名古屋・大須で本場の味を守り続ける讃岐うどんの「か川」。香川出身の父と名古屋生まれの息子が二人三脚で打つ一杯は、強いコシといりこが香る出汁が自慢です。ふるさとの味を届けたいという思いで営む、親子のうどん作りを取材しました。
■大須で味わう本場の讃岐うどん
大須商店街の招き猫広場からすぐ。平成18年創業の「讃岐麺処 か川」は、地元客はもちろん、観光客にも人気の店です。

客:
「かれこれ7、8年通っています。おいしいです」
別の客:
「毎月必ず来ます。最初に食べた時に『なんておいしい』と思って」
強いコシと弾力がある麺に、いりこが香る出汁。寒い季節には、体だけでなく心まで温めてくれます。メニューは、生卵と特製ダレを絡めて食べる「釜玉うどん」(770円)や、里芋や大根を味噌で煮込んだ「味噌しっぽくうどん」(1100円)など30種類以上。

うどんを打つのは、香川県出身の福本明夫さん(76)と、名古屋生まれの息子・賢吾さん(48)の親子です。
明夫さん:
「香川県の讃岐うどんの味を、名古屋の人に知ってほしい」
■出汁と麺に込めた職人の技
朝6時。厨房には生地を仕込む賢吾さんの姿がありました。使う小麦粉は香川県から取り寄せています。
賢吾さん:
「モチモチ感もあって、しっかりしたコシもある。バランスがいい」

そこに加えるのは、瀬戸内海産の塩で作る塩水。
賢吾さん:
「ここでうどんの出来が決まります。塩度は季節で変える。今は10.5度。夏場は15度、冬は10度くらい。その間で調整しています」
塩水をまんべんなく混ぜ合わせ、生地の状態は必ず手の感覚で確認します。
賢吾さん:
「手の感触でないとわからない。理想は耳たぶくらい」

約20分後、混ぜ終わると今度は足で生地を踏み、コシを生み出します。
賢吾さん:
「30分くらい踏みます。踏みすぎるとかたくなる。足の裏で会話する感じ」
1時間ほど熟成させた後、午前8時30分からは父・明夫さんの出番です。寝かせた生地を機械で伸ばし、裁断していきます。
明夫さん:
「触ればわかります。あとは茹で時間だけ」
出汁には北海道産の昆布と瀬戸内海産のいりこを使用。さらにイワシ、サバ、アジ、カツオの混合節を合わせ、香川県産の薄口しょうゆで味を整えます。

賢吾さん:
「いつもと同じ、やさしい味になっています」
茹で時間はきっちり7分。どんぶりに盛り、自慢の出汁をかければ完成です。コシがあってのど越しも良い、親子で作る自慢の「かけうどん」(770円)です。
■20年続く父子の挑戦
午前11時。この日も、開店と同時にたくさんの客がやってきました。
客:
「コシがあっておいしかったです」
別の客:
「10年くらい通っています。おいしいうどんとしか言えない」

明夫さんと賢吾さんは、今から20年前に店を始めました。明夫さんは当時会社員でした。
明夫さん:
「讃岐うどんをやりたいが、60歳になってからではできないと思って」
55歳で一念発起して脱サラした明夫さんは、故郷・香川で修行。第二の人生を“うどん職人”として歩み始めました。
明夫さん:
「20年あっという間。しんどいこともあるけど楽しい。『おいしかった』の一言が活力になります」

一方、息子の賢吾さんは当時、お笑い芸人を目指して大阪にいました。父の誘いを受け、うどん職人の道へ。
賢吾さん:
「“表現”という意味では同じ。リアクションが見られるので。舞台ではなく、うどんを通して笑顔になってもらう」
親子で歩んできた20年。
賢吾さん:
「父と思いは一緒。香川と名古屋の懸け橋になれるのは自分たちしかいない」

明夫さんが20年前に掲げた思いは、今も変わりません。
明夫さん:
「本格的な讃岐うどんを名古屋の皆さんに味わってほしい。体力をつけて90歳までやりたい」
香川と名古屋をつなぐ一杯は、きょうも親子の手で丁寧に打たれています。
