。その人はもう払わずにみんな死んじゃったんや」

沼本さんが「それ、お店大変じゃないですか」と声をかけると、大女将は「仕方がない」と一言。笑いが入り混じるその言葉に、長年にわたって地域と共に歩んできた店の歴史が凝縮されていた。

「どうまとめるんだ、これ」と彦摩呂さんが漏らした言葉が、その場の空気を象徴していた。

「20周年も、30周年も」——未来へつなぐ魚心の物語

締めのシーンで、沼本さんが店主・晃士さんに問いかけた。「これから、お店はどんなふうにしていきたいですか?」

晃士さんは静かに、しかしはっきりと答えた。
「皆さんに喜んでもらえるように頑張ってやりたいと」

その言葉を受けて彦摩呂さんが大女将に向けたのは、こんな言葉だった。
「大女将、今13年目。あと2年で15周年。絶対元気でいてくださいよ。20周年も」

すると大女将は「79やけど頑張ります」と笑顔で返す。彦摩呂さんが「今は医学的に120歳まで生きられるから」と冗談を交えれば、大女将は「私も占いで見てもらったら93まで生きるよって言われた」と朗らかに笑った。

「じゃあ20周年、30周年までできるように」と彦摩呂さんが言うと、大女将は「はい、頑張ります」と力強く答えた。

味も間違いなく、パワフルな大女将も本当に最高でしたと感想を述べる沼本アナ。刺身定食については「常に5種類の旬の魚介類が盛り合わせで提供されるので、満足感が高いコストパフォーマンスのいいイトシメシ」と改めて紹介。釜めしについては「全部で12種類あり、すべて注文してから炊き上げるので出来立てをいただける」と案内した。

山中温泉を訪れる際には、ぜひ「魚心」の暖簾をくぐってみてほしい。40年以上の歴史を受け継ぐ店主の包丁さばきが生み出す刺身の厚みと鮮度、大女将が守り続ける釜めしの温もり、そして壁いっぱいに貼られたリピーターたちのメッセージが——訪れた人を、確かな「イトシメシ」の記憶へと連れていってくれるはずだ。

『ごはん処 魚心』
石川県加賀市山中温泉薬師町ウ12
営業時間:午前11時半~午後2時・午後6時~午後10時
電話:0761-78-5176
定休日:月曜日
昼は定食、夜は居酒屋として営業し、地元の人も観光客も訪れる人気店。刺身定食はその日仕入れた旬の魚介5種が盛り合わせで登場し、味噌汁と小鉢がついて1200円。釜めしは全12種類で、すべて注文を受けてから炊き上げる。ランチタイムは特に混み合うため、事前の予約を推奨。

(石川テレビ)

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