北方領土で観光ツアー? 返還問題を考える前にまずは行ってみた

カテゴリ:ワールド

  • プーチン大統領が年内に日露平和条約を結ぶことを突然提案
  • 日露共同経済活動の一環として観光ツアーを提案
  • 北方領土ってどんなとこ?

日露共同経済活動は観光ツアー?

2018年9月日露首脳会談

北方領土返還問題が揺れている。
プーチン大統領は、今年9月、突然に前提条件なしで日露平和条約を年末に結ぶことを提案した。安倍晋三内閣総理大臣は、北方領土問題の進展を拉致問題の解決とともに、優先すべき外交課題に位置付けているが、即答が出来る提案ではない。。

日露政府間では、北方四島における共同経済活動を行うことが合意されており、具体的には、観光、水産養殖、農産物のハウス栽培、風力発電、ごみの少量化の5項目が検討されている。

2018年10月、共同経済活動に向け、派遣された現地調査団が、ロシア側に対し2019年に観光ツアーを実施することを提案していた。提案した観光メニューは、船で択捉島、国後島、色丹島を訪れ、船上から歯舞群島を望む5泊6日のコース。船上からのホエールウオッチングを楽しみながら国後島を訪れる2泊3日と1泊2日のコースの3種類だ。

ビザなし交流専用船で4時間の旅

知床から望む 国後島

では、北方領土観光には、どのような魅力があるのだろうか。国後島の紹介をしてみたい。
北方四島の玄関となる国後島・古釜布港と日本側の出航港の根室港との距離は約40キロメートル。北方領土ビザなし交流専用船「エトピリカ」で4時間の船旅だ。

根室を出航して1時間後には、イルカが姿を現す。筆者は、これまでに6回、北方領土を訪問しているが、毎回、根室湾で飛び跳ねるように泳ぐイルカの姿を見た。時折、クジラも姿を見せることもある。より多くのクジラを見たいのであれば、半日かけて国後島と知床半島に挟まれた海域まで足を延ばすとよい。運が良ければマッコウクジラだけではなく、シャチに出会うこともある。

戦争の爪痕が残る風景

カラフルな色彩の建物が立ち並ぶ街の風景

国後島に上陸すると、ぼろぼろになった第二次世界大戦頃に使われた戦車の残がいが出迎える。舗装された道路を車まで5分ほど走るとロシアの田舎風の町並みに入る。黄色、緑、赤、カラフルな色彩の建物が多く、どんよりとした霧が立ち込める時間が多い景観にアクセントを与えている。

町の中心にある役場前の広場には、レーニンの胸像が据え付けられ、島が旧ソ連邦により奪われたことを思い起こす。

教会を中心に作られた街

ロシア正教教会

まずは、役場の近くにあるロシア正教の教会を訪れる。建物の中には、数多くのイコンが飾られ、古典的なキリスト教の世界を感じさせる。教会の尖塔の窓から、古釜布の町を一望することができる。教会と役場を中心に町が形成されているのであろう。

教会の内部

教会の参道のような道路の両側には、プレハブ作りのような商店が軒を連ねる。品数は少なく、しなびたリンゴや皮の堅そうなトマトが並んでいる。ただし、ウオッカとピクルスの品ぞろえだけは豊富だ。日本人の土産には、ウオッカと埃の被ったマトリシュカ、いつ作ったか定かではないチョコレートぐらいだろうか。

教会の尖塔から見える街並み

国後島の海岸は、切り立った崖や海上にそびえる「ろうそく岩」。多様性があり美しい。
島の西岸の砂浜から望むことができる「知床半島」は、一見に値する。ちなみにこの海岸では、Docomoの携帯電話もつながる。

国後島から望む知床半島

島は自然の宝庫

泊山のカルデラ湖や島内に数か所ある滝など自然の景観を楽しむことができる場所が数多く存在している。島の北半分は、自然保護区になっていてロシア人も原則立ち入り禁止になっている。保護区内には、ヒグマが300頭ほど生存している。その中には、毛の色が白いヒグマもが1割ほどいるようだ。国後島は自然の宝庫である。いずれ、知床半島の世界自然遺産に組み入れられることもあり得るだろう。

また、島東部にある標高1822メートルのチャチャ岳の美しい姿は、天気の好い日には根室半島からも望むことができる。

食は、ボルシチやピロシキ、サケのハンバーグなどのロシア料理だが、日本人が行くとなるとウニ、毛ガニ、ハナサキガニなどの海産物を食べさせる店も出て来るだろう。

島内には、温泉もある。また、博物館があり地下に眠る数千年前の遺跡からの出土品も展示されている。観光シーズンは7月から10月までと短いが、日本人が楽しめる観光地としては、うってつけだろう。

将来的には、国後島の南端の「泊」の町に港が利用できるようになると、野付半島あたりから約20キロ。30分程度で行くことができるようになる。

ただし、日本の領土でありながらロシアにより占領されている土地であることを忘れてはいけない。日本の主権を蔑ろにしないような観光マナーが求められる。

(執筆:海洋経済学者 山田吉彦)

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