今“世界で最も注目されるサル”といえば、千葉・市川市の動植物園で人工保育されたニホンザルの子ども・パンチ君です。

雨が降る平日の25日、多くの人でにぎわっていたのは市川市動植物園。
人工保育で育てられ、26日で生後7カ月を迎えたパンチ君。
親代わりのオランウータンのぬいぐるみと一緒にいる姿が多くの人の心を打ち、“園のアイドル的存在”となっています。

飼育員:
お母さんがいないことの障害は自分で一生懸命乗り越えていっている。

群れで過ごし始めて1カ月、時につまずきながらも奮闘する姿に、SNS上では「#がんばれパンチ」というハッシュタグが拡散し、海外メディアも数多く取り上げるなど社会現象になっています。

今や世界中が見つめるパンチ君の未来。
群れになじめる日はいつになるのでしょうか。

25日、パンチ君はサル山のくぼみで他のサルとともに雨宿り。
餌やりの時間になると一目散に飼育員のもとに向かう甘えん坊の赤ちゃんザルです。

園が公式Xにオランウータンのぬいぐるみと過ごすパンチ君の様子を投稿すると話題が沸騰。
例年のこの時期と比べ、来園者が2倍になるなど“パンチフィーバー”が巻き起こっています。

その影響は海を越え、アメリカ・ホワイトハウスや海外メディアも取り上げるほど。

人気となった背景には、母ザルによる育児を受けられなかったその生い立ちがありました。

2025年7月26日に生まれ、名前の由来は「モンキー・パンチ」のパンチ君。

母ザルは初産で、かつ真夏の出産ということもあり、体力を消耗しぐったり。
パンチ君を育てる力が残っていませんでした。

園は飼育員による人工保育に切り替えますが、パンチ君が生まれた数日後、ある出来事が。

人工哺育を行った飼育員・鹿野紘佑さん:
お母さんが気にするようになって、(パンチ君を)見に来るようになった。

そこで一度、母ザルのもとにパンチ君を返し、反応を見ることにしたといいます。

人工哺育を行った飼育員・鹿野紘佑さん:
お母さんに1回返したこともあったんですけど、1カ月時点で。でもミルクが出なかったのでパンチがドンドン弱ってしまって…。

ところが、母ザルから母乳が出ることはなく、やむを得ず人工哺育を再開。
現在、母ザルは我が子への認識が薄れ、同じサル山にはいるものの、パンチ君とコミュニケーションを取るなどの行動は見られないといいます。

幼いパンチ君には“母親代わり”が必要。
そこで飼育員の目にとまったのが…。

市川市 動植物園課・安永崇課長:
オランウータンのぬいぐるみがこちらの観葉植物のところに飾ってあった。イメージとしてはこのような感じで、この部屋(なかよしルーム)に飾られていた。

キリンやペンギンのぬいぐるみ、タオルなどを試し、パンチ君が気に入ったのはオランウータンのぬいぐるみだったといいます。
今では「オランママ」と呼ばれています。

実は、この園でぬいぐるみとともに群れに戻ったサルはパンチ君が初めてではありません。

2008年に生まれたメスのオトメ。育児放棄により人工哺育で育った先輩ザルです。
母親代わりとなっていたのは、クマのキャラクターのぬいぐるみでした。

1歳2カ月ほどで“ぬいぐるみ離れ”すると、群れにも慣れていき、出産も経験。
現在は4匹の母で、孫もいるおばあちゃんザルです。

人工哺育を行った飼育員・鹿野紘佑さん:
サルと僕たち人間との距離感の詰め方とかもいろいろ教えてもらった。

ただ、群れになじむうえでは思うようにいかない場面も。

当初、パンチ君はぬいぐるみを持っていたことで仲間から警戒されていたといいます。

人工哺育を行った飼育員・鹿野紘佑さん:
最初のころとかは特にぬいぐるみを引きずってくるパンチが来たら離れていく。えたいの知れないものが引きずられてくると、「何だこれ」という感じになる。

2月15日の映像では、パンチ君は仲間とは距離を置き、1匹で「オランママ」に身を寄せることがしばしば。

いざ、勇気を出して仲間のそばへ向かうも、無視され、相手にされないような場面もありました。

しかし、あれから10日、少しずつ変化が。

天候の影響などもあるのでしょうか、「オランママ」の姿はありません。
パンチ君が他のサルにぴったりとくっつく様子や、駆け寄っていく様子などが確認できました。

パンチ君の成長について来園者は「頑張って仲間に入らせてもらって、元気よく育ってほしいです」「まだオランママを引きずっている姿を一度見たいなと思う」「いつかは離れないといけないと思うので、頑張ってほしい」と話しました。

まだ時折、飼育員にくっつくことはありますが、特にこの数日の成長は目をみはるものがあるといいます。

人工哺育を行った飼育員・鹿野紘佑さん:
僕たちのゴールは群れに戻すことだったので、人間につきすぎると群れに戻るのが難しくなるというのがあるので、そんなにめでたりとかコミュニケーションを深く取ろうという感じはとらないよう心がけている。

中でも専門家が注目した行為が、パンチ君が他のサルに毛づくろいしたり、反対に毛づくろいしてもらったりする場面。

この毛づくろいが、育ての親のいないパンチ君の今後の交友関係の鍵を握るといいます。

京都大学大学院理学研究科・中川尚史教授:
毛づくろいは重要な知能的な交渉の一つですから、そこは1つキーになると思う。血縁者が多いと血縁者だけでまとまって、非血縁者とお付き合いをしない。むしろ血縁者がいない分、いろんなサルと毛づくろいしたり、けんかもせず付き合うことが割とある。

少しずつ群れになじみ始めたパンチ君。
「オランママ」に頼ることなく生活できるその日を世界中が見守っています。