42年前に起きた強盗殺人「日野町事件」で、無実を主張したものの無期懲役の判決が確定し、服役したまま亡くなった阪原弘さん。
最高裁判所は、戦後初めてとみられる死後の再審=裁判のやり直しの開始を決定するという異例の決定を下し、阪原さんの家族は、この決定を仏前に報告しました。
この裁判のやり直しを、大津地方裁判所が決定してから最高裁が判断するまでの期間は、7年半。
長期間を要した背景には、検察側が2度にわたって不服申し立てをしたこともあり、刑事弁護にも取り組む菊地幸夫弁護士は「検察と被告の間には、大きな力の差がある。検察側の不服申し立ては一定程度制限されるべき」と主張しました。
■阪原弘さんの88歳の妻 再審開始決定に「びっくりした」
再審開始の決定が知らされたきのう=25日、阪原弘さんの息子・弘次さん(64)は午後11時過ぎに帰宅すると、起きていた母・つやこさん(88)に話しかけました。
【阪原弘さんの長男・弘次さん】「ただいま、ばあちゃん。起きてくれてるんや」
【阪原弘さんの妻・つや子さん】「おかえり。ご苦労さんです。おつかれさん、おかえりなさい」
【阪原弘さんの息子・弘次さん】「びっくりせえへんかった?おばあちゃん」
【阪原弘さんの妻・つや子さん】「びっくりした」
40年以上の月日を共に支え合い、無実を訴え続けた阪原さんの家族。異例の決定を受け、家族みんなで喜びを分かち合いました。
■「日野町事件」阪原弘さん無実訴えるも無期懲役 服役中に75歳で病死
1984年、滋賀県日野町で酒店を経営していた女性が行方不明になり、その後、草むらから遺体が発見。
さらに別の場所からは被害者の店の金庫が見つかりました。
警察は、店の常連客だった阪原弘さんを強盗殺人の疑いで逮捕。弘さんは裁判で「自白は警察に強要された」として、無実を主張するも、無期懲役が確定しました。
【体調を崩し入院していた阪原弘さん(支援者撮影・2000年)】「法律みたいなものは、私には分かりません。皆さん、私はこれからどうしたら良いんでしょうね…」
弘さんは服役中の2011年、75歳で病死しました。
■「喜ぶっていうのは結構、疲れるもんですね」と長男・弘次さん
その後、遺族らが行った再審請求。2月24日付で最高裁は検察の不服申立てを退け、裁判のやり直しを決定しました。
無期懲役以上の刑で服役中に死亡した人の再審開始決定は、戦後初めてとみられます。
弘さんの遺志を継いで、再審請求をしてから14年。家族はきのう(25日)、日付が変わるまで喜びをかみしめました。
【阪原弘さんの長男・弘次さん(64)】「喜ぶっていうのは結構、疲れるもんですね。クタクタに疲れてるんやけど、興奮して全然寝られないんですよ」
【阪原弘さんの妻・つや子さん(88)】「(弘さんも)喜んでると思う。な」
【阪原弘さんの長女(62)】「もうちょっとや。ばあちゃんも元気出して」
【阪原弘さんの妻・つや子さん】「うん。嬉しい。もうあした死んでもいいわ」
【阪原弘さんの長女】「まだ、無罪を聞かな」
【阪原弘さんの妻・つやこさん】「(弘さんの墓前に)報告しに行こうな」
■「誰が信用してくれへんでもお前らだけは信用してくれ」泣いて語った父
長かった道のりを歩んでこられたのは、譲れないひとつの思いがあったからでした。
【阪原弘さんの長男・弘次さん】「父のを無念を晴らす。無実を証明する。そういう思いがあったので、ここまでやってこられたと思います。
『誰が信用してくれへんでも、お前らだけは信用してくれ』と、あの明るい父が泣きながら言いましたから」
【阪原弘さんの長女】「棺の中の(父の)顔を見た時はもう悔しかったやろうなって。このまま(再審請求を)やめたらあかんなって。その時、私は思った」
弘さんに報告します。
【阪原弘さんの長男・弘次さん】「再審無罪に向けて走るだけやから、もうあと少し頑張ろうねって」
■再審は「開かずの扉」とも「38年やからな…」と長男・弘次さん
一夜明け、支援してくれた仲間とも喜びを分かち合いました。
【支援者】「一日も早い再審無罪を勝ち取るためにみんなで頑張りたいと思います。乾杯」
【阪原弘さんの長男・弘次さん】「みなさんいたからここまでやってこれたんですよ。(弘さんの逮捕から)38年やからな」
「開かずの扉」とも言われる長い再審への道のり。制度の在り方が問われています。
■「再審開始決定」までの長期間 背景には「検察の不服申し立て」も
日野町事件については、遺族が2012年に再審を請求し、2018年に大津地裁が再審開始を認めましたが、最高裁の判断まで7年半もの歳月を要しました。
長期化した理由としては、2018年と2023年に検察側が2度にわたって不服申し立てをしたことがありました。
国会には再審制度を見直す改正法案が提出される方針ですが、検察側の不服申し立てについては、今の制度を維持する形となっています。
■菊地弁護士「検察側の不服申し立ては制限されるべき」
菊地幸夫弁護士は、この「再審制度の見直し」について、「検察側の不服申し立ては制限されるべき」と指摘します。
【菊地幸夫弁護士】「私は検察の不服申し立ては、一定程度制限してしかるべきだと思っています。
今後始まる再審の裁判の中で、検察官に十分にその主張をしてもらえばいいのではないかと思います。
検察側と被告人側は『対等』という法律の立て付けにはなっているんですが、実際には対等じゃありません。
国家権力を背景に、強力な権力を持っている捜査側と被告人では全く力がアンバランスですよね。
そういうことも含めて考えて、検察にはやり直しの裁判で十分主張してもらって、1つ1つの判断に対しての不服申し立てというのは、制限されるべき。
検察側は証拠の開示もすべきだし、再審開始決定までにかかる時間を、例えば『何年以内をめどとして』というような努力目標を再審法の中に入れるようなことがあってもいいと思います」
(関西テレビ「newsランナー」 2026年2月26日放送)