男性も積極的に長期の育児休業を取得できるよう、愛知県一宮市では2026年4月から、県内の自治体で初めて「育休カバー手当」を導入します。特に男性が育休をとる後ろめたさを解消するのが狙いですが、普及にはさまざまな壁があるようです。

■誰かへの“しわ寄せ”…から“持ちつ持たれつ”へ

一宮市議会で23日、全会一致で可決された「育休カバー手当」の条例案は、育休を取る職員の業務をカバーした同僚に、手当を支給するといったものです。

対象となるのは、代わりの職員が配置されず1カ月以上業務をカバーした最大4人で、あらかじめ所属長がカバーする職員を指定します。

支給額については、育休を取った職員の一カ月の給料の4%に期間を掛けた額で、複数人の場合等分して支払われます。

例えば、給料が30万円の職員が5カ月間育休を取り、4人の同僚がカバーした場合、30万円の4%にあたる1万2000円に5カ月分を掛けた6万円を4人で等分し、1人あたり1万5000円がボーナスに上乗せする形で支払われます。

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制度の導入に至った背景にあるのは、育休取得に対し、特に男性職員が抱える「後ろめたさ」です。

一宮市人事課の担当者:
「女性の場合は、3歳ごろまで(育休を)取ってみえる方が多いんですけど、男性だと取得期間が短くなってしまう傾向がありまして。私も育児休業を取得した経験があるんですけども、業務をお願いすることになりますので、若干後ろめたさと言いますか」

一宮市では、男性職員の8割以上が育休を取得していますが、「迷惑をかける」「気が引ける」といった声が多く、1カ月以上取得したのは3割弱に留まっていることが課題となっていました。

職員ら:
「育休取得の期間についても、少し長めに取ろうかなとか、前向きに考えられるようになりました」
「応援する立場として、これから休む方をよりポジティブに応援できるかなと」

一宮市人事課の担当者:
「導入を契機に、男性も育児休業を1カ月以上取っていただいて、育児にも積極的に参加していただく。こういった環境が当たり前になるように」

一宮市役所の育休カバー手当は、4月1日から始まります。

■「育休カバー制度」普及を阻むのは…

「育休カバー制度」の導入は、他の自治体でも進んでいます。

和歌山県では2025年4月から、連続して1カ月以上、育児や病気で休んだ職員の業務をカバーした職員には、ボーナスを上乗せする制度が始まっていて、導入されてからの1年間で、のべ300人以上が取得しています。

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実際に、育休した社員の業務を代わったりサポートする人たちには、「負担を感じる」という声が多いようです。

MS-Japan調べのアンケートでは、サポートを経験した人のおよそ8割が、「業務量が増え、負担が大きい」「自分の通常業務に支障が出る」「ワークライフバランスが崩れた」などと回答しています。

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現状では、育児休業のフォローに関する何らかの制度や対応がされているところは、あわせて35%にとどまっています。

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対応が遅れている背景について、専門家に聞きました。

千葉商科大学基盤教育機構の常見陽平准教授:
「民間企業でこの制度の導入が進んだのが金融機関。ある程度、仕事が定型化されており、かつジョブローテーションがあるので導入しやすかったのだと思います。(民間は)部門・職種によってだいぶ育休取得率が違います。具体的に言うと、営業はあまり取らない、スタッフ部門(管理系)の人ばかり取る、みたいな。仕事の『属人化(特定の社員に業務依存する)』をいかになくすか。一方で属人化せざるを得ない部分もある。仕事をいかに分解していくか」

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常見准教授によりますと、特定の個人に依存する業務が多い企業は導入しにくく、仮に導入しても、取得する部門・全くしない部門と別れて、不公平感は残ったままになる恐れもあります。

気を付けたいのは、「支払うことで我慢してくれ」といった“迷惑料”になってはいけない、本来は代わりの人を用意する“休みやすい雰囲気”が理想だとしています。

東海テレビ
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