国内で1年間に報告された人工妊娠中絶件数は12万6734件、1日あたり約350件にのぼる。その背景には避妊の失敗や知識不足、性暴力など様々な事情がある。こうした望まない妊娠を防ぐ選択肢として「緊急避妊薬」が注目されている。今月から医師の処方箋なしに薬局で購入できるようになったが、その販売体制や未成年への対応など課題も残されている。

処方箋なしで購入可能に、富山県内87店舗で販売

国内初の市販薬として発売された緊急避妊薬「ノルレボ」は、性行為から72時間以内に服用することで妊娠を8割程度防ぐとされる。これまでは医師の処方箋が必要だったが、今月2日からは処方箋なしでも購入できるようになった。

富山県内では研修を受けた薬剤師がいる87の薬局・ドラッグストアで販売されている。ウエルシア富山天正寺店もそのひとつだ。



緊急避妊薬は店頭には並んでおらず、購入には薬剤師に直接意思を伝える必要がある。伝えづらい場合はスマートフォンの画面を見せることでも対応可能だ。購入できるのは女性のみで、パーティションで仕切られたプライバシーに配慮した空間に案内される。
服用にはチェックシートの記入と薬剤師の判断が必要



購入希望者は性行為の日時や持病の有無などをチェックシートに記入し、薬剤師が服用可能かを判断する。問題がなければその場で薬を服用するのがルールとなっている。また、服用から3週間後には妊娠検査薬や医療機関受診による妊娠の有無確認が必要だ。

ウエルシア富山天正寺店の薬剤師、河西凌香さんは「土日や祝日でも店舗によっては開いている。悩んでいたら電話でも相談できるので1人で抱え込まず薬局に電話してほしい」と話す。
ノルレボの価格は1錠7480円。親の同意は不要で年齢制限もない。
「薬剤師による対面販売」の重要性と未成年への対応課題

産婦人科医の種部恭子さんは、薬剤師が対面で販売することのメリットについて「緊急避妊薬という言葉を知っている人は多い。ネットで買う人もいる。ネット上で売られている不確かなものを使っている人たちが薬剤師のもとで使う。背景に暴力があることやそれ以外の選択肢があることなど情報を手に入れることができる」と説明する。
一方で、未成年への販売については課題があると指摘する。人工妊娠中絶をした10代は年間1万人ほどにのぼり、その中には性暴力被害も潜んでいるという。

「例えば12歳の女の子が薬をくださいと言って薬局に来たら販売できる。とても心配しなくてはいけない状況で、子どもの権利が守られていない。販売するだけで終わりとは思えない」と種部さんは懸念を示す。
緊急避妊薬は「入口」、薬剤師と関係機関の連携が重要

緊急避妊薬を購入する際のチェックシートには、親やパートナーから暴力を受けていないかなどの聞き取り項目がある。種部医師は、こうした情報に触れる薬剤師と児童相談所などとの連携強化が重要だと強調する。
「緊急避妊薬は入口。必要とする時点で何かのリスクにさらされている。安全装置も準備したうえで心ある薬剤師がこの後の選択肢や情報を提示する」と種部さんは話す。
緊急避妊薬がどこの薬局で販売されているかは厚生労働省のホームページで確認することができ、県薬剤師会は緊急避妊薬の在庫や対応できる薬剤師がいるかを事前に電話で確認してほしいと呼びかけている。
緊急避妊薬の市販化は望まない妊娠を防ぐ選択肢を広げる一歩となったが、特に若年層への適切な対応や関係機関との連携など、今後の運用にはさらなる検討が求められている。
(富山テレビ放送)
