安らかな旅立ちへ・・・「望まぬ患者に蘇生活動をしない」救急隊の新運用スタート

カテゴリ:国内

  • 東京消防庁は12月16日から一定の条件がそろった、場合心肺蘇生を行わない
  • これまでは現場の救急隊は現場に到着すれば心肺蘇生を行わなければならなかった
  • 個人の意思を尊重し安らかな最後を迎えるために最大限配慮する

東京消防庁が始める新たな運用

東京消防庁は12月16日から、末期がんなど人生の終末期にあり延命治療を望まない患者に対して、医師の指示などがあれば救急隊が心肺蘇生や搬送を行わない、新しい運用を始める。
すでに自治体によっては、条件を定めて、搬送を中止している例もあるが、これほど人口が多い大都市で一律の運用を行うのは東京消防庁が初めてだ。

東京消防庁では、これまで救急隊が119番通報を受け、現場に到着し、心肺停止の傷病者がいれば、社会死(蘇生が不可能な状態)であると判断される場合を除いて、心肺蘇生を行わなければならなかった。
これは法的に定められたものではないが、東京消防庁の方針として長年運用されてきたものだ。
それが、一定の条件がそろえば、心肺蘇生を行わないことになる。

東京消防庁の新ルール

その条件とは・・・

1. 患者が成人で心肺停止状態であること
2. 事前に患者本人が家族と話し合い蘇生を行わないと決めている
3.「かかりつけ医」に患者の意思を確認できる


などだ。

かかりつけ医が遠方などにいて、患者のもとに駆けつけるまで12時間以上かかる場合、救急隊は家族に対応を引き継いで、現場からも撤収する。
これらはすべて本人の意思表示、医師の指示が前提となる。

ではこのような形がなぜ必要になってくるのか。

個人の意思を尊重する時代へ

今回の新しい運用の背景にあるのは、高齢化社会と、自分らしい最期を迎えるための個人の意思の尊重だ。
高齢化社会を迎え、東京消防庁の救急搬送者数は、昨年過去最高を更新した他、近年増加傾向にある。
昨年は、搬送者の半数以上が65歳以上で、2017年の心肺停止で運ばれた傷病者のうち70歳以上が7割を占めた。(総務省消防庁まとめ)

また、厚生労働省が去年まとめた調査結果では、およそ7割の人が自宅で最期を迎えることを希望している。

H30年「人生の最終段階における医療に関する意識調査」より

こうした中、現行のルールでは、周囲の家族が慌てて119番通報をしてしまい、救急隊は本人が望んでない延命措置を行って、病院に搬送することも少なくなかった。
現に東京消防庁が昨年夏に1カ月間行った調査では、心肺蘇生を行った救急搬送816件のうち患者本人が延命を望まないケースが11件あった。
安らかな眠りを望む患者と、現行のルールにズレが生じている形だ。

このような状況から東京消防庁は運用の見直しを昨年から開始し、医療関係者や警察関係者とも検討を重ね、運用のガイドラインを作成、12月16日からの運用開始となった。

蘇生中止に関する規定について国が定めたものはなく、全国では各消防本部に対応が委ねられている。
医師の指示のもと蘇生の中止を行っている消防本部は全体のおよそ14%にとどまっている。
東京消防庁が先頭に立ち、運用方針を変更することで、他の消防本部でも同様の動きが出てくる可能性もある。

しかし、人の命に関わる重要な要素が含まれているため、国が統一した、何らかの基準を策定することが必要だろう。
高齢化社会に対する国の柔軟な対応が求められる。

(執筆:フジテレビ社会部東京消防庁担当 山﨑康平)

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