マークを着けていても「席を譲れ」

赤地に白の十字架とハートが描かれたマークをご存知だろうか?

これは「ヘルプマーク」といって、外見から分からなくても援助や配慮を必要としている方々が、周囲に配慮を必要としていることを知らせるマークだ。

しかし、先日SNS上で、難病を抱えているという若い女性が、ヘルプマークをつけて電車で席に座っていたら高齢者から「席を譲れ」と強く言われた、という投稿が物議を醸した。

「ヘルプマーク」についてはこうした書き込みが度々されているが、マークを作っても認知度が低いと周囲の理解は得られない。

例えば、一般的に電車の優先席は、高齢者や体の不自由な方が優先的に座る場所で、この付近では携帯電話の電源を切るよう促されている。
高齢者や妊婦、松葉杖を使用している方であれば、見た目で判断できるので席を譲りやすいが、内部障害を患っていたり、目に見えないところに病気を抱えている人に対しては、自己申告がない限り、周囲の理解は得づらいだろう。

見た目では判断できないが、気づいてほしい。そんな方々を救済するべく誕生したのが「ヘルプマーク」なのだ。

 
 
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東京都が作成 実は6年前からあった…

ヘルプマークは、義足や人工関節を使用している方、内部障害や難病の方、または妊娠初期の方など、外見からは判別できなくとも、援助や補助・配慮を必要としている方々が、周囲の方にその旨をそれとなしに知らせることで、援助を得やすくなるよう、2012年に東京都が作成したマークで、2月5日現在、東京をはじめ19の都道府県で導入されている。

都内では、
・都営地下鉄各駅(押上駅、目黒駅、白金台駅、白金高輪駅、新宿線新宿駅を除く)駅務室、
・都営バス各営業所
・荒川電車営業所
・日暮里・舎人ライナー(日暮里駅、西日暮里駅)駅務室
・ゆりかもめ(新橋駅、豊洲駅)駅務室
・多摩モノレール(多摩センター駅、中央大学・明星大学駅、高幡不動駅、立川南駅、立川北駅、玉川上水駅、上北台駅)駅務室(一部時間帯を除く)
・東京都心身障害者福祉センター(多摩支所を含む)
・都立病院
・公益財団法人東京都保健医療公社の病院
 等の場所でヘルプマークを配布している。

 

「初めて声をかけてもらった」体験談に共感

まだまだ認知度の低い「ヘルプマーク」だが、少しずつ浸透してきているのか、4月2日に投稿された書き込みは、初めて気づいてもらえてうれしかった、というものだった。

本日、青森駅で「何かお手伝いできることはありませんか?」とお声がけくださった女子高生らしきお方へ。私がこのマークをつけはじめて数年経ちますが、初めて声をかけていただきました。
あなたのおかげで「ヘルプマークをつける意味」が、0から1になりました。
本当にありがとうございました……!

 
 

投稿した新坂時深さんに話を聞くと、今回、声をかけてもらった際には、具体的な援助が必要なシーンではなかったが、ヘルプマークを2年間つけていて、声をかけられたのは今回が初めてとのことだった。その時の状況を教えてくれた。

新坂 時深さん:
実際に声をかけていただいた時の状況としては、あまりにもうれしくて最初は「いえ、今は…」で言葉につまり、その後なんとか“初めて声をかけていただけた”こと、“今そうしてお声がけいただいたことが、とてもうれしく幸せである”ということを、伝えさせていただきました。

「ヘルプマーク」を見かけたら…

電車やバスなどでは席を譲ろう
外見では健康に見えていても、疲労が蓄積しやすかったり、吊り革につかまり続けるなど同じ姿勢を保つことが、ひどく困難なケースがあるので席を譲るなどの配慮を。また、外見からは判別できないため、優先席に着席している場合、ヘルプマークの存在を知らない人が不審な眼差しを向けて、ストレスを与えてしまうこともある。

駅や商業施設等で、声をかけるなどの配慮を
交通機関の事故等、突発的な出来事に対して臨機応変に対応することが困難な方や、立ち上がる・歩く・階段の昇降などの動作が困難な方がいる為、積極的に声をかけるなどの配慮を。

災害時は、安全に避難するための支援を
視覚障害や聴覚障害等の為、状況把握が難しい方、肢体不自由等、自力での迅速な避難が困難な方がいるため、震災や津波などの災害時は安全に避難するための支援が必要。
(東京都福祉保健局ホームページより)
 

さらなる普及へ…全国共通のマークに

東京都によると、2020年東京オリンピック・パラリンピックに向け、外国人観光客にもより分かりやすい案内用図記号とするため、去年7月にJIS(案内用図記号)が改正され、ヘルプマークも追加された。
これにより、ヘルプマークが全国共通のマークになったため、今後、より一層の普及や認知度の向上が期待される。 

ヘルプマークをつけている人にとっては、“気づいてもらえること”そして“声をかけてもらえること”が支えになる。ヘルプマークを知っている誰かが、声をかけることで、ヘルプマークを知らない人が知るきっかけにもつながる。

プライムオンライン編集部
プライムオンライン編集部

FNNプライムオンラインのオリジナル取材班が、ネットで話題になっている事象や気になる社会問題を独自の視点をまじえて取材しています。