特集は長野駅前に店を構えて40年、飲食店のマスターです。新幹線開業、長野五輪、そしてコロナ禍。時代が変化する中、店を守り続けてきたマスター。その秘けつは「新たな挑戦」と「変わらないこと」の両立だと話します。
■長野駅前で愛され40年
オムライスグラタンを注文した客:
「しつこくもなくて、さっぱりしていておいしいです」
ランチ営業は満席。
常連客:
「(雰囲気が)入りやすかったりとか、そういうところがいいかなと思います」
夜の営業も多くの客でにぎわいます。
長野駅前の地下にあるビール専門店「winds」です。
店は2026年で創業40年を迎えます。
マスターの田中正之さん66歳。
windsマスター・田中正之さん:
「ウインズのビールはね、キャッチフレーズは『おいしいビールは見てわかる』。7対3くらいの割合でビールとしては泡が命」
オープンから「マスター」を務め時代が大きく変わる中、店を守り続けてきました。
windsマスター・田中正之さん:
「日々続けて努力ですよね。特別なことをしたらだめだと思います。ただ続けるっていうことが大事だと思う」
■全国で唯一残るアンテナ店
ウインズは1986年7月オープン。
もともと、東京や大阪などにも開店した大手ビールメーカーのアンテナショップ「ウインズ」の1店舗でした。
今でも残るのは長野だけだということです。
田中さんは旧信州新町の出身で高校卒業後に飲食業界へ。
そして、当時のオーナーからウインズの「マスター」を任されました。
田中正之さん:
「人と接したり、お客さんに『おいしいね』って言われるのがうれしかったり、そういうことから入ったと思います」
■“バブル崩壊”を乗り越えた名物
ビールはもちろん、料理にもこだわりました。
創業当時は「イタリアン」がメイン。
どこか懐かしく盛りが良いナポリタンは今も看板メニューの一つです。
田中正之さん:
「その当時、人気のあるお店のものを研究して、それを維持して続けるってことですね」
オープン当初はいわゆる「バブル」の時代。
好景気に沸き店も好調でした。
しかし、1990年代に入るとバブルが崩壊。
日本全体が不景気となります。
■人生で一番働いた長野五輪
ただ、長野にはその後、ビッグイベントが。
田中正之さん:
「昔、あそこに岩山があったの知っている?『仏閣』があってね。その次はセンターあたりに入り口があって」
1997年、長野新幹線が開業。
仏閣型の駅舎も建て替えられ街は移り変わっていきます。
そして1998年、長野五輪。
田中正之さん:
「一番、人生で働いたというと、長野五輪ですね。(当時は)12時からオープンして、お昼、その時間帯は日本人と外国人の混合でお店がいっぱいになるくらい。大体60人くらい入ってきて、午後11時くらいまでずーっといっぱいです。私の五輪はお店だったんですよ、他に出られないから」
今でも店には多くのピンバッジが飾られています。
■五輪で磨いた接客英語
田中正之さん:
「I have Japanese lunch menu. Please looking」
現在、インバウンド客が増える中、長野五輪の時に勉強した英語が役に立っています。
田中正之さん:
「Taste?」
客:
「Good very good !」
田中正之さん:
「ビジネス英語です、最低限のレストランの。最低限のことはやらなくちゃいけないというところからスタートした」
■地元食材で生き残る
さて、長野五輪が終わると客足は減少傾向に。
そこで力を入れ始めたのが、信州サーモンやジビエなどの「地元の食材」です。
田中正之さん:
「われわれが生き延びるためには料理メニューとかね、いろいろ研究して。大きい大型チェーンとか来るにあたって、ここだけの独自なものをということで食材を考えたり」
「信州サーモン」は県内でもいち早く取り入れました。
県からもアピールに力を入れたとして感謝状が贈られたそうです。
■コロナ禍の危機と新たな挑戦
平成から令和の時代へ。
店に最大の危機が訪れます。
「コロナ禍」です。
店を維持するためにテイクアウトメニューに力を入れ、さらに、2021年には善光寺門前にあえて「パン店」と「カフェ」を新規オープン。
「挑戦」を続けました。
田中正之さん:
「やめたって言えれば一番、楽だと思った。何もやらなかったらそこで終わり、止まっちゃう。常に前向きに少しずつ、少しずついけるところまで行くのが大事」
そして、今、店は以前のようなにぎわいを取り戻しつつあります。
コロナ禍が終わり客足が戻ったこと、そして、パン店も軌道に乗ったことで店を守ることができました。
田中正之さん:
「にぎやかになって人の声、『おいしかったよ』とか聞くとうれしいというか、本当に良かったです」
■挑戦の裏にある「変わらない」
この40年、時代に合わせ挑戦を続けてきた田中さん。
一番大事にしていることがあります。
それは「変わらない」こと。
挑戦とは矛盾しているようにも感じます。
新たなメニューを考案しても創業当初からの看板メニュー「ナポリタン」の味は変えない―。
店の雰囲気、そして田中さん自身の思いも変えない―。
田中正之さん:
「長く付き合っていただいているというのが自分としては(ありがたい)」
常連客(開店当時から):
「40年くらいになる」
常連客:
「気さくでしょ、こうやって酔っていてもみんな受け入れてくれるし、気持ちよく飲める」
田中正之さん:
「楽しんでいただくのが大事ですから」
田中正之さん:
「私の考えなんですけど、10年前、20年前にここによく来てたんだよっていうお客さんはもう常連だと思うんですよ。その方たちが(再び)来たときに、まあ最初に懐かしいね、変わってないねって。店長も変わんないねって言われるのがやっぱりうれしいし、メニュー見たときに『あ、これ昔あったよね』とか、そういうところからつながってると思います」
■これからも長野駅まで客迎える
変化する時代だからこそ「変わらない店」が必要だと感じている田中さん。
これからも長野駅前でお客を迎えます。
windsマスター・田中正之さん:
「愛されるというか、飽きられないで来た時の懐かしさが大事だと思っている。まだまだ続けていかなきゃいけないと思って、お客さんの楽しい顔、おいしそうな顔を見て、頑張っていきたいと思います」