長野市は解体予定だった長野電鉄旧屋代線の「松代駅舎」について、3月7日、移築・保存する方針を示しました。参加者からは、保存に安どの声が聞かれた一方、「移築」をめぐっては反対の声も。古い木造駅舎は、この先、どうなるのでしょうか。

「解体」から「移築・保存」へ

長野市 交通政策課・高木厚志課長:
「安全な生活道路と駅舎の保存を両立できる案を本日お示しするものでございます」

3月7日、長野市松代町で行われた住民と市の意見交換会。

駅舎とは、長野電鉄旧屋代線の「松代駅舎」のことです。

廃線後も同じ場所に残されていますが、築100年以上がたち、老朽化も進んでいることから、市は2025年度中に解体する予定でした。

しかし、意見交換会で示されたのは―。

市の担当者:
「駅舎の移築を条件とした民間事業者による駅舎の保存活用という提案です」

駅舎の移築・保存です。

保存を望む住民の声などを受け、市は方針を転換しました。

■築100年超の駅舎の歴史

松代駅は長野電鉄の前身、河東鉄道の開業に合わせて1922年に建てられ、長年、生活や産業を支えてきました。

2012年の屋代線廃線後に市が譲り受け、バス停の待合所として利用されてきた他、地域の情報発信の拠点としても使われてきました。

2022年には、築100周年を祝うイベントも。

しかし、耐震対策がされておらず、老朽化も進んでいることなどから、市と地元関係者でつくる検討委員会は、2021年に「駅舎撤去に異存なし」と結論を出し、市は2025年度中に解体する予定でした。

解体した跡地には道路を整備する計画で、市は、松代城跡周辺の利便性向上などにつなげたいとしています。

■解体中止を求める動き

ただ、住民の中には、「解体」と「道路建設計画」に納得していない人もいます。

画家(松代町在住)・トモヤアーツさん:
「街の一番大事な心臓部分をなくしてしまうような印象があって、それがすごく悲しい」

松代町在住の画家、トモヤアーツさんです。

開業100周年に合わせて絵本を制作するなど、松代駅舎には強い思い入れがあります。

街の活性化に生かしたいという思いから、駅舎の保全活動にも取り組んできたほか、周辺の清掃活動なども行ってきました。

画家・トモヤアーツさん:
「本当に道が必要なのかとか、感情だけじゃなくて実際にどうなのかというのを町の人にも発信したいし、みんなで見て、考える機会をつくりたい」

保存を願う住民有志らと「松代駅舎みんなの会」を立ち上げ、2025年7月には、4200を超える「解体中止を求める署名」を市に提出しました。

そうした中、荻原市長は2月、松代駅舎について複数の民間事業者から利活用の提案があったことを明かし、「解体」の方針の撤回を表明しました。

長野市・荻原健司市長:
「民間の方々から保存活用に向けての提案がありましたので、それぞれの皆さまの思いを丁寧に受け止めたつもりです」

■住民からは賛否両論

迎えた3月7日の意見交換会。

市は改めて、現在の駅舎の場所での道路整備の必要性を訴えた上で、駅舎を今の場所から移して保存する案を示しました。

市の担当者:
「安全を確保するため駅舎を通過する道路整備の必要性が高まった。解体にならざるを得なかったという状況で、皆さまの声の力により、この活用が実現可能な民間事業者から提案をいただいているのは、奇跡のようなタイミングだと考えている」

「移築や維持管理にかかるすべての費用は民間事業者が負担すること」「駅舎は現在の形状を維持すること」「移築先は原則、市内として、松代地区を優先すること」などが条件です。

「松代駅舎みんなの会」の代表として登壇したトモヤアーツさんは―。

松代駅舎みんなの会・トモヤアーツさん:
「理想というか、僕の願いはあの場所で活用し、道路に関しては他の計画ができないかという考えです」

その後の意見交換会は非公開で行われましたが、市によりますと、現在の場所での保存を望む意見が多かった一方で、「周辺の道路環境改善のために移築してほしい」という意見も出されたということです。

参加した住民は―。

70代:
「賛否両論いろいろあると思う。保存してほしいという形の中で一歩進んだのでは」

60代:
「(市の説明が)『解体しないからよかったんじゃないの?』というニュアンスに聞こえた。移築では意味がなく、現在の場所に残すことに意味があると思うが、それを言えない雰囲気があった」

40代:
「賛成も反対も今の時点では判断できないので、松代に住む人たちが安全で楽しく過ごすことができる場所になれば」

■「移築」に抱く複雑な思い  

トモヤアーツさんも、「移築」には複雑な思いを抱えています。

松代駅舎みんなの会・トモヤアーツさん:
「解体ではなく残す形になったのはうれしいです。移築費用から何から全部、事業者さんが持つのはかなり負担が大きいし今後、継続するというところに影響が出るのではと心配している。(今の場所に)残ってほしいというのが自分の願いです」

市は、遅くとも2026年の夏までに事業者を公募し、善光寺御開帳が開かれる2027年春までには移築を完了したい考えですが、今回の意見交換会で寄せられた意見も踏まえ、最終的な方向性を決めていきたいとしています。

長野放送
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