山林火災からの復興への歩みが続く中、岩手県大船渡市では災害の教訓を未来へつなごうと元消防職員の男性が防災の支援事業を立ち上げました。
東日本大震災と山林火災の対応で培った知見を生かし、各地で備えの重要性を伝えています。

千葉善博さん・51歳は、元・大船渡地区消防組合の消防職員で、防災の支援事業を手掛ける会社「サバイバルレスキュージャパン」の社長をしています。

2月18日、福島県の郡山地方消防防災協会が主催した講演会に招かれ、消防職員や一般の参加者など約250人を前に、災害への対応や心構えを伝えました。

サバイバルレスキュージャパン 千葉善博さん
「起こさないというよりは起こしにくくするということ。起こり得る災害のリスクを洗い出すことから始めて、常日頃からの点検や施設の管理を含めて、平常時からこういうことをやることが第1段階に必要なこと」

千葉さんのこうした仕事の原点は、消防として向きあった東日本大震災と山林火災でした。

大船渡市出身の千葉さんは、2025年3月、32年務めた消防を退職しました。

消防で勤務していた際は自費でアメリカに渡り、大規模災害時に対応する部隊で実戦的な訓練を何度も重ねた災害対応のエキスパートです。

会社の拠点はキャンピングカー。災害時に現地へ駆け付け、支援にあたることを想定しているからです。

サバイバルレスキュージャパン 千葉善博さん
「トイレも付いていますし、水も積むこともできるし出すこともできる。移動できる事務所と考えてこのキャンピングカーを購入した」

千葉さんが起業を決意した大きな理由の一つは、自身が救助活動にあたった東日本大震災でした。

消防などの「公助」だけでは限界があるのではないか。
多くの命が失われる中で抱いた後悔の念が、今につながっています。

サバイバルレスキュージャパン 千葉善博さん
「救助が全てに行き届くまでの難しさを感じたところがあった。『自分の身は自分で守る』という考え方を持ってもらい、そういう行動を取ることで1人でも多くの命が助かるのではと、そういう部分を強くしたいと思い起業した」

こうした思いからサバイバルレスキュージャパンでは、千葉さんの消防としての経験を生かし、学校や企業などを対象に初動対応や避難判断のポイント、それに身近な資材を活用した備えを講演する防災の支援事業を展開。

軽量の防火服や、持ち運びしやすいコンパクトなヘルメットといった防災用品の販売も手がけています。

そして千葉さんの防災への思いをいっそう強めたのが、2025年2月26日に大船渡市で発生した山林火災でした。

平成以降では最大規模の3370haが焼失。
1人が亡くなり、建物の被害は226棟に上る中、退職間際だった千葉さんも消火活動にあたりました。

サバイバルレスキュージャパン 千葉善博さん
「建物火災と違うのは範囲が広いところ、なおかつ地形や気象状況でいろいろ変化していくので、そういう対応の難しさを感じた」

この出来事を踏まえ千葉さんは退職後に再び渡米し、2025年1月に発生したカリフォルニア州の山林火災の現場を視察しました。
広大なエリアで被害を最小限にとどめる方法を改めて学んだと言います。

サバイバルレスキュージャパン 千葉善博さん
「カリフォルニア州は乾燥した地域で火災も多い。知識的なもの、技術的なものがあるのではないかと感じた」

山林火災の発生から1年経った今も生々しい焼け跡が残る大船渡市の綾里地区に、被害に明確な差が出た地点があります。

この一角は右の麓側は焼けた木が目立つ一方、左に見える頂上側は木がほとんど焼けていません。
千葉さんは、ここに山林火災の延焼を食い止める手がかりがあるとみています。

サバイバルレスキュージャパン 千葉善博さん
「この道路の幅があったおかげで、こちらの木は燃焼せず残った状態」

千葉さんによりますと、山に整備されたこうした道路は、延焼を食い止める「防火帯」の役割を果たすことがあるといいます。

アメリカでは、計画的に防火帯を兼ねた道路を山頂付近まで整備し、火の広がりを遮るとともに、消防車両が効率よく進入できるようにして、より迅速な消火活動につなげているということです。

こうした備えを国内でも多くの自治体が取り入れていくことが望ましいと千葉さんは考えています。

サバイバルレスキュージャパン 千葉善博さん
「範囲が広がれば広がるほどやることも多くなってくる。そこで先を見据えた活動の大切さを本当に感じた」

二度の大災害と海外での学び。
千葉さんが培った実践的な知見を、福島県の消防職員たちは真剣な表情で受け止めていました。

福島県の消防職員
「東日本大震災・大規模な山林火災、その経験を私たちも聞いて現場活動に生かしたい」
「海外に行って勉強してきた人の実戦的な話は消防士として勉強になった」

各地で備えの重要性を伝え続ける千葉さん。
自分の言葉が誰かの行動につながることを願っています。

サバイバルレスキュージャパン 千葉善博さん
「聞いてくれた皆さんに感じ取ってもらって、またそれを伝えてもらうことにより災害に対応できる力が増えるのかなと。大船渡だけに限らず、日本全国・世界に発信していきたい」

災害の教訓を未来へとつなぐ。
千葉さんの仕事は、地域を越えて広がろうとしています。

岩手めんこいテレビ
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