「キモカワ」でポスト安倍の最有力?石破茂の強みとアキレス腱【自民党総裁選】

  • 「キモカワ」石破人気の実態 
  • 20人の小派閥「石破派」の強みと弱み
  •  石破―進次郎の最強タッグは組まれるか

なんだかクセになる「キモカワ」人気

人気アニメ「ドラゴンボール」の強力キャラクター「魔人ブウ」のコスプレをして照れくさそうな、「キモカワ」の極みともいえる人物。

地元・鳥取で撮影されたこのパンチ力満点の姿でネットの話題をさらった男性こそ、世論調査で「次の総理にふさわしい人物」としてたびたび安倍首相を上回る評価の自民党・石破茂元幹事長だ。自身のブログで「(コスプレは)やや当惑気味でした」と語ったものの、まんざらでも無さそうだ。

石破氏といえば、カラオケではキャンディーズを完璧な振付で歌いこなし、鉄道や自動車、軍事を語りだしたら止まらない。永田町の事務所にはプラモデルがずらりと並んでいるなど、幅広いマニアとして知られる。さらに、石破氏がテレビに出るとネコが興奮するという都市伝説まである。
無論、石破人気はマニアやネコにとどまらない。
去年の衆院選では、街頭演説の際に写真撮影を求める若い女性の列がしばらく消えなかった。列の中からは「石破さんだ!かわいい!」と言った声も聞こえた。テーマパークのキャラクター顔負けの人気ぶりだ。その「なんだかクセになる」キャラクターを売りにした有料LINEスタンプも話題を呼んでいる。

こうした人気を背景に石破氏が、秋の総裁選挙で魔人ブウ級の破壊力を見せつけられるかが注目されている。


「20人目の推薦人に、俺がなる!」

石破氏が会長を務める派閥「石破派」は現在、石破氏を含め20人。

2012年の総裁選では決選投票で安倍首相に負け涙を呑んだ石破氏だったが、3年後の2015年9月、「石破茂を総理に」という強い思いを持ったメンバーが集まって派閥を結成。
禅の世界での言葉にちなんで「水に映る月」や「月を映す水」のように「無私・無欲で世の中のために尽くす集団になる」との意味を込めて、「水月会」と名付けた。
「自民党内は常に自由闊達な議論が行われるべき」とする石破氏の精神の下、時に党執行部に対しても、歯に衣着せぬ物言いの熱い政策集団だ。
「俺たちは“石破が趣味”だ」と述べる派閥幹部は、石破氏の売りは「清廉なところ」「愚直な汗だ」と強調。「いよいよ総裁選が迫る中でメンバーの士気が高まっているのは間違いない。最近さらに結束が強くなっている」と笑顔を見せる。

ただ、総裁選への出馬には「20人の自民党議員の推薦」が必須なのだが、石破派のメンバーは石破氏を除くと19人であと1人足りない。
この状況を石破氏に近い人物は「19人という数字が絶妙なバランスだ」と前向きに受け止めている。その心は、「あと1人足りないと、俺が最後の推薦人になってやる!」と判官贔屓で手を上げたくなる人間の心理だという。
実際、石破氏が2011年に派閥横断的に立ち上げたグループ「さわらび会」の今年1月の勉強会には石破派以外からも17人の議員が参加し、その場で「俺は石破を必ず応援する」と公言する議員もいた。推薦人集めについて問題はないとみられる。


「インディペンデントでサステナブルな国づくり」

石破派は頻繁に外部から講師を招いての勉強会を行っている。今年1月には派のメンバー全員がそれぞれの専門分野に関して執筆した政策本を発売するなど、精力的に「政策集団としてのスタンス発信」に取り組んでいて、派閥の結束力は抜群といえる。

では、総裁選ではどんな政策を掲げるのだろうか。

約2年半前の水月会結成時から、石破氏が一貫して謳ってきたのは「インディペンデントサステナブルな国づくり」( = 自立した、持続可能な国づくり)だ。
石破氏は「自分が思う憲法改正と集団的自衛権が出来たら、いつ議員を辞めてもいい」と強い思いを周囲に述べている。この「安全保障」「憲法改正」の部分こそ「インディペンデントな国づくり」の中核だ。
一方の「サステナブルな国づくり」とは何か。
経済財政分野について派閥の政策担当者は「アベノミクスの基本的政策は継承した上、地方創生大臣時代の経験を活かした経済再生、つまりは地方創生を核とした経済政策が大事」と述べる。持続可能な経済財政運営を地方創生で成し遂げるのがサステナブルな国づくりの中核だ。
こうして見ると、石破氏が過去に防衛相と地方創生相に就任したことは、来るべき時に備えて政策の周到な準備を重ねてきたことの証左ともいえる。



進まない国会議員の支持拡大

一方で、課題としては、議員票の拡大に苦慮している点がある。

現時点で安倍首相3選を支持する派閥が、細田派(94人)、麻生派(59人)、二階派(44人)と3派閥200人規模なのに対し、石破氏支持を打ち出している他の派閥はゼロで苦しい状況が続いている。

党内からは石破氏について「“選挙というのは握った手の数や歩いた家の数しか票はでない”と石破氏はたびたび口にするが、なぜ議員相手となると同じ手法ができなくなるのか」と、議員の支持拡大に向けた取り組み不足を指摘する声が出ている。
また「安倍総理が困っている時に、常に後ろから鉄砲を打ち込む形で、批判ばかりする石破氏は信頼できない」との厳しい声も出るなど、石破氏への冷ややかな空気もある。
石破氏は、総裁選で勝つためには早急に議員票獲得に向けた対策をたてる必要がありそうだ。


6年前のリベンジなるか?

石破―進次郎の最強タッグは誕生するか

こうした中で石破派が熱視線を送るのが、圧倒的な国民人気を誇る小泉進次郎氏だ。

2012年の総裁選では、選挙前には明言しなかったものの、選挙後に石破氏に投票したことを明らかにし、話題を呼んだ。今回の総裁選でも「石破氏を支持してくれるのでは」と石破派内からは期待の声も挙がる。今年1月に進次郎氏は報道陣に対し、次期総裁について「国民の信頼を得られる、そういったリーダーが良いですよね」と語っていて、世論調査でも人気の高い石破氏はその有資格者だと言える。
同時に進次郎氏は安倍一強と言われる状況に「コロコロ総理が変わるよりよっぽどいい」と、安倍首相3選に理解を示すような発言もしている。



しかしその後、森友文書の書き換え疑惑をはじめ、安倍政権では不祥事が相次いでいる。進次郎氏は、政府の対応に苦言を呈しているが、今、その本音やいかに…。石破氏にとっては進次郎氏のハートを掴めるかが、大きなカギとなりそうだ。その行方に注目したい。

(政治部 自民党担当 森本涼)

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