日本女子フィギュアのリーダー的存在でもある銀メダル・坂本花織選手について、元フィギュアスケート日本代表の中野友加里さんと見ていきます。
三宅正治キャスター:
中野さん、あらためて坂本選手の有終の銀メダル、どんなふうにお感じになりましたか?
中野友加里さん:
いや、本当に込み上げるものがたくさんあったと思うんですけれども、その裏にはやはり表情のトレーニングだけではなくて、きっと栄養面、バランスを考えられた食事だったりだとか、それの裏には体型の維持、さらには陸上トレーニング、そしてプラスで当たり前となっている表情のトレーニングというものがあったと思うので、今までの努力がすべてここに詰まっていて、その終わったあとに思いがすべてあふれた涙じゃないかなと思います。
三宅キャスター:
坂本選手は3大会連続のオリンピック出場ということで、今回は女子フィギュアはもちろんなんですけども、日本フィギュア界を引っ張っていくようなリーダー的存在のような気がします。
中野友加里さん:
本当にそうだと思います。今までフィギュアスケートが、私のころはまだマイナースポーツだったんですけれども、メジャースポーツに駆け上がっていて、先輩スケーターたちがつないでくれたバトンをまた、坂本選手がつないで、そしてさらにこの先、きっと若手の選手につないでいくと思いますので、素晴らしい橋渡しができたかなというふうに感じています。
宮司愛海キャスター:
自分も試合が控えているのに、ほかの選手たちの応援に必ず駆けつける、なかなかできることじゃないですよね。
中野友加里さん:
そうですね。そこまでの余裕と気配り、そして彼女の持っているキャラクター、すべてが素晴らしい人柄があふれているなというふうに見ていて感じました。
三宅キャスター:
今回の坂本選手のフリーなんですが、連続3回転のミス以外はほぼ完璧だったと思うんですが、中野さんがその中でも一番よかったポイントに挙げたのが「抜群の安心感」。
中野さん、解説をお願いします。
中野友加里さん:
やはり見ていて、この重みのあるスケートも、本当ベテランの風格も、立った瞬間に本当に「女王です」みたいな感じのこの圧倒される力っていうんですか、もう彼女の持っているこのパワーが、パワフルさの中に、そして繊細さもある。このスケートの技術っていうのが、やはり彼女の安心して見ていられるポイントかなというふうに挙げられますし、一番の本当に安心して見られる点は、やはり1つ1つの要素の出来栄えの完成度ですね。そこはやはり点数にも表れていますので、そういったところは日頃の努力、これが本当に表れているのではないかなと思います。
青井実キャスター:
ただ金メダルのアリサ・リウ選手との得点って1.89だから、本当にわずかの差ですよね。
三宅キャスター:
それをちょっと見ていきたいと思います。これからナショナル級審判員の資格を持つ中野さんにくわしく解説していただきたいと思います。
今回のフリーの坂本選手の演技ごとの得点なんですが、前半は完璧な演技だったんですけれども、後半の本来連続3回転、トリプルフリップ、トリプルトーループが、トリプルフリップの単発になってしまったということでですね。このジャンプは前半でもやっているので、“リピート”ということになってしまい、減点対象となって基礎点が4.08になった。だからここで連続3回転ができていれば、リウ選手を逆転できたということになるのかなと思いますが。
中野友加里さん:
ここはやはり2つのジャンプ、同じジャンプを繰り返してしまうと、2つ目のジャンプが基礎点の70%になってしまうというルールがありますので、こちらの点数になっているんですけれども、いろんな思いがあったんじゃないかなと思います。ジャンプだけを見ていますと、普段の坂本選手よりも少し高さが足りなかったかなということで、やや前傾姿勢で降りてきたことによって、後半のコンビネーションにつなげられなかった。なんですけれども、おそらくここがすごく悔しいポイントになってくるのではないかなと私は感じています。
三宅キャスター:
ただその失敗を挽回するチャンスもあって、最後の単発のトリプルループ、これにジャンプを連続でつければどうだったでしょうねって感じがするんですよね。
中野友加里さん:
“たられば”の話にはなってしまうんですけれども、いろいろ考えてたと思います、滑りながらどうすればいいのか。ただ普段やっていることと違うことによって、もしかしたらコンビネーションをつけることによって、最後に跳んだトリプルループからのコンビネーションをしたことによってバランスを崩す可能性も本当にわからないので。それならば普段と違うことをせずに流れを崩さずいくことによって、連続性をともなったプログラムに仕上げ、そしてそのあと、後半2つ残っていたスピンにレベル4をしっかり取ることができていますので、いろんな坂本選手の思い・考え方があったのではないかなとは思います。
青井キャスター:
滑りながら選手たちはそういうことを考えながら滑ってらっしゃるということですね。
中野友加里さん:
そうなんですよ。1つもし、万が一、本当はミスはしたくないんですけれど、ミスをしたところで、どこでコンビネーションやミスしてしまったところを補っていくかというのを、頭で計算や構成を考えながら、パターンを何度もやりながら、表情はついているんですけれども、滑っています。
三宅キャスター:
彼女が優先したのは、ジャンプうんぬんというよりも、作品としての世界観というか、彼女がすごく大事にしているものだったのかなという感じもするんですけど。
中野友加里さん:
そうですね。でも本当にレベルの高いプログラムだったと思いますし、ジャンプ以外の要素でもスピン、ステップなどではきちんとレベル4を取れていますので、そういったところもやはり大きな得点源になっているかなとは感じています。
三宅キャスター:
試合後のあの場面についても聞きたいんですが、涙する坂本選手を「りくりゅう」ペアやあるいは鍵山選手らが寄り添う様子も見られて、三浦選手も涙目だったり、日本のチームワークの良さを感じる場面だったんですが、坂本選手はやっぱり、人柄がこういう空気を作り出したんですかね。
中野友加里さん:
そうですね。やはり本当はおっしゃってましたよ。「ビビってる」っておっしゃってましたけど、なかなかそういう言葉って口にできないと思うんですよ。いろんなものを背負っていて、背負わなきゃいけない部分でも吐き出したい部分、いろいろあると思うんですけど、その言葉にすることで、少しもし軽くなるかもしれないので、そういったところもすごくこうやって言葉にしてくれるのも坂本選手のいいところだなと思いますし、本当に仲間をけん引してくれてきた、本当に引っ張ってきてくれたので、この日本チームのリーダー的存在、お姉さん的存在というのが本当にぴったりだなというふうに思います。
(「イット!」2月20日放送より)