岐阜・北方町に誕生した和菓子店「菓子とりむら」。100年以上続いた洋菓子店の6代目が暖簾を継がず、和菓子職人として新たな一歩を踏み出しました。看板の豆大福は連日完売。老舗に頼らない若き職人の挑戦を取材しました。
■行列ができる和菓子店の豆大福
2025年2月、北方町の商店街の一角にオープンした「菓子とりむら」。白を基調とした店内が印象的です。
客:
「和菓子店で、こんなにオシャレなところはない」
別客:
「インスタで見つけて。すごくおいしそうと」

店主の鳥村昌司さん(32)は、100年以上続いた洋菓子店の6代目。しかし暖簾を継がず、和菓子職人として新たな道を選びました。
客:
「お米と豆と砂糖を、どれだけおいしく食べられるか。なるべく若い人にも来て欲しい」
ショーケースには、朝作った草餅やイチゴ大福など約10種類が並びます。

客:
「豆大福がすごくおいしい」
別の客:
「ゴロっとした豆を食べるのがおいしい」
しっとりした餅に大粒の黒豆が入った「豆大福」(280円)は、多い日は、1日400個売れる看板商品です。

朝7時。厨房には宮城県産のもち米の香りが広がります。
昌司さん:
「蒸した時の膨らみが違う。のびの良さと歯切れのよさですね」
北海道産の黒豆は煮崩れしにくいものを選び、塩を少し加えてあんの甘みを引き立てます。餅と同量の黒豆を合わせ、黒豆がきれいに見えるようにこしあんを包みます。
昌司さん:
「表面に豆がキレイに見える方が、おいしそうかな」

甘さ控えめのこしあんと、黒豆の塩味が絶妙なアクセントになっています。
午前9時半の開店と同時に、豆大福を求める客が次々に訪れます。
客:
「家族みんなで食べます」
別の客:
「大きい。塩味がきいていてさっぱりしていて、大好きです」
「草餅」(270円)や旬の“美濃娘”を使った「いちご大福」(360円)、「どらやき」(290円)も人気です。お茶に特化した羊羹「ちゃかん(アールグレイ・ほうじ茶・抹茶)」(各300円)も並びます。

昌司さん:
「羊羹は若い人がなかなか手に取らないので、少しでもきっかけになればと。パッケージをかわいくした」
遊び心たっぷりに、季節を感じさせる和菓子も手がけ、目でも楽しませています。
■老舗の看板に頼らず新たな道を歩む
客:
「前ここはケーキ屋さんでした」
別の客:
「ケーキとかクッキー、パンも売っていましたね。昔から人気でした」
昌司さんの父・正晴さん(75)は、洋菓子職人として、創業100年を超える洋菓子店「長崎屋」を営んでいました。
正晴さん:
「結婚式場から依頼があって、バームクーヘンやケーキなどを作っていました」

長年地域で愛されてきた洋菓子店でしたが、6代目の昌司さんは継がないという決断をしました。
昌司さん:
「洋菓子が嫌いとかじゃないですけど、自分がやりたいのは和菓子だった」
和菓子の繊細さ、季節のうつろいなどを感じられるところに惹かれ、名古屋や金沢の店で修業。そして洋菓子店「長崎屋」を改装して「菓子とりむら」を始めました。
昌司さん:
「老舗を継ぐというより、新しい和菓子屋としてやっていく方がいいかなと。父親と同じことをしたくなかっただけかも知れない」

正晴さん:
「昔はこうだったと押し付けたくない。若い人は若い人のやり方でやる、僕もそうだった」
店づくりやパッケージ、SNSの情報発信など“いまどき”のやり方で挑戦。オープン日は長い行列ができました。
■和菓子の伝統を守りながら新しい味に挑戦
正晴さんも、和の素材を使った「サブレ(ごま味噌・山椒くるみ・甘酒あずき)」(各200円)を開発するなど、協力しています。

正晴さん:
「そばにいて手伝えるってこんな幸せなことはない」
昌司さんは、春の新作「ピスタチオのおはぎ」(4月に販売予定)も考案しました。
昌司さん:
「チョコに使われることが多いピスタチオが、あんことも合うことを知ってもらいたい」
和菓子の伝統を守りながら、新しい味にも挑戦しています。

昌司さん:
「地域で“あの店のお菓子は間違いない”という存在になりたい」
若き6代目が老舗の看板に頼らずに挑む、新時代の和菓子店の物語は始まったばかりです。
